アレルギー性皮膚炎を悪化させる樹状細胞集団を発見

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     
今日は、順天堂大学の研究記事を紹介しましょう。
          
         
●アレルギー性皮膚炎を悪化させる樹状細胞集団を発見
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000228.000021495.html
        
順天堂大学大学院医学研究科 生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦 教授、古賀友紹 非常勤講師(現熊本大学発生医学研究所)らの研究グループは、九州大学、大阪大学との共同研究により、生理活性脂質ロイコトリエンB4(*1)の受容体BLT1を発現し、アレルギー性皮膚炎を悪化させる樹状細胞(*2)集団(BLT1hi DC)の同定に成功しました。また、この樹状細胞集団が、一般的な樹状細胞とは異なり、リンパ節に移行せずに炎症部位に留まり、T細胞を炎症性のTh1細胞へと分化させて、接触性皮膚炎の症状を増悪させることを明らかにしました。この研究結果は、アレルギー性皮膚炎などの新規予防・治療法の開発につながる成果です。本研究は、免疫学の国際誌 Cellular & Molecular Immunology オンライン版 (2020年10月9日) に発表されました。
       
▼本研究成果のポイント
・生理活性脂質ロイコトリエンB4の受容体BLT1を発現する樹状細胞集団を発見
・BLT1を発現する樹状細胞集団は、炎症部位に留まり多くのIL-12を産生し、T細胞を炎症性のTh1細胞へ分化誘導することで皮膚炎を増悪させる
・アレルギー性皮膚炎の新規予防・治療法につながる研究成果
    
▼背景
アレルギー性皮膚炎は、発症原因(抗原やアレルゲン)の特定とその除去がとても重要ですが、原因を特定出来ないことや、原因がわかっても日常生活から完全に取り除くことが困難な場合が少なくありません。そのため、発症原因の特定と除去に拘らない新しい治療法の開発が求められています。アレルギー性皮膚炎の発症機構にはいまだ不明な点が多く残されており、アレルギー性炎症の分子機構を明らかにすることは、分子を標的にした新しい治療法を開発することにつながります。
研究グループは、免疫応答の司令塔である樹状細胞の機能解析を行うことがアレルギー性皮膚炎の分子機構を解明するのに有用ではないかと考えました。また、研究グループが世界に先駆けて同定し、様々な炎症性疾患を悪化させることを報告してきた生理活性脂質ロイコトリエンB4の受容体BLT1を介した皮膚炎発症のメカニズムが解明できるのではないかと考えました。そこで本研究では、樹状細胞におけるBLT1の発現解析と、BLT1発現細胞の機能解析を行いました。
       
▼内容
まず、マウスの脾臓や肺などに存在する樹状細胞におけるBLT1受容体分子の発現を解析しました。その結果、興味深いことに樹状細胞には、BLT1を発現する細胞集団(BLT1hi DC)と発現しない細胞集団(BLT1lo DC)が存在することがわかりました(図1A)。次に、これらの樹状細胞の機能を解析するために、アレルギー性皮膚炎マウスモデルを作成し、細胞移植実験を行いました。BLT1hi DCを移植したマウスではBLT1lo DCを移植したマウスに比較して耳の腫れが増大し、炎症マーカーの発現も増強されました(図1B)。
さらに樹状細胞特異的にBLT1を欠損するマウスを作成したところ、アレルギー性皮膚炎が減弱したことから、BLT1hi DCにおけるBLT1が皮膚炎を増悪させることがわかりました。この細胞集団の機能的な違いを生み出す分子機構を明らかにする目的で、包括的な遺伝子発現プロファイルを解析したところ、BLT1hi DCが炎症性のTh1細胞を分化誘導するサイトカインIL-12を強く発現すること、一方でBLT1lo DCがT細胞の増殖を誘導するサイトカインIL-2を顕著に発現することがわかりました(図2)。さらに、BLT1hi DCは一般的な樹状細胞とは異なり、リンパ節へ移行せずむしろ生理活性脂質であるロイコトリエンB4に引き付けられ炎症部位に留まる傾向があることがわかりました(図2)。
以上の結果から、1)樹状細胞においてBLT1発現が異なる亜集団が存在すること、2)BLT1hi DC、BLT1lo DCはサイトカイン産性能とリンパ節移行能において異なる機能を有すること、3)BLT1hi DCがアレルギー性皮膚炎を増悪すること、が明らかとなりました。
       
▼今後の展開
本研究は、これまで知られていなかった新規樹状細胞集団を同定した点で意義があります。このBLT1hi DCは炎症部位に留まって大量のIL-12を産生し、末梢におけるTh1分化を促進させます。これは局所において免疫反応を増強する働きがありますが、一方、過剰に働くとアレルギー性皮膚炎などを引き起こすと考えられます。この報告も世界で初めてになります(図2)。アレルギー性皮膚炎は世界中で患者数が多い疾患です。本研究グループが発見した新規樹状細胞集団を標的とした、アレルギー性皮膚炎の新規予防法や新規治療薬の開発が期待されます。
         
       
アレルギー性皮膚炎の原因、そして悪化要因として、今回の研究記事は興味深いところです。
特に「BLT1を発現する樹状細胞集団は、炎症部位に留まり多くのIL-12を産生し、T細胞を炎症性のTh1細胞へ分化誘導することで皮膚炎を増悪させる」という部位は、炎症を繰り返し掻き壊すことでさらに痒みが強くなるアトピー性皮膚炎の特徴にもつながっているように思います。
今後の研究結果に期待したいと思います。

                            
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回の研究結果は、すなわち全てがアトピー性皮膚炎の全体像とイコールとはならんが、少なくともその一部を指し示していると考えてよいじゃろう。
アトピー性皮膚炎の悪化要因につながるサイトカインは、IL4などいくつかあるのじゃが、記事にあるようにIL12もその一つと考えてもよいのじゃろう。