| 2008 年 12 月 19 日 記者:西 |
記者の西だ。
今日は、今年の春に行われた日本アレルギー学会の、ある講演のことを書きたい。
その講演では、先月、新たにアトピー性皮膚炎に対する適用を受けた「ネオーラル」という薬剤(アトピー性皮膚炎の新薬として来年から使われることになった免疫抑制剤「シクロスポリン」の別称)のことが説明されていた。
そして基調講演後、質疑応答になったのだが、ただでさえ副作用の危険性が高い免疫抑制剤の服用について、医師から質問が相次いだ。
本来、免疫抑制剤は、臓器移植の際に、拒絶反応を抑える目的で使われる薬剤である。
そして、臓器移植の際の大きな問題点の一つに、この免疫抑制剤の使用が上げられるのだ。
というのも、免疫を抑制することで、日和見感染症に罹りやすくなったり、あるいは発ガンのリスクが高まるからだ。
そのようなリスクを生じる薬剤を、アトピー性皮膚炎の炎症を抑える目的で使用することに、さすがに不安を覚える医師が多かったということだろう。
説明では、使用期間を短期間にすること、副作用が現れていないかを定期的に検査することなどがあったが、実際、使用を始めた場合に、それらのリスク回避を、どれだけ患者に正しく伝えることができるのだろうか?
先日、現在使われている免疫抑制剤の軟膏「プロトピック軟膏」を処方する際には、患者側に、発ガンのリスクがあることを説明するようにという厚生労働省からの通達が出ていた。
しかし、実際にその後、プロトピック軟膏を処方されている現場で、「この薬剤は、使用することで発ガンのリスクがあります」ということを患者側が説明を受けた、という話は残念ながら聞いたことがない。
それも当然かもしれない。
自分の子どもが、アトピー性皮膚炎でプロトピック軟膏を処方された際に、「発ガンを招くリスクがあります。このことを使用する患者にあらかじめ説明するように厚生労働省から指導を受けています」という説明を受けた上で、その治療を望む患者は少ないだろう。
だが、今、日本の医療現場においては、さまざまな診療科において、訴訟リスクが問題になっている。
特に免疫抑制剤の服用の場合には、軟膏よりも患者が副作用(それもガンなど生命に関わる深刻な副作用)を受けるリスクは跳ね上がる。
講演会の質疑応答で、処方する現場の医師から、不安の声が上がったのも、当然かもしれない。
だが患者に、その医師たちの不安の声が届くことは、まずないのだ。
もし、届くとすれば、それは実際に副作用に悩む患者が一定数現れたあとになるだろう。
アトピー性皮膚炎を治すことを望む患者が、アトピー性皮膚炎を治すのではなく単に症状を抑えるだけの薬剤で、多大の副作用を受けるリスクを、どれくらい回避したいと思うのだろうか?
病院側はネガティブ情報もしっかり患者に伝える、いや伝えられる体制を作って欲しいものだ。
おまけ★★★★東のつぶやき
以前、ある先生からお聞きした話ですが、昔、未熟児に対する医療の現場においては、高濃度酸素吸入が「常識」だったそうです。
ところが、酸素吸入を行った未熟児が、未熟児網膜症を発症し失明するケースが増え始め、最初にその治療を行いはじめたアメリカでは、その後1年間をかけて、酸素吸入を行う群と行わない群に分けて、数千人に臨床試験を行ったそうです。
その結果、酸素吸入を行った群では、高い確率で失明する患者が現れ、以降、アメリカにおいては、基本的に未熟児に対して酸素吸入は行わないようになったそうです。
ところが、日本では、そのアメリカの臨床結果の報告を受けてからも、約10年間ほど、未熟児に対して、酸素吸入を行う治療を続けたそうです!
その結果、最終的に、アメリカにおいて1年間の臨床結果で失明した患者数の、数倍の失明患者を産むことになり、その後、外部からの問題指摘により、ようやく酸素吸入を基本治療にしないようになった、という話をお聞きしたことがあります。
今では、高濃度酸素吸入で、未熟網膜症を発症、失明する恐れがあることは「常識」となっていますが、「常識」の内容が変わる過程の中で、結果を分かっていたにも関わらず、多くの患者を発生させたするなら、これほど愚かしいことはないでしょう。
エイズに代表される血液製剤の問題しかり、患者の利益よりも、製薬会社など一部の権益団体の利益が優先される日本の医療行政の体質は今も変わっていないのでしょうか?
アトピー性皮膚炎に対する薬剤の弊害も、今、言われていることが10年先、20年先になって、ようやく「常識」となるのでしょうか?
その10年間、20年間で産みだされた、薬剤の弊害を受けた患者は、どのように救われるのでしょうか?
特に、ガンなど生命に関わる副作用のリスクが報告されている現状を考えた場合、使用する医師も、「患者のことを考えた治療」を、真剣に取り組んで欲しいものです。












