東京都が実施した3歳児アレルギー疾患調査から考察

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                           
先日の日経新聞に、東京都が実施した3歳児のアレルギー疾患調査の結果について記事が書かれていました。
その中で、アトピー性皮膚炎患者が減少していることが書かれていたので、内容について考えてみたいと思います。
        
        
●3歳児、アレルギー4割 都が調査、増加傾向 「食物」急増、アトピーなど減
(日経新聞 2015.07.03)
            
東京都が2014年に実施した3歳児のアレルギー疾患の調査によると、3歳になるまでに何らかのアレルギー症状があった比率は39.3%だった。09年調査(38.8%)と比較すると微増だが、1999年(36.8%)の調査開始時から増加傾向にある。なかでも、食物アレルギーは10年以上前に比べて急増している。
調査は5年ごとで、10月に都内で3歳児対象の健康診断を受けた子どもの保護者8383人を対象に実施した。3435人の有効回答を得た。結果はアレルギー対策の基礎資料として活用する。
かかった疾患を複数回答で尋ねると、最も多かったのは食物アレルギーで16.7%。以前は1ケタ台だったが、09年調査から顕著に伸びている。都健康安全研究センターは「原因の特定は難しい」としている。
食物アレルギーの子どものうち、アレルギーを引き起こす食べ物を誤って食べた割合は25.2%で、4人に1人にのぼった。症状は「皮膚の症状」が9割超と圧倒的だが、約1割は意識がもうろうとするなど「ショック症状」を経験している。
一方、アトピー性皮膚炎は11.2%、ぜんそくは8.5%とそれぞれ減少した。
同センターはアトピーの罹患がやや減っている理由を「(治療薬の)ステロイド剤の適切な使用が受け入れられた」とみている。じんましんやアレルギー性鼻炎はそれぞれ1割前後だった。
            
        
日経新聞に掲載された記事だけ読むと、前回調査と比較すると(前回は2009年)、アトピー性皮膚炎は減少し、減少した理由は、「ステロイド剤の適切な使用が受け入れられた」とありましたので、適切な治療を行うことで患者数が減少したと読み取れます。
ということは、3歳時点での患者数が適切な治療により減少したとして、では、実際の発症数そのものがどうなのかが気になり、同調査の詳細が報告書でWebに掲載されていましたので、それを読んでみました。
            
              
●アレルギーに関する3歳児全都調査(平成26年度)報告書
http://www.tokyo-eiken.go.jp/files/kj_kankyo/allergy/c_naiyou/sansaiji.pdf#search=’%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E3%81%8C2014%E5%B9%B4%E3%81%AB%E5%AE%9F%E6%96%BD%E3%81%97%E3%81%9F3%E6%AD%B3%E5%85%90%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%9F%BB’
          
          
報告書を読んで分かったのは、新聞に掲載された11.2%の割合は、3歳児までに、アトピー性皮膚炎に罹患したことがあると保護者が答えた数であって、その中で治療が終了して「治った」患者がどれくらいいるのかには触れられていませんでした。
つまり、減少した理由が「適切治療により減少」したのではなく、そもそも、治療の結果を問わず、患者数そのものが減少していたことが分かりました。
よく考えてみれば当たり前のことで、「適切な予防法」が行われていれば、疾患の発症数は減少しますが、治療は発症後に行う行為ですので、伝染性の疾患でもない限り(患者が、他の患者を生むような疾患でない限り)、治療法が患者の発生数に影響を与えることはないでしょう。
記事を書いた新聞記者も、読者が優良誤認するような内容で(適切な治療が浸透したから、初発のアトピー患者が減った、という誤った内容)書くことには注意して欲しいところですが、いずれにしても、患者数そのものが減少していることは確かでしょうし、これまで増加の一途だったことを考えると、喜ばしい傾向です。
実は、文部科学省が実施している学校保健調査でも、ここ2年ほどの状況を見ると、アトピー性皮膚炎患者が微減している傾向が見られ、今回の調査が保護者の主観的な回答であることを差し引いても、異なる大規模調査で同様の傾向が見られていることを考えると、この「アトピー性皮膚炎患者が減少傾向にある」ということは確かなことでしょう。

