痒みとIgEの研究(3)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

                      
今日も昨日の続きです。 
                
          
●アレルギー研究最前線 痒みの素、IgEを減らすためのB細胞物語
          
監修/北村大介(東京理科大学生命医科学研究所、分子生物学研究部門 生命科学研究科 生命科学専攻 教授)
         
▼免疫グロブリンは形が大事
        
B細胞が抗体を作るまでのしくみが大体わかったところで、肝心な抗体の話に移りましょう。抗体とは、抗原を識別して結合(攻撃)し、身体を外敵から守る働きのあるタンパク質で、5つのクラス(IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)に分類されます。Igとは免疫グロブリン(Immunoglobulin)の略で、免疫グロブリンには、G,M,A,E、Dの5タイプがあるということです。
この5つは何が違うかというと、まず形が違います。表1の絵をみると、「え? どれもY字型だし、どこが違うの?」と思うかもしれません。ところがよく見ると、基本的構造は同じでも、細部が少しずつ違うのです。その違いを、Igの中で最も量が多いIgGの模式図(図1)で説明しましょう。
Igの構造はどれも共通していて、Y字の内側に一対のH鎖(重鎖:heavychain)があり(黒色)、上部と下部が柔軟なヒンジで接合されています。H鎖の外側にはそれぞれ一本ずつL鎖(軽鎖:light chain)があります(青色)。
Y字上部の先端部分は「可変部」、その下は「定常部」と呼ばれています。
可変部は抗原が結合する部分で、どんな抗原が来ても結合できるように、1000億種類以上もの形状が用意されています。一方の定常部は5種類あり、5つのクラスは定常部の形状の違いということです。
          
▼B細胞は自ら遺伝子を組み替える
           
ところで、可変部の形状が1000億種類以上もあるというのは、驚きの多さだと思いませんか? これは、どんな敵(抗原)がやってきても対応できるように用意されているわけですが、どのようにしてこれだけの数の受容体ができるのか不思議です。人の遺伝子の総数は約3万、その中で免疫にかかわる遺伝子は数千種類しかないのですから。
この謎が解明されたのは、今から約30年前のことです。日本の生物学者・利根川進博士が、B細胞が遺伝子構造を変化させる(遺伝子の再編成)ことによってIgの膨大な多様性が生まれることを証明し、ノーベル賞を受賞しました。それまでの、遺伝子構造は不変であるという常識が覆ったのです。
          
▼クラススイッチで抗体力アップ
          
それでは、定常部の5種類の形状、つまりIgの5つのクラスはどのように決まるのでしょう? これには段階があって、最初は結合力の弱いIgMを分泌します(1次免疫応答)。その後数日を経て、クラススイッチが起こり、IgG、IgE、IgAのいずれかに切り替わり(2次免疫応答)、抗原への結合力を強化します。
クラススイッチでは、可変部(抗原接合部)は変化せずに、定常部だけが変わります。つまり、対象とする抗原は変えずに、Igのクラスだけが変わります。
このとき、可変部の遺伝子再編成と違う領域で遺伝子組み換えが起こっているのですが、その際に抗体を刺激するサイトカインの種類によって、Igのクラスが決まります。例えば、IgMがIL4(インターロイキン4)に刺激されるとIgG1(IgGのサブクラス)に変化し、さらに強いIL4刺激が加わると、IgEに変化するといった具合です。
なぜクラススイッチという仕組みがあるのかといえば、免疫応答が進むにつれ、抗体の質を高めていくためと考えられます。
         
            
記事にあるように、本来Igは、まずIgMから始まります。その後、クラススイッチにより、IgG、IgE、IgAのどれかに切り替わります。
そして、ここに深く関わるのが、サイトカインです。
インターロイキン4がストレスなどにより多く産生されることは、別の研究により明らかになっていますが、そうしたサイトカインがIgEを増強していることは興味深いところです。
なぜなら、生活環境とアトピー性皮膚炎が密接に関わっている、ということに繋がってくるからです。

明日は最後の部分を見ていきましょう。

                       
おまけ★★★★東のつぶやき

以前、B細胞の研究も行っている皮膚科の医師を取材した際、基本的に皮膚科医は臨床は多く行っていても、免疫の専門家ではなく、細かな免疫の仕組みを知っているわけではないことを話されていました。
免疫の研究は日々進んでいますので、できれば医師の間でも、そうした研究が臨床に役立つようにして欲しいですね。