2020年冬号のあとぴナビ、特集記事より(1)

編集の北です。

 

 

 

 

 

 

 

                       
今日は、今月号に掲載された、あとぴナビの取材記事を紹介しましょう。
        
         
●あとぴナビ・サイエンス
前向きな気持ちがアトピーを改善する
          
2020年6月、欧州アレルギー学会誌『Allergy』に、アトピー性皮膚炎に関連するとても興味深い研究論文※が発表されました。研究論文のプレスリリースには、「前向きな気持ちはアレルギーを改善させる」というタイトルがつけられています。前向きになるとアトピーは改善されるのでしょうか? 研究チームの中尾先生に話を聞きました。
          
監修:山梨大学医学部免疫学講座教授
中尾篤人 Atsuhito Nakao
      
▼感情と症状はリンクしている
          
あなたの気分や感情は、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー症状に関与しています。たとえば、精神的なストレスがアレルギー症状を悪化させることを、経験的に感じたことのある方は、案外多いのではないでしょうか。ストレスを感じて胃が痛くなったり、アレルギー疾患においても精神的なストレスにより症状が悪化するケースがあります。
 精神的な変化は、症状の改善をもたらすこともあります。たとえば、新薬開発の臨床試験ではこんなことが起こります。試験を受ける患者さんが新薬の効き目に期待するあまり、試験用の偽薬(ぎやく)(プラセボ)に当たった場合でも、実際の薬効と無関係な効果が現れてしまうことがあるのです。
新薬の開発時には、科学的に薬効を証明するために、本物の薬を摂取するグループと偽物の薬を摂取するグループにわけ治験者を無作為に選び、医師にもどちらであるか伝えないという二重盲検法(にじゅうもうけんほう)がよく採用されます。当然ながら臨床試験を受ける患者さんは、自分が摂取した薬が本物か偽物か知らされていません。この状況で新薬に大きな期待を持つ人は気持ちが前向きになっていますから、偽薬でも効いてしまうことがあり、これを「プラセボ効果」といいます。
プラセボ効果が強く出てしまうと、新薬の本当の効果を判定することが難しくなってしまいます。薬の開発にとっては困った問題ですが、人の感情が症状に大きく影響することを示唆する現象であることはおわかりいただけるでしょう。
 このように、心の変化がアレルギー性疾患の症状に影響を与えることは、以前から経験的にも疫学(集団を対象とした医学研究)的にもよく知られたことでした。しかしなぜ、心の変化によって症状が改善したり悪化したりするのでしょう? その仕組みを解明する研究は進んでいませんでした。これから紹介する研究成果は、心の状態とアレルギー症状を生み出す免疫の仕組みがリンクしていることを、世界で初めて証明することに成功しています。
        
▼感情はどこで生まれるの?
          
具体的な研究内容を説明する前に、人の感情がどのように生まれるのかを簡単に説明します。脳において感情を司る神経細胞(ニューロン)が集まっているのは、脳(のう)幹(かん)上部およびその周辺(大脳(だいのう)辺(へん)縁(えん)系(けい))です。
まず、脳の構造をざっくり把握しておきましょう。脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、ほ乳類)の脳はいずれも同じ構造を持っており、脳幹・小脳・大脳からなります。さらに大脳は、大脳(だいのう)皮質(ひしつ)(進化的に新しい層)と大脳辺縁系(進化的に古い層)にわけて考えることができます。
イラストAをご覧になるとわかるように、人間の脳の大部分を占める大脳皮質が大脳辺縁系に覆いかぶさり、その奥には脳幹があります。イラストでは脳の構造をとても大雑把に3層に分け、それぞれの機能を一言で説明していますが、脳の奥に行くほど生命維持に必要な重要機能が備わっていることがわかります。
このような脳の構造は、生物の進化過程において脳がどのように変化してきたかを示しています。どういうことかというと、生物の進化にともない、脳は基本構造を変えずに新しい機能を加えるように進化してきたわけです。脳幹という生命維持に最低限必要な古い層の上に、大脳辺縁系と大脳皮質を発達させることで脳の機能は拡張されてきました。
たとえば魚類は、脳の大部分を脳幹が占め、大脳には大脳辺縁系にあたる部分しかありません。つまり、生命維持と本能的な行動には十分な機能を備えていても、大脳皮質が巨大化した人間のように知的活動を行えるほどの機能はありません。
       
      
今日は、まず記事の前半部分の紹介です。
続きは明日にしたいと思います。

                         
おまけ★★★★大田のつぶやき

ポイントはやはり、「症状と感情はリンクしている」という部分でしょう。
気持ちの持ち方が体に影響を与える、ということは、いろいろな事例で明らかですが、数値で表すことが難しい分、どうしても主観的な側面の要因がぬぐいきれませんでした。
今回の研究では、それらをエビデンスを元に紹介しています。
明日もぜひご覧ください。