ステロイド剤が抗菌ペプチドを減らす?

北です。

 

 

 

 

 

 

    
久しぶりにブログを担当します。

さて、先週、取材で大阪のある先生にお話をお伺いさせていただきました。
その際、Experimental Dermatologyに掲載された論文を一ついただきました。

内容は、ステロイド剤が皮膚の抗菌ペプチドを有意に減少させる、というものでした。

皮膚には、さまざまな微生物感染に対する防御機構があります。
その中のひとつが、先天性免疫に関与する因子の一つである「ディフェンシン」と呼ばれる抗菌ペプチドです。
ディフェンシンには、好中球が主として産生するα-ディフェンシン(HNP)と上皮系の細胞が産生するβ-ディフェンシン(HBD)の二つがありますが、後者とステロイド剤の関係について研究された論文です。

論文では、

1.健常な肌
2.慢性化したアトピー性皮膚炎の肌(薬物は使用していない)
3.慢性化したアトピー性皮膚炎にピメクロリムス(免疫抑制剤)を塗布した肌
4.慢性化したアトピー性皮膚炎にケナコルトA(ステロイド剤)を塗布した肌
5.慢性化したアトピー性皮膚炎にリンデロンV(ステロイド剤)を塗布した肌

それぞれの、ディフェンシンなど5種類の抗菌ペプチドの値を測定していました。
抗菌ペプチドの値は、高かった順番でおおむね、2>3>1>4>5の順番となっており、特にHBD-2については、ステロイド剤を塗布した肌では極端な減少みられていました。

特徴としては、まず2が高かった点があります。
これは、慢性化したアトピー性皮膚炎の肌は、掻き壊しにより皮膚の防御機能が失われた状態にあるようで、それを補完するように抗菌ペプチドの値が高くなっていました。
しかし、ステロイド剤を塗布したアトピー性皮膚炎の方の肌は、抗菌ペプチドの値までも低くなっており、微生物感染に罹りやすい状況にあることが分かりました。
もともと、ステロイド剤は免疫を抑制することで感染症に対してはリスクがあるわけですが、同時に抗菌ペプチドを減少させることで、よりその傾向を強めているようでした。

まだしばらくは、感染症に注意が必要な時期が続きますが、ステロイド剤を使用している方の場合、皮膚のバリア機能を補うようなスキンケアはしっかりと意識した方が良いのでしょう。

詳しくは、8月号のあとぴナビの特集で掲載する予定です。

                     
おまけ★★★★博士のつぶやき

アトピー性皮膚炎の方が感染症に罹った場合、治療としてステロイド剤が処方されることがある。
感染症による炎症も、ステロイド剤は抗炎症作用により抑えることができるからじゃが、見た目の炎症は良くなったとしても、感染症が治ったわけではなく、また皮膚の防御能力が減少することは(抗菌ペプチドの減少)、感染症をより悪化させるリスクも伴っておる、ということじゃな。
医師は「症状」に対して、まず治療を行うのじゃが、症状の治療は「病気」そのものに対するリスクを生じることがあることは忘れない方が良いじゃろうの。