では、なぜ、これまで増加傾向にあったアトピー性皮膚炎の患者が減少しているのか、定かなことは、特にそういった研究報告もなく、不明です。
あえて、理由を探すとすると、一つには、アトピー性皮膚炎と言う疾患に対する認識が浸透して、情報を得ることで、発症しないような生活を構築することを、両親を中心に模索し始めている、ということが挙げられます。
また、他にも、最近の研究でアトピー性皮膚炎のほとんどの方が(90%)罹っている黄色ブドウ球菌の感染症が関係して、IgEが増加することが分かっていますので、他のアレルギー疾患に移行している(アレルギーマーチ)可能性もあるのでしょう。
実際、今回の報告の中に、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー疾患に罹患する時期の報告がありましたが、ぜん息、鼻炎、結膜炎はアトピー性皮膚炎よりも後に発症する傾向がありました。
        
       
(2)初めて診断された時期
これまでに診断された児の診断時期で最も多いのは、ぜん息12ヶ月~18ヶ月未満27.0%、食物アレルギー6ヶ月~12ヶ月未満51.5%、アトピー性皮膚炎6ヶ月~12ヶ月未満23.8%、アレルギー性鼻炎24ヶ月~30ヶ月未満29.5%、アレルギー性結膜炎24ヶ月~30ヶ月未満32.3%、じんましん12ヶ月~18ヶ月未満20.5%であった(表7)。
診断された児の約半数が診断されるまでの期間は、食物アレルギーで生後9ヶ月、アトピー性皮膚炎12ヶ月、ぜん息21ヶ月、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎では24ヶ月であり、疾患により診断される時期に特徴がみられた(図2)。
          
         
また、他のアレルギー疾患との併発状況を見ると、アトピー性皮膚炎の場合、食物アレルギーが最も多く、アレルギーマーチ(他のアレルギーに変化する)が現れている可能性はあるのでしょう。
             
            
(3)アレルギー疾患の合併
これまでに診断された児を対象に、他のアレルギー疾患との合併状況をみると、「アレルギー性結膜炎」と診断された児の中で「アレルギー性鼻炎」を合併している割合が 52.4%と最も高く、次いで「アトピー性皮膚炎」と診断された児の中で「食物アレルギー」を合併している割合が 47.8%と高かった(表 8)。また、ぜん息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎の3疾患のいずれかに診断された児の合併状況について、回答者全体に占める割合をみた。3疾患のいずれかの診断ありは 985 人で無回答を除く全回答者 3,412人の28.9%であった。
ぜん息と食物アレルギーの合併2.9%、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の合併5.5%、ぜん息とアトピー性皮膚炎 2.2%、3疾患を合併している児は1.3%であった(図 3)。
         
          
とはいえ、あとぴナビの会員の方にアンケート調査を行った場合、併発しているアレルギー症状で最も多かったのは花粉症であり、「アレルギーマーチ」の様相を示すのは、あくまで乳幼児に限るのかもしれません。
この調査は、また5年後に行われるようですので、今回、現れた傾向(アトピー性皮膚炎が減少している)がどのように変化していくのか、また、そこからどういった状況が考えられるのか見守りたいと思います。

                                       
おまけ★★★★西のつぶやき

今回、研究報告を行っているのは東京都健康安全研究センターというところだが、各県ではなく東京都にしか設置されていないところをみると、発足が厚生省(現在の厚生労働省)の通達によるもののようなので(昭和24年)、国の機関に近いのかもしれない。
ただ、こういった研究は、できれば地方都市でも行って欲しいところだ。
環境要因も一つの原因と疑われているアトピー性皮膚炎の場合、全国各地における分布状況などが何かのヒントになるかもしれないからだ。
今後の研究に期待したい。