EBMに惑わされないように

月一でブログを書いている西だ。

 

 

 

 

今年の一月に、EBMのことについて少し触れたが、先日、EBMに関する本を読む機会があった。
その中には、アトピー性皮膚炎に関するEBMについても触れていたのだが、今日は、EBMの読み方について少し書いておきたいと思う。

まず、EBMとは、Evidence-Based Medicine、つまりエビデンス・ベース・メディスンの頭文字をつなげた言葉で、日本語に直訳すると「科学的根拠に基づいた医療」となる。

現在の、医療のほとんどは、このEBMを重視し、エビデンス(科学的根拠)のない医療は異端視されることになる。
もちろん、ある医療に対して科学的裏付けをデータとして取ることは大切なことであり、それを無視して良いわけではない。
そのデータが蓄積することで、その医療そのものが良い方向に改善されることもあるのだし、またその医療が抱えるデメリットも浮き彫りになることがあるからだ。

だが、エビデンスの見方というのは、一般の人が見た場合と、医師などの専門家が見た場合には、そこで使われている言葉の意味の捉え方が、実は違っていることが多々あるのだ。

例えば、アトピー性皮膚炎に対してあるAという治療法があって、そのエビデンスとして下記のようなデータが提示されていたと仮定しよう。

28日間、40名の患者にAという治療法を実施した結果

1.著効が見られた・・・3名
2.症状が改善した・・・32名
3.特に変化が見られなかった・・・3名
4.悪化した・・・2名

これだけ見ると、一般の人は、40名中、効果があったのが35名で約90%という非常に有効性の高い治療法、として考えてしまう。
だが、ここで使われている言葉として、1番目の「著効があった」というのが、「著しい症状の改善効果があった」、ということで、有効性が高い結果が出た人ということである。割合的には約10%にすぎない。
では、2番目の「症状が改善した」という部分がどうかというと、これは、被験前と被験後を比べて、わずかでも症状に良い部分が見られれば、この判定にとられることが多い。
つまり、痒みや炎症自体は、変わらずにあったとしても、その炎症の赤みが少し減った、範囲がわずかにせまくなった、などの変化が見られれば「改善」として見られることになるのだ。

これは、その研究そのものが、その治療法がどのように影響を与えられるのかを、研究を行う方から見れば「前向き」に見ようとするため、どうしてもそのような傾向にはなる。
例えば、赤みが少し増えていても、炎症の範囲が減っていれば、これは改善と見られることになる。

だが、アトピー性皮膚炎という疾患を考えた場合、自然放置しておいても、28日間もあれば、何らかの変化は出てくることになる。
その変化の中では、良い変化も悪い変化も見られるだろう。
そんな中で、良い変化の部分だけを取り上げて「改善」したと捉えられても、それは、他の人がその治療法を選ぶ基準としては、大変危ういものと考えても不思議ではない。

したがって、上記の判定結果を「治療を受ける患者側」の立場で見るならば、明らかに効果があったのは約10%で、悪化した人も約10%、それ以外は、28日間では効果が見られたかどうかは判断しづらい治療法、として考えるべきなのだ。

もちろん、研究者側から見れば、改善効果が90%は「期待できる」治療法として取り上げたいのだろうが、受ける側から見れば、症状が一部でも良い部分が出る治療法を望んでいるのではなく、アトピー性皮膚炎そのものを治す治療法を一番望んでいるはずである。

EBMを元に判断するのならば、そのEBMの判定基準が、どのようなところにあるのかも、よく見極めた上で、そのEBMを評価しないと、実際にその治療を受けてみても、全く変化していないわけではないが、治ってはいない、ということもあるので、自分がどのような結果に導いてくれる治療(治癒なのか、多少の症状の改善で満足できるのか)を望んでいるのかも踏まえた上で、検討する必要があるだろう。

 
おまけ★★★★西のつぶやき

今回読んだEBMに関する書籍には、アトピー性皮膚炎に対する「ステロイド外用薬の大規模研究の結果」というEBMが掲載されていた。
それによると1日3回使用した2~67歳の患者の中で2週間後に改善したとするのは、ステロイド群で85%、偽薬群(ステロイド剤と偽って使用した群)で44%だった。
この「改善」という中身が、さらにどのように分類されるのかはもちろん不明だが、多くの人は、このデータだけ見ると、2週間でアトピー性皮膚炎の症状は「ほとんど良くなる」というイメージを抱くのではないだろうか?
問題は、改善の度合いがどれくらいか、ということもあるが、ステロイド剤と偽って単なるワセリン(だと思われる)のみ使用した患者でも約半数の人が改善したという分類に入ってきているということだろう。
あきらかにステロイド剤のおかげで症状が改善したと考えられる人は全体の40%ほどしかいない、ということだ。
そして、この本で指摘していた最も大きな問題点は、ステロイド剤の使用期間に関するデータはどんなに長くても数週間~数か月のものしかなく、年単位で調査したエビデンスは、副作用がこれだけ表面化している今も、今だに存在しないことである。
その本の著者が「ステロイド剤の治療目的は、ここ数週間から数カ月の湿疹が良くなるかどうかという効果を期待して用いるべき」であり、「数年後に湿疹が良くなる効果を期待するべきではない」としているのは、もっともなことだろう。