【閑話休題】TARCって何?

ショウゴです。

 

 

 

 

 

 

 

 

                      
昨日のブログで取り上げていたTARCについて、解説した記事を見つけたので紹介するね。
             
             
●新型コロナの重症化を予測するという、『TARC』ってなんですか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/horimukaikenta/20210612-00242584/
          
アトピー性皮膚炎の重症度の参考になる『TARC』が、新型コロナの重症化の予測に役立つのではないかという研究結果が報告され、新型コロナの重症化判定の補助として保険適用になったと報道がありました(※1)。
すでにTARCに関しては、新型コロナウイルス感染症診療の手引きにも掲載されている指標です(※2)。
そこで今回は、『TARC』に関して、簡単に解説したいと思います。
        
▼アトピー性皮膚炎の重症度の参考になる『TARC』とは?
        
TARCというのは、もともとはアトピー性皮膚炎の重症度判定で汎用されている『Th2ケモカイン』で、血液検査で行われます。そしてTARCが高いほど、アトピー性皮膚炎の炎症が強い、と判断されます。
とはいえ、『Th2ケモカイン』という言葉は難しいですよね。
まずはここから、簡単に解説しましょう。
からだの中にある免疫細胞のうち、『ヘルパーT細胞』というリンパ球のグループがあります。そして、ヘルパーT細胞は、大きく『ヘルパーT1細胞』と『ヘルパーT2細胞』にわけられます。
このヘルパーT2細胞は、アレルギーに関与しやすいリンパ球であり、『Th2』と略されます。
細胞と細胞は、普段から連絡を取り合いながら活動しています。
みなさんも、電話やLINEのメッセージを友人と取り合ったりしますよね。その方法も様々でしょう。
そのような連絡するための信号物質を『サイトカイン』と言います。
サイトカインは、たとえばインターロイキン4(IL-4)、IL-13など番号がついていますが、ここでは『信号物質4番』『信号物質13番』などと考えればOKです。みなさんが、様々な連絡手段を持っているのと同様ですね。
サイトカインはすぐ隣の細胞へ情報を伝達します。
しかし、サイトカインの一部には、すこし遠くの細胞へ走っていって(走化するといいます)情報を伝える性質をもったものがあり、このようなサイトカインのことを『ケモカイン』と言います(※※)。
つまり『Th2ケモカイン』とは、『免疫細胞のうち、アレルギーに関係している細胞のグループ内で情報を伝える物質』ということです。
             
▼TARCが『低いと』新型コロナが重症しやすい?
         
重症化を予測するTARC値に関し、報道では95pg/mlが目安として示されていました。
論文化されている先行研究では87.5 pg/mLという数値(カットオフ値)が提示されています。
そして、TARCがこの値より低いと、新型コロナが重症になりやすいと考えられるそうです。
精度としては感度91.5%、特異度82.4%と報告されています。
ざっくりいうと、感度91.5%とは、TARCの数値を参考にすると重症化する方を91.5%捕捉できるということ、特異度82.4%とは、TARCの数値により新型コロナが重篤化しないことを82.4%あてることができるということです(専門用語的には正確性に欠けますが、ここでは簡単に述べました)(※3)。
注意点として、『新型コロナが疑われるような症状もないのに検査をしておく必要はない』ということと、実際に運用され始めた後に、数値は変わってくる可能性があるということが挙げられます。
あくまでも、新型コロナウイルス感染症がわかっている人に対し、重症になるかどうかを予測するために検査をするときに『参考になる』検査と言えるでしょう。
         
▼アトピー性皮膚炎があると、重症化しやすい?しにくい?
    
アトピー性皮膚炎があると、TARCが高くなることがわかっています。
では、アトピー性皮膚炎があると、TARCが高くなるため新型コロナにかかりにくくなるのでしょうか?
アトピー性皮膚炎や乾癬といった、皮膚に炎症がある病気があると新型コロナに感染するリスクを1.5倍以上増加させるという報告があります。
しかし、同じ研究では、人工呼吸器を使用するほど重症化するリスクは5分の1ほどに低下するという結果にもなっていますので、TARCが高値と矛盾はしないと言えそうです(※4)。
一方で、TARC 95pg/mlという数値は、私のように子どものアレルギー疾患を中心に診療している医師は、普段はあまり見ないほど低い値です。
子どもはもともと成人よりもTARCが高めということもありますし、健常な成人ではTARCが71~848pg/mLという範囲と報告されており、そんなに見られる値ではないのです(※5)。
つまり、個人的な考えも含まれますが、アトピー性皮膚炎があるとTARCが高くなるのならアトピー性皮膚炎を治療しないほうがいい…では『ない』と考えられます。
アトピー性皮膚炎を適切に治療しても、TARC 95pg/mL未満になることはまずないでしょう。ですので、アトピー性皮膚炎の方も、普段の治療はきちんと行ってくださいね。
さて、先に述べた研究でも、TARCが高くなると新型コロナが重篤化しにくくなる理由は十分にはわかっていないようです。ただ、TARCは小児のほうが高い傾向があるために、子どもが重症化しにくい理由の一つになるかもしれないと考察されています(※3)。
また、報道では17分で結果が判明する…とされていますが、あくまでこの時間は高価な検査機器を利用した場合です。一般的には外部の検査機関に発注する検査になりますので、検査結果が判明するまでに1~数日はかかるのではと思います。
もちろん、このような『重症化予測』が、ひろく利用されている検査の値を参考に実施できるというのはとても朗報ですよね。
このような進歩により、重症化を予測しながら医療資源が効率的に利用されるようになり、このコロナ禍を越えていくことを願っています。
        
        
なかなか、面白い記事かもしれないね。
特に、

アトピー性皮膚炎や乾癬といった、皮膚に炎症がある病気があると新型コロナに感染するリスクを1.5倍以上増加させるという報告があります。
しかし、同じ研究では、人工呼吸器を使用するほど重症化するリスクは5分の1ほどに低下するという結果にもなっていますので、TARCが高値と矛盾はしないと言えそうです

というのは興味深いところだよね。

                         
おまけ★★★★大田のつぶやき

記事にも書かれているように、アトピー性皮膚炎の治療を行わないことが、新型コロナウイルスの重症化を防ぐ、という風には捉えないように注意が必要でしょう。
ただ、免疫の働きが、アレルギーと感染症では、ある意味、逆に働くというのは興味深いですね。