アトピーは洗った方が良い?洗わない方が良い?(2)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

                 
今日は、昨日の続きを見ていきましょう。
                    
          
●アトピー性皮膚炎のスキンケア、洗う? 洗わない?
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▼アトピー性皮膚炎と黄色ブドウ球菌
          
アトピー性皮膚炎は皮膚の感染症が増えることが知られており、例えば膿痂疹(一般には”とびひ”と呼ばれます)は1.8倍も発症リスクが高くなるという報告があります。
そして、とびひの大部分は黄色ブドウ球菌が原因です。黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎があると皮膚に定着するリスクが20倍になり、アトピー性皮膚炎が重症であるほど増え、定着している黄色ブドウ球菌の密度が高くなるほど食物アレルギーのリスクも高くなるという報告があります。
黄色ブドウ球菌は、それ自体がアトピー性皮膚炎の発症に関連することもわかってきて、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんから採取した黄色ブドウ球菌をマウスに移植すると、重症のアトピー性皮膚炎を発症するという報告さえあります。
すなわち、アトピー性皮膚炎が悪化すると皮膚に増えやすい黄色ブドウ球菌は減らしたほうがよいと考えられます。
とびひに関して抗菌薬を使用する場合が多いのは確かで正しい治療法です。
しかし、アトピー性皮膚炎のために定着しているだけの黄色ブドウ球菌への抗菌薬の使用は注意する必要があります。アトピー性皮膚炎のじくじくした湿疹の多くは、スキンケアや皮膚の炎症をへらす治療だけで改善することもわかってきているからです。
例えば、じくじくした湿疹のあるアトピー性皮膚炎の子ども113人を、ステロイド外用薬の使用に加えて、①抗菌薬内服、②抗菌薬外用、③抗菌薬を使わないグループに分けて2週間後の治療効果を比較した検討では、改善程度に差がなかったと報告されています。
この理由として、皮膚が改善してくると、もともと人間と共存している菌から作られる「抗菌ペプチド」という物質(天然の抗生物質のようなもの)が黄色ブドウ球菌の増殖を抑えることが挙げられます。
そのため、ひどくなったアトピー性皮膚炎は石けんで洗浄をしてステロイド外用薬などを使用し炎症を良くする必要があるのです。
        
▼アトピー性皮膚炎と入浴
        
では、アトピー性皮膚炎の重症度に、入浴頻度や入浴時間が影響するでしょうか?
夏の時期は汗の悪い面が出やすい季節ですし、シャワー浴がアトピー性皮膚炎の改善に働くという報告がいくつもあります。
例えば、平均4.7歳のアトピー性皮膚炎患の子ども96人に対して、入浴を1日1回きちんとしたグループの方がアトピー性皮膚炎の改善が良かったという結果や、アトピー性皮膚炎の小学生53人に対し、昼休み中にシャワーを追加すると症状が改善したという報告があります。
ただ、入浴時間に関しては、長時間になるほどアトピー性皮膚炎の悪化に働くという報告があり、皮膚の乾燥を悪化させてしまうのかもしれません。浴槽にはいる時間は短時間にとどめたほうがよさそうです。
       
▼石けんは使うべき?
         
では、石けんに関してはどうでしょう?
石けんは黄色ブドウ球菌をへらす作用がある一方で、皮脂を落とし、皮膚を乾燥させる作用があります。すなわち、アトピー性皮膚炎に良い影響も、悪い影響も起こす可能性があることになります。
石けんは使わないようにという説明をされる医師はその悪い面を考慮されているのでしょう。特に、皮膚機能が成熟していない赤ちゃんに対し石けんを使用しないように指導される場合も見受けられます。
ただ、新生児に対して洗浄製品を使った入浴群 159人と水のみの入浴群 148人とを比較して28日目の皮膚の状態や皮膚バリア機能には差がなかったという報告があり、私は、大きな問題はないのではと考えています。
むしろ、石けんを使用したグループと水のみで洗浄したグループに対して、28日目に「このスキンケアを続けますか?」という質問を行うと、水のみで洗浄したグループでは匂いが気になるという保護者が有意に多く、石けん洗浄への変更をより多く希望したと報告されています(図2)。
これらの結果から、石けんで洗ってそのままにするのは乾燥を助長する可能性があるので、保湿剤をしっかり塗ることを併用することが勧められます。
さらに、保湿剤をきちんと塗ると皮膚の黄色ブドウ球菌が減り正常な菌が回復することも報告されていますので、自分自身から作る抗菌ペプチドