2015年秋号の特集より(3)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                 
今日も昨日の続きで、Q&Aを紹介しましょう。
        
        
●皮膚と最近叢の関係からアトピーの新たな治療法を探る
(監修:永尾圭介/米国衛生研究所主任研究員、元慶應義塾大学医学部専任講師)
         
■永尾博士が答えるアトピーと黄色ブドウ球菌Q&A
         
★Q.黄色ブドウ球菌はアトピーの原因なの?
       
A.黄色ブドウ球菌の増加は、症状悪化の歯車の一つです
          
黄色ブドウ球菌が増えたことが原因でアトピー性皮膚炎が悪化するのか? アトピー性皮膚炎が悪化した結果として黄色ブドウ球菌が増えるのか? この問題については、これまで研究者の間でも見解が異なり、結論は出ていませんでした。今回の私たちの研究結果から、黄色ブドウ球菌が皮膚炎を促進することが分かりました。黄色ブドウ球菌が存在しなければ、皮膚炎は起きないのです。しかし、黄色ブドウ球菌そのものがアトピー性皮膚炎の原因とは言い切れません。
なぜならば、黄色ブドウ球菌を正常なマウスに接種しても皮膚炎はおきませんし、人間でもうつることはありません。アトピー性皮膚炎患者の皮膚には何らかの抗菌メカニズムのやバリアの異常(表皮発育因子受容体の異常など)があり、それが黄色ブドウ球菌の増殖を許してしまっているのではないかと思われます。
         
      
★Q.黄色ブドウ球菌を増やさない方法は?
        
A.毎日のスキンケアと入浴が大切
          
米国の皮膚科学会では、ブリーチバス(次亜塩素酸ナトリウム入りのお風呂)による週2~3回の治療が認められています。これはアトピー性皮膚炎の根本治療とはなりませんが、皮膚を清潔にして余分な菌を増やさないことが、症状悪化を防ぐために有効であるということです。
アトピー性皮膚炎の患者さんが日常的に気をつけたいことの基本は、乾燥を防いで皮膚のよい状態を保つこと。毎日の入浴で皮膚を清潔に保ち、入浴後は必ず保湿効果のあるスキンケアを行ってください。入浴で気をつけたいことは、ゴシゴシ洗いすぎて皮脂膜まで洗い落として皮膚を乾燥させてしまうこと。洗浄剤や保湿剤は皮膚への刺激が少ないものを選び、できる限り皮膚を乾燥させないようにしましょう。
ブリーチバス療法はまだ日本人での有効性と安全性が確認されていないので、残念ながらすぐにお勧めすることができません。他の人種と比較して顔面・頸部に症状の強い日本人では米国で行われているブリーチバスに多少の工夫が必要です。ちなみに、ブリーチバスは急性悪化時の治療法ではなく、ステロイドなどで炎症を抑えた後の維持療法という位置づけです。
         
         
★Q.菌を減らすために抗生物質やステロイド剤を使ってもいいの?
            
A.どちらもアトピー性皮膚炎の根本治療にはなりません
           
今回の実験を通して、抗生物質による治療にも問題があることが理解できると思います。抗菌治療を続けていたマウスが治療をやめたとたんに黄色ブドウ球菌が増え、激しいリバウンド様症状が起こってしまいました。皮膚表面の細菌だけをターゲットしたいのに、体全身へ抗生物質を投与することには腸内細菌を変化させてしまうなど、望ましくない効果があります。皮膚のみに投与するとしても、新たな耐性菌が生まれる問題があります。
炎症がディスバイオーシスを悪化させる側面もあり、ステロイド剤を使って炎症を抑えれば、ディスバイオーシスを抑制する効果が多少期待されます。急性期の治療はあくまでもステロイド剤やプロトピックなどの免疫抑制剤でしょう。しかし、ディスバイオーシスを抑制せずに炎症だけ抑えても、薬をやめた後に速やかにディスバイオーシスがよみがえることが予想され、短期治療での長期的維持は難しいでしょう。これはブリーチバス導入や新規治療薬開発に期待しなければなりません。
          
              
今回の取材で一つはっきりわかったことは、皮膚のバリア機能がアトピー性皮膚炎の発症に大きく関わっており、アレルギー的な要因とは、その結果から(黄色ブドウ球菌が定着)生じるものであり、アトピー性皮膚炎の原因で考えると、「アレルギー」とは結果であり原因ではない、ということです。
もちろん、昔ながらのアトピー性皮膚炎で、アレルギーが原因となるケース(食物アレルギーなど)もあるのでしょうが、昨今、増加してなおかつ治りにくくなっているアトピー性皮膚炎の「タイプ」は、アレルギーは症状を引き起こすための原因ではあっても、アトピー性皮膚炎としての疾患の原因は、アレルギーではなく皮膚の方が重要視されるべきなのではないでしょうか?

                     
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回の記事にあるように、アトピー性皮膚炎のマウスの皮膚に定着した黄色ブドウ球菌を健常な肌のマウスに移してもアトピー性皮膚炎を発症しない、しかし、皮膚の菌相に関わる治療(抗生物質など)を行った場合、その治療の有無でアトピー性皮膚炎が発症している、ということから考えると、皮膚の「状態」がアトピー性皮膚炎の発症、そして状態の悪化に大きく関わっておることがわかる。
昨年は京都大学からも、アトピー性皮膚炎に対してフィラグリンの観点から皮膚のバリア機能に着目した研究が進んでおるが、今後のアトピー性皮膚炎の研究は、皮膚そのものに着目されていくのかもしれんの。