あとぴナビ2021年春号の特集記事より(2)

編集の北です。

 

 

 

 

 

 

 

                    
今日は、昨日の続きです。
         
         
●あとぴナビ・サイエンス(2021年春号より)
        
アトピー・ストレス・心の状態 その関係を明らかにする
        
▼ストレスに対抗する体の仕組み
         
私たちの身体とストレスの関係も、ゴムボールのたとえ話と同様に考えることができます。ボールが適度な外部刺激(ストレス)を受けて、ゴムの柔軟性を維持しながら飛び跳ねている状態は健康な状態です。私たちも、自分にとって許容範囲のストレス(たとえば、やりがいのある仕事への挑戦も適度なストレスを受けていることになります)に対応することで、達成感や新たなモチベーションを得ることもできます。このようなストレスは、むしろ心身の健康に必要なものであり、一概にストレスを悪物と決めつけることはできません。
それでも、過度なストレスがかかり続けると、ゴムボールが凹んだままになったり破裂してしまったりするように、私たちの心身も耐えきれず病的な状態に陥ってしまいます。
当然ながら、私たちの体はゴムボールのように単純ではありません。神経系、内分泌(ホルモン)系、免疫系という生体維持のためのシステムが相互作用することによって人体はコントロールされています。このシステムをホメオスタシス(生体の恒常性=体に起こった変化を元に戻そうとする働き)と言いますが、その仕組みは非常に複雑です。
人がストレスを感じたとき、体ではどんな反応が起こっているのでしょう? まず、ストレスによる刺激(ストレッサー)は脳の中枢部にある視(し)床下部(しょうかぶ)に伝わります。すると視床下部は、ストレスに対抗するための指令を内分泌系と自律神経系に送ります。この指令によって様々なホルモンが情報を伝え、神経系が刺激されてストレスへの対抗処置がとられます。専門用語を使った難しい話は抜きにして、ポイントは脳から次のふたつの指令が出されることです。とりあえず、ここではこれだけを覚えておけばよいでしょう。
            
<内分泌系への指令> 
ストレスに対抗するために「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」を出せ
         
<神経系への指令>
ストレスに抵抗するために、交感神経を優位にしろ
          
▼アトピーと精神疾患の関係を解明する
          
アトピー性皮膚炎は、乳幼児期の代表的な皮膚疾患のひとつです。強い痒みが続くことが不快感や苦痛をもたらし、患者さんに過剰なストレスを与え続けてしまうことは疑いありません。さらに最近の大規模なコホート研究では、アトピー性皮膚炎が長引くことで、不安症、鬱、自閉症、ADHD(注意欠損多動性障害)といった精神性の障害が生じやすくなるという報告もあります。
コホート研究とは特定の集団を追跡観察することで、その集団がかかりやすい病気を統計的に明らかにする方法です。たとえば、喫煙習慣のあるグループと喫煙習慣のないグループにわけて何年にもわたって追跡調査を行い、肺がんになる確率がどちらのグループで高くなるのかがわかります。この研究手法によって事実(たとえば喫煙すると肺がんになりやすいという事実)を示すことはできますが、その因果関係やメカニズムを解明するまでには至りません。
そこで、国立精神・神経医療センターの橋本先生らは、アトピー性皮膚炎と精神疾患の因果関係を解明する実験研究に着手しました。最初に、実験の大まかな流れを把握しておきましょう。
         
<実験の流れ>
①アトピー性皮膚炎のモデルマウス(乳幼児)を用意する
②モデルマウス(乳幼児)にストレスが生じているかを確認する
③成長したモデルマウス(思春期)の脳の状態を調べる
④脳内で起こった変化と鬱症状の関係、精神・神経発達への影響を調べる
         
乳幼児期のマウスに人為的に皮膚炎を発症(アトピー性皮膚炎に近い状態)させて、成長後の脳の状態を調べたのは、脳内の神経や細胞が精神疾患に大きく関与しているからです。詳細については順を追って説明していくことにしましょう。
       
   
実験の結果を含めた続きは明日に続きます。

                      
おまけ★★★★南のつぶやき

ストレスは、内分泌系や自律神経に対して影響を与えることが分かります。
アトピー性皮膚炎にとって、この内分泌や自律神経は症状にも影響を与えますので、注意が必要でしょう。