ステロイド剤のリスクを考える(1)

先週末から、強い日差しとなっておるの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      
間もなく梅雨明けなのかもしれんが、梅雨対策と夏対策は、微妙に異なる部分があるので、注意して欲しいものじゃ。

さて、最近の相談内容の傾向として、ステロイド剤に対する安全性への信用度が、以前と比べて変化してきておるようじゃ。
処方する皮膚科医は、相変わらずベネフィットを優先して、リスクについては「安全」という覆いで囲ってから患者に処方しておるようじゃが、処方を受ける患者側の方も、その医師の説明をそのまま受け入れる傾向があるようじゃの。

アトピー性皮膚炎が増加してきた歴史の中で考えると、多くの人が「アトピー」という言葉に耳慣れなかった時代、ちょうど三十年~二十年前ぐらいじゃろうか、この頃も、ステロイド剤はベネフィットが優先され、リスクはおざなりにされた時代だったと言えるじゃろう。
今と違うのは、それでも処方する医師は「リスク」をある程度認識しておるから、昔のように、症状が悪化した段階の選択肢として、ステロイド剤一辺倒、とういことはなくなってきておるようじゃ。
昔ならば、状態が悪くなって、同じステロイド剤で症状が抑えきれなくなると、強いランクのステロイド剤に変化、やがては内服などにも移行しておるケースを良く目にしたものじゃ。
さすがに今は、一部の医師を除いては、長期連用しないように注意して処方しておるようじゃが、それでも、最初の処方の段階ではリスクについて明言を避けておるケースが多いようじゃの。

アトピー性皮膚炎という疾患にとって、「痒み」「炎症」という主症状は、「結果」であって「原因」ではない。つまり、アトピー性皮膚炎という疾患(原因)があって、そこから痒み(結果)が現れておるのじゃが、医師は、治療の際、痒みの治療は「原因」の治療である(少なくとも患者はそのように受け取る)と説明しておることが多いようじゃ。
これは、他の疾患で例えると、風邪をひいて高熱が出た場合、患者は熱が辛いことを訴え、医師は解熱剤を処方するのと同じじゃ。
もし、医師が「これで治りますよ」と言った場合、医師が治るといった意味合いは「熱が下がる」ことを指し、「風邪が治る」ことは、ほぼ意味していない。
じゃが、患者側が認識する「治る」には「風邪」も含まれることがある。
特に、解熱剤の処方を受け、たまたま自然治癒力が勝って風邪が治った場合、患者は解熱剤で風邪が治ったと誤認識することもあるじゃろう。
アトピー性皮膚炎の場合も同様で、医師がステロイド剤により「治る」と表現する部分は正確に言えば「痒み」という症状じゃ。もちろん、その延長線上に、アトピー性皮膚炎の症状を自らの力で抑えて出なくする=アトピー性皮膚炎が治る、ということがあっても不思議ではないわけじゃが、そこに関わっておるのは、あくまで「自然治癒力」であり、ステロイド剤ではない。
じゃが、患者はステロイド剤により治るのは、アトピー性皮膚炎という病気だと思いこむことが多い。

今は、まさしく、こうした状況の患者が増えてきているように思うの。
一頃、アトピー性皮膚炎に対する治療法としてステロイド剤の問題点が、大きく取り上げられた時は、そうした情報を目にすることも多く、「リスク」に慎重になる患者が多かった。しかし、今は、ステロイド剤の安全性を医師が強調しておることもあって、「リスク」の情報は減り、ベネフィット(効果、利益)の情報の方が多くなった。

確かに、ステロイド剤でアトピー性皮膚炎の「病気」を治すことはできなくても、「痒み」という「症状」を、治すことはできる。また、症状を抑える治療が、疾患の治療に間接的に繋がっていくこともあるじゃろう(痒みで夜、眠れなかったのが、眠れるようになったことによるメリット、など)。
じゃが、それはあくまで薬剤の「リスク」が表面に現れないで使用できる範疇において、という条件があることを忘れてはならんじゃろう。

以前、ステロイド剤が問題になったとき、その使用方法の多くは、結局のところ「リスク」が表面化することにつながっておった。使用中に症状が悪化した場合、その原因をアトピー性皮膚炎の悪化と決めつけ、強いランクのステロイド剤に変えていったことが大きな要因の一つじゃが、今は、その時の「教訓」が十分に認識されておるはずじゃ。
処方する医師側にそうした情報の蓄積がなくとも、使用してきた患者側にはその蓄積はしっかり残っておるはずじゃ。

では、ステロイド剤を使用して生じるリスクとはどのようなものが考えられるのか?
過去に何度もブログで書いてきたが、おさらいの意味も含めて、明日、述べたいと思う。

                           
おまけ★★★★博士のつぶやき

「病気」と「症状」は、患者にとって、「同一のもの」という認識が強くなるケースが多いようじゃ。
これは、患者が自覚する症状が解決したい不快な部分に当たるためであり、当然なのじゃが、症状の解消が疾患の解消につながらないケースは、かなり多い。
骨折した痛みを取ると骨折が治るのか、花粉症の鼻水を薬で止めた状態は花粉症が治った状態と言えるのか、腹痛で下痢をしたときに下痢止めを服用することは正しいのか、こうした病気と症状の違いを把握しないと、治療法を正しく選択できないケースがあるので、注意して欲しいものじゃの。