アトピーはなぜ治らないのか?(3)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     
今日も昨日の続きです。

アレルギーが生じる流れは昨日、説明したとおりです。
今日は、IgEがなぜ増えるのか、という部分を考えてみましょう。

アレルギー検査では血中のIgE量を調べますが、アレルギー性疾患があれば、IgE値がとても高くなることはよく知られています。
それでは、なぜIgEが増えた状態が長期間続くのでしょうか?

免疫の働きを考えると、抗原が侵入すればIgEが作られる、ということは当たり前のことのように思われるかもしれませんが、実は、この問題に対する回答は、最新の免疫学においても出ていません。

そもそも、健康な人の血液中には、IgEがほとんどありません。
IgEはもともと寄生虫や蜂毒に対する抗体で、衛生環境の整った現代人の生活にはあまり必要とされない免疫です。
そして、何より重要なポイントは、IgEの「寿命」は短い、ということです。
血液中の半減期は約半日~2日しかありません。抗原が侵入すれば一時的に増えるものの、通常はすぐに検出されなくなります。

もともと数が少なくて、寿命も短い、これが何を示しているのかと言うと、免疫の「記憶」が形成されにくいということです。
風邪やウィルスなどに対する免疫は、いったん体の中から、それらが消えても、いつでも免疫を作り出せるように準備しています。それが免疫の「記憶」です。

しかし、IgEには本来、そうした「記憶」の働きは持っていないのです。
ところが臨床上は、「記憶」しているのではないか、と疑われる部分が数多くあります。
アレルギー疾患をもつ患者の場合、長期間にわたりIgE値が高い状態が続きます。
食物アレルギーで長年食べていなかった食物を食べたら、再びアレルギー症状が出ることもあります。

これらの事実を説明するには、IgE陽性(IgEを作ることができる)の長期生存B細胞や記憶B細胞が存在すると考えるしかありません。
現在、こうした記憶B細胞の研究が進められています。

話は戻って、なぜ「アトピー性皮膚炎はコントロールするしかない」というところに問題点があるのか、というと、前提条件として長期生存B細胞がIgEでもあり得る、ということで話が進んでいるからです。

アトピー性皮膚炎の病態は千差万別です。
昔からの小児に多くみられたアレルギーを原因とするアトピー性皮膚炎や、今の成人型に多い、皮膚のバリア機能の低下から細菌叢を乱すことで発症するアトピー性皮膚炎など、その原因は千差万別です。

例えば、風邪にかかって、風邪の症状が全て消えた状態は、「コントロールしている」状態でしょうか?
アトピー性皮膚炎の症状が全て消えた、それも薬物などの使用なく、その状態が維持できている場合、それは「治った」と考えても良いでしょう。
もちろん、風邪が治っても、一年後、新たな風邪のウィルスが体内に侵入すれば、風邪の症状は現れます。その際、昨年の風邪が「再発した」とは言いません。
アトピー性皮膚炎が治っても、再び、アトピー性皮膚炎を発症する「条件」が整えば、「新たな」アトピー性皮膚炎が発症することはあり得ます。

もちろん、何らかの理由により、IgEの長期記憶B細胞を持つ方が、症状が一進一退を繰り返すことはあるでしょう。
しかし、今のアトピー性皮膚炎の治療の場合、いったん寛解した状態の患者に対しても「プロアクティブ療法」として、薬剤の使用を推奨しています。
風邪が「治った」人に風邪の症状を緩和させる薬剤の使用を継続させることはありません。
しかし、アトピー性皮膚炎の場合、炎症を引き起こす状態に関わらず、共通して薬剤の使用が推奨されています。

B細胞の働きに対する研究にも目を向けて、プロアクティブ治療が有効な患者と、必要ない患者がいることを、アトピー性皮膚炎治療に携わる医師には望みたいところです。

                         
おまけ★★★★北のつぶやき

今回のブログで取り上げたB細胞の研究については、あとぴナビで、専門の医師に取材を行っています。
来月、4月号で紹介する予定です。
少々、難しい記事ですが、おそらくアトピー性皮膚炎治療に深く関わる分野であるにも関わらず、その部分に対して一つの仮定(長期記憶B細胞が当たり前に存在する)のみを前提に治療が行われている現状は、ぜひ新たな方向性を開拓して欲しいと思います。