2015年秋号の特集より(1)

編集の北です。

 

 

 

 

 

 

 

                     
昨日は秋号の内容についてご紹介しましたが、電子版がどうしてもみれないけど、最新の研究記事を読みたい、という問い合わせが何件かありましたので、慶應大学の永尾先生を取材した最新記事について、内容を紹介します。
なお、内容が長いので、何日かに分けて紹介したいと思います。
          
          
●皮膚と最近叢の関係からアトピーの新たな治療法を探る
(監修:永尾圭介/米国衛生研究所主任研究員、元慶應義塾大学医学部専任講師)
             
アトピー性皮膚炎患者の皮膚に黄色ブドウ球菌が多いことは、昔から知られていた事実です。しかしながら、「なぜ黄色ブドウ球菌が多いのか?」という問いに関する見解はまちまちで、決定的な回答はありませんでした。
ところが今年の春、この問いへの明快な回答が発表されました。論文「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌叢が引き起こす」は、黄色ブドウ球菌と皮膚炎の関係を解明し、それが新たな治療戦略につながると主張しています。
アトピー性皮膚炎の治療法を、今後大きく変える可能性を持つ研究成果について、研究グループ代表の永尾圭介博士にうかがいました。
         
■論文「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌叢が引き起こす」を読み解く
        
・細菌の多様性が皮膚の健康を保つ
        
皮膚や腸をはじめとする人間の体には、数多くの細菌が共生しています。その種類は数千、数は数千兆におよぶといわれ、様々な働きを持つ多様な細菌のバランスが人間の健康に影響を及ぼしています。
腸内細菌の話はご存知の方も多いでしょう。人体の70%もの免疫細胞が集まる腸という器官には、様々な働きを持つ細菌の多様性とバランスにより腸内環境が形成されます。腸内環境は体の様々な器官に影響力を持ち、腸内の細菌叢に偏りが生まれて悪玉菌がはびこれば、免疫力が低下したり健康を損ねてしまいます。
皮膚の細菌叢でも同じことがいえます。皮膚表面の菌の多様性は腸内をしのぐことがわかってきましたが、皮膚表面の細菌叢の多様性が失われ、バランスが崩れることによって様々な弊害が生じます。
         
・黄色ブドウ球菌が増えるとアトピーが悪化する!?
         
本研究「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌叢が引き起こす」は、アトピー性皮膚炎が悪化した際には、皮膚表面の細菌の種類が著しく減り、その過半数が黄色ブドウ球菌によって占められるという現象の因果関係を明らかにするものです。
アトピー性皮膚炎患者の皮膚から細菌を取り出して培養すると黄色ブドウ球菌が多数発育することは、40年以上も前から知られていました。
しかしながら、なぜこのような現象が起こるのかははっきりしないままでした。
アトピー性皮膚炎の悪化により黄色ブドウ球菌が増えるメカニズムがわかれば、まだわからないことが多いアトピー性皮膚炎の正確な理解につながり、新たな治療法の開発にもつながります。本研究は、このような成果を目指して行われたものです。
            
・アトピーのモデルマウスを作る
         
アトピー性皮膚炎と黄色ブドウ球菌の関係の解明がなかなか進まなかったのは、これまでに適切な動物モデルが存在しなかったためです。
つまり、人間のアトピー性皮膚炎と同じ症状の動物を用意することが難しかったのです。
本研究グループは、実験用マウスの皮膚からアダム(ADAM)17という酵素を取り除くことでアトピー性皮膚炎のマウスを作り出すことに成功しました。アダム17は、細胞膜表面の表皮発育因子(EGF)を調整して細胞の分化・増殖や免疫応答などを調整する酵素。稀な疾患ですが、アダム17の遺伝子変異を持つ患者でアトピー性皮膚炎様の症状を示すことが報告されています。このアダム17を人為的に欠損させることで、アトピー性皮膚炎の湿疹モデルを作ったのです。
              
            
今日はここまでです。
明日は続きを紹介します。

                           
おまけ★★★★東のつぶやき

黄色ブドウ球菌とアトピー性皮膚炎に関する研究は、黄色ブドウ球菌が出すデルタトキシン(毒素)が、アレルギー的な要因とは関係なく、IgEを増強し、アトピー性皮膚炎の発症、あるいは症状の悪化に関わる、という発表が2年前にネイチャーに投稿されています。
アトピー性皮膚炎の病態を探っていくと、これまで考えられていた原因が当てはまらないケースもあり、その多様性は考えていく上では、こうした皮膚機能から生じる部分も必要なのでしょう。
今回ご紹介する記事は、今後のアトピー性皮膚炎の研究にとって、中心的な役割を果たす考えた方もしれませんので、ぜひ読んでおいて欲しいと思います。