黄色ブドウ球菌のデルタ毒素とアトピー(2)

東です。

 

 

 

 

 

 

 

                   
今日は、昨日の続きです。

昨日述べたように、アトピー性皮膚炎患者の9割以上が黄色ブドウ球菌に感染しており、さらに、皮膚に定着、コロニーを形成した黄色ブドウ球菌はデルタ毒素を放出、そのデルタ毒素が、IgEとは関係なく肥満細胞(マスト細胞)から炎症を引き起こす化学物質を放出(脱顆粒)させ、さらにIgEがその脱顆粒を増強させる、ということが、今回のネイチャーの論文で秋からになりました。

こうした黄色ブドウ球菌の感染症に罹患した状況下の中で、ステロイド剤やプロトピック軟膏などの免疫抑制作用を持つ薬剤を使用すると、炎症は抑えられますが、感染症そのものは免疫を抑制することで悪化することになります。
また、ステロイド剤を使用すると、受容体(ガラクチン-3)の関係で、IgEを増強しやすくなることがわかっていますので、皮膚の表面上は、症状が抑えられた状態になっていても、黄色ブドウ球菌の感染症そのものは悪化し、さらにIgEも増加した状況になっていることがあります。
今回の論文では特に、デルタ毒素がIgEを増強させる、ということが書かれていますので、黄色ブドウ球菌に感染した状態でステロイド剤を使用することは二重の意味でIgEを増強する=アトピー性皮膚炎という病気を悪化させる、ということが言えるでしょう。

こうした状態の場合、感染症が悪化、さらにIgEが増強しているため、炎症を引き起こす「状態」は作られやすくなり、そのため、症状(炎症)が繰り返し現れ、ステロイド剤が効かなくなってきた、と感じて強いランクにステロイド剤に変わることがあります。
この段階で、ステロイド剤を中断すると、炎症を引き起こす状態が続いている中、ステロイド剤により炎症を抑えていたわけですから、一気に炎症などの症状が強く現れてきます。
さらに、この状態では、黄色ブドウ球菌の感染症そのものがステロイド剤の使用で悪化しており、さらにIgEも増強された状態にあると、その炎症症状は、著しく強いものになります。
これが、ステロイド剤の中断によるリバウンド症状の「一つの形態」にあると考えられています。
こうしたリバウンド症状に対して、医師は「炎症を抑えていたステロイド剤の使用を中断したことで、アトピー性皮膚炎そのものが悪化した状態だから、ただちにステロイド剤により炎症を抑える必要がある」ということが多いのですが、黄色ブドウ球菌の感染症に対して、ステロイド剤はマイナスの影響しか与えませんので、再度のステロイド剤使用により、皮膚症状は、炎症が抑えられ落ち着いた状態に戻っても、さらに感染症の悪化とIgEの増強は進む恐れがあります。

もっとも、これはあくまで黄色ブドウ球菌に曝露されていることが前提ですが、論文にあるように、統計上、アトピー性皮膚炎の方は黄色ブドウ球菌の感染症が見られることが多いことがわかっていますので、悪化要因として十分検討していくことは大切になってくるものと思われます。

これまで、IgEと感染症は関係性が見られない(相互に悪化させる要因として)というのが皮膚科医の一般的な見解でしたが、今回のネイチャーの論文では、黄色ブドウ球菌とIgEが複合する形で、炎症を悪化させることがエビデンスで証明されていましたので、その見解は誤りだった、ということがわかります。

こうした黄色ブドウ球菌がもたらす影響は、単にアトピー性皮膚炎の悪化だけではなく、皮膚のバリア機能が低下した状態で黄色ブドウ球菌の影響を受けやすい状態にある人が、肥満細胞の脱顆粒の影響でIL-4(インターロイキン4)を増強することが確認されていますので、そこからIgEが増強、アトピー性皮膚炎の症状を有する形になっていることも一つの推測として考えられるようです。

この状況は、逆に考えると、いかに黄色ブドウ球菌に曝露された状態を軽減できるかによって、初期のアトピー性皮膚炎であれば、早期の治癒が見込める可能性もありますし、また、長年アトピー性皮膚炎の症状を患っている方の場合でも、黄色ブドウ球菌の曝露状態をなくすことで、症状が著しく軽減する可能性も秘めていると思われます。

もちろん、アトピー性皮膚炎の原因は多岐にわたりますから、このケースに該当しないパターンもありますが、臨床上、慢性化した状態のアトピー性皮膚炎の場合、この黄色ブドウ球菌の感染による悪化状態が関与していると考えられるケースが多く、実際、ステロイド剤を使用せずに、感染症を治療するだけで症状が落ち着くケースもありますから、こうした観点から、
治療法を検討していくことは大切になってくるように思います。

症状を抑える治療(ステロイド剤やプロトピック軟膏など、炎症を抑える薬剤による治療)が、今の皮膚科医の治療方針になっていますが、対症療法によるメリットと、そしてデメリット(弊害の部分)は、こうした感染症の観点からじっくり考えていって欲しいと願います。

詳しくは、あとぴナビ10月号の特集で掲載する予定ですので、ぜひ、ご覧いただければと思います。

                
おまけ★★★★博士のつぶやき

アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のフィラグリンやセラミドなど、バリア機能を維持させる要因が不足しておることがわかっておる。
こうした皮膚のバリア機能が低下した状態は黄色ブドウ球菌の感染症を引き起こしやすい。
特にアトピー性皮膚炎の症状を有しなくとも、バリア機能低下から黄色ブドウ球菌の感染症を招くと、今回の論文にあるように、デルタ毒素がIgEを増強させることがわかっておるから、特にこれまでアトピー性皮膚炎が見られなかった人でも、「アトピー性皮膚炎を発症する」ケースが出てくることは十分に考えられるじゃろう。
幼少期にアトピー性皮膚炎の症状がなくても、成人以降でアトピー性皮膚炎に罹患する方の場合、こうした黄色ブドウ球菌の感染が原因となっておることは、今後、十分考えていく必要はあるじゃろうの。