生活と生活環境の改善は、なぜ必要なのか?(2)

今日は、昨日の続きじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                

昨日述べたように、アトピー性皮膚炎の方にとって必要なのは、「免疫を作り出す力を抑える」ことではなく「免疫を抑える力を強める」ことにある。
なぜなら、健常な人とアトピー性皮膚炎の人を比べた場合、外敵であるウィルスや細菌から身を守る免疫であるヘルパーT細胞のⅠ型(Th1)と、アレルギーに関わる免疫であるヘルパーT細胞のⅡ型(Th2)は、それぞれサイトカイン(インターロイキン)により、お互いを抑制しあっておるのじゃが、今の薬剤の治療は、本来、Th1が高くTh2が低い免疫バランスをTh1もTh2も両方とも低くすることになるからじゃ。
本来なら、Th1をあげたままTh2を下げることができればよいわけじゃが、ステロイド剤やプロトピック軟膏などのアトピー性皮膚炎治療に使われる免疫抑制剤は、Th2のみを標的に下げることはできん。

Th2を下げる働きを持つサイトカインのみを高められる薬剤があればよいかもしれんが、実際のところ、良く似た薬剤はあるのじゃが、有効的にその働きが得られてはおらんのが実情じゃ。
なぜなら、Th2はTh1のみとのバランスで成り立っておるのではなく、Th3など他のヘルパーT細胞の影響も受けておるからと考えられておる。

では、どうすればTh2を下げることができるのかというと、ここに有効な手段として関わってくるのが「生活」と「生活環境」の二つになる。

IgEがB細胞と結合する際には、ある受容体と結合することが分かっておるが、健常な人のB細胞にはB細胞の表面にIgEと結合する受容体がないことが分かっておる(sIgE-B細胞)。
ところが、アトピー性皮膚炎の人のB細胞を調べるとB細胞の表面にIgEと結合するための受容体が発現しておる(sIgE+B細胞)。
IgEと結合したB細胞は、さらにIgEを作り出す作用があるため、sIgE+B細胞が多いアトピー性皮膚炎の人は、IgEが増強されて、アレルゲンなどによる炎症反応を強めることにつながってくるわけじゃ。
このB細胞の表面にIgEと結合する受容体(ガレクチン3)を出現させる働きに、サイトカインの中のインターロイキン4(IL-4)が関わっておることが研究で明らかになっておる。

そして、インターロイキン4を強めることに関わっておるのが、実は生活習慣と生活環境なのじゃ。
睡眠不足、運動不足(代謝不足)、脂質の多い食生活、ストレスなどは、インターロイキン4を増強させることが分かっておるし、生活環境に存在する化学物質も、内分泌かく乱作用によりインターロイキン4の生成に関わっておるとされておる。
また、ステロイド剤も長期の連用によりインターロイキン4を作り出すことになるようじゃ。
逆に考えれば、インターロイキン4を作り出さないような生活習慣、そして生活環境を整えることができれば、IgEが結合しないB細胞が作られるようになり、IgEを増強させる仕組みが体内からなくなることになる。

もちろん、IgEが多いことだけが直接アトピー性皮膚炎の症状に関わるわけではないが、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させている「大きな要因の一つ」となっている以上、IgEを作り出さないようにすることも大切と言えるじゃろう。

つまり、睡眠を十分にとり、適度な運動や入浴で代謝を高め、和食中の脂質が多すぎない食生活、そしてストレスを減らして、生活環境内から化学物質の影響を軽減することが、間接的に、こうした免疫機能の働きを通して、IgEを増強させないようにしてTh2を下げていくことにつながる、ということじゃ。

アトピー性皮膚炎を克服していく上で、こうした生活習慣や生活環境内の悪条件に対して一切、アプローチを行わず、さらに、そこにステロイド剤など免疫を抑制する薬剤の長期連用が加わると、こうした体内の免疫機能のバランス異常が解消されずらくなり、「治りにくい」状況が生じることになっていくわけじゃ。

もちろん、アトピー性皮膚炎の症状を引き起こす原因は免疫機能のみにあるわけではないから、こうした条件を整えても、他の原因が関わっていれば、その他の原因も解消しないと症状の改善がみられづらいことはあるじゃろう。
じゃが、少なくとも、こうした生活習慣の改善(睡眠をしっかりとる、運動を行う、など)や生活環境の改善を行うことが、逆にアトピー性皮膚炎の症状を悪化させるリスクにつながることはほとんどない、あるいはベネフィット(効果)と対比させた場合、リスクの方がはるかに低い(運動でいえば、汗をかくことによるリスクはあっても、そのリスクは最大限軽減させることが可能、など)と言えるから、こうした「改善」を生活の中に取り入れていくことは、アトピー性皮膚炎を克服させていく中では、「大切な要因」ということが言えるのではないじゃろうかの。

                             
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回は、生活の中での改善の必要性について、免疫機能の働きの点から考えてみたのじゃが、一つ意識して欲しいのは、こうした「改善」は、「自力」が必要になってくる、ということじゃ。
例えば、早く寝ることがなぜできなかったというと、勉強や仕事などがあったから、とうい本人にとっては「どうしようもない理由」があった場合、その「理由」をなくしていかねればならない。
早く寝るためには、自分の行為で行うしか解決法はない、ともいえる。
薬を塗る治療は、どちらかというと「受動的」な色合いが強いのじゃが、こうした生活改善は一日行えばよい、というものではなく反復継続して続けていかねばならん以上、「能動的」、つまり「自力」の要素が強いといえるじゃろうの。