掻き傷から菌が入る??(2)

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                           
今日は昨日の続きです。

今回の記事では、「掻き傷(アトピーの小さな傷)から菌が侵入、ひどくなれば足を切断する可能性もある」と書かれていますが、この記事を読んだ人は、そうした事実(足を切断した人がいる)の報告が、いくつもなされている、と感じるかと思います。
しかし、実際には、アトピー性皮膚炎の掻き傷から菌が侵入、蜂窩織炎を引き起こすことが稀にあったとしても、それが四肢の切断に至るまで悪化するケースは、ほとんどありません。
実際、あとぴナビでは、これまで約30年間の間で20万例以上のアトピー性皮膚炎の方の症例に向き合ってきましたが、その中で、蜂窩織炎と診断された、あるいは疑いのあるケースは、年に数例とわずかしかなく、まして四肢の切断に至るケースはこれまで一度もありません。

蜂窩織炎に至る「傷」は日常生活の中のちょっとした傷でも可能性はあります。
紙で指を切った場合、すりむいた場合、口の中を噛んでしまい炎症ができた場合など、部位やその状態を問わずに「可能性」はあります。
しかし、だからといって、アトピー性皮膚炎の掻き傷の方が蜂窩織炎にかかりやすい、というエビデンスは存在していませんし、実際の罹患例からも考えづらいと言えます。

Webの記事は、それが大手のサイトで発信されていると、その内容に対する信憑性を考えることがないと思いますが、明らかにミスリードしているような記事には注意が必要です。

今回の記事は、見方によっては

幸いにも、現時点でアトピー性皮膚炎と新型コロナウイルス感染との顕著な相関性は認められない。柳原医師も「そういう話は聞きませんし、データもありません」と言う。ただ、感染防止に細心の注意を払う必要はあるだろう。

という部分は、アトピー性皮膚炎の掻き傷から新型コロナウイルスに感染するかも、と思わせるような記述になっていますが、アトピー性皮膚炎の掻き傷からコロナウイルスに感染するためには、相当なウイルスの付着が必要になります。
一般的な日常生活内における飛沫やエアロゾル感染のリスクは、肌への付着よりも粘膜への付着の方がより高いのです。
今回の記事が、どういった意図で書かれたものは分かりませんが、アトピー性皮膚炎の実態とはそぐわない内容が多く見られます。
手洗いの推奨もされているようですが、「掻き傷」と手洗いによる皮膚の乾燥から生じるバリア機能の低下は、黄色ブドウ球菌など、一般のアトピー性皮膚炎の方にみられる皮膚の感染症からは、そのリスクはさほど違いません。
手洗いを推奨して、なおかつ、それが皮膚の感染症を妨げることにつながるのであれば、そこには「手洗い後のスキンケア」の方が大切であることを述べておくべきでしょう。

こうした医学的に「見える記事」でも、実際には、その根拠に「エビデンス」が存在していないこともあることは忘れないようにしましょう。

                    
おまけ★★★★西のつぶやき

今回の記事を書いた人も、誤った方向に「誘導」しようとしたわけではないだろうが、一つの稀な出来事を、全体で頻繁に起きる出来事のように見せかけたことは問題かもしれない。
記事を読む際には、「正しい」部分と「誘導する」部分、そして小さな真実を混ぜることで、一つの主観的な意見をそこに含ませる手法があることは覚えておいた方が良いだろう。