耐性菌の反撃とは??(5)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

                      
今日は今回のテーマの最後です。

昨日は、医学や薬の研究とは、「利益」につながるかどうかが、大きな基準となっていると述べました。
医学の研究は、それを実証するための臨床試験など、膨大な時間と、そして膨大なコストを必要とします。
一つの効果が認められた薬剤があったとしても、その薬剤が同時に生命に影響を与えるような強い副作用を持っていたのでは使用することはできません。
そして、そうした副作用を持たないこと、つまり安全性の検証には、相当な時間を要します。

世界中には数多くの薬剤を研究する機関が存在しています。
製薬メーカーだけでなく、製薬メーカーの依頼を受けた大学機関なども該当します。
そして、毎日数多くの発見がなされ、その中で生き残るのは「利益を生む研究」が優先されることになります。
もちろん、利益を度外視した研究もありますが、それは、その研究を支える費用を「誰かが負担してくれる」ことが絶対条件となります。
シャーレで菌の培養を行うのでも、シャーレ代、寒天代、培養するための装置、そしてその装置を動かす電気代など、数多くの備品と費用が発生します。

以前、あとぴナビで神戸大学と、アトピー性皮膚炎の方のバリア機能に対する「育菌」をテーマにした共同研究を行ったことがあります。
その研究では、黄色ブドウ球菌を死滅させ、同時に表皮ブドウ球菌を増やす、スキンケアの物質がないのかを調べました。
1回で約300枚のシャーレを使って、さまざまなスキンケアの原料を菌を植えた培地に塗布、繁殖状況を調べたのです。
おおよそ、2年ほどかけた研究の間に使用したシャーレは1万枚を超えました。

私たちは、こうした「医療の開発の現実」にはあまり目を向けず、医療とは「善」の中だけで進んでいると考えます。
少し悲しい話ですが、医療の進展には「人為的な選択要素」が働く、ということです。

仮に耐性菌の問題があったとしても、製薬メーカーは「耐性菌を生まない薬の研究」よりも、「耐性菌に効果がある薬の研究」を優先するでしょう。なぜなら、耐性菌の問題からは、もう逃れることができない状態にきているからです。
つまり、「患者」という「市場」から求められるのは、耐性菌に効く薬剤ですので、「将来への研究」ではなく、「今、必要な研究」を優先することなります。
これは、決して間違いではありませんが、耐性菌に効く薬剤の研究は、次の耐性菌を生む土壌とも言えます。少し極端な言い方をすれば、「マッチポンプ」のような状況です。

いったん、耐性菌の問題がリセットされたなら、「耐性菌を生まない薬の研究」も加速がつくのでしょうが、今は、直近の利益を生むであろう研究がどうしても優先されてしまう、という現状があります。

アトピー性皮膚炎も、ステロイド剤の問題、プロトピックの問題など、薬剤が抱える問題はいくつもありました。そして、これからもその問題は、なくなることはないでしょう。
「今だけを見た治療」で考えるならば正しい治療であっても、それが将来を見渡した上で考えると、必ずしも正しくなかった、という治療は存在します。
しかし、そうした治療は、時間がたってはじめてわかることです。
その治療が標準的に行われている段階では、気が付いていなかった、というのは過去の事例でいとまがないでしょう。

今回は、耐性菌の話題があったので取り上げましたが、病気の治療を「薬剤」で行う、今の体制は、将来に向けた問題を抱えている場合があることを忘れてはならないでしょう。

                       
おまけ★★★★博士のつぶやき

病を治すのは、自分の体自身しかない。
薬や手術、ケアもそうじゃが、あくまで自分自身で治していくための「手助け」に過ぎん。
そうした「手助け」を、どのような視点で選択していくのかは、見極める「目」を持ちたいものじゃの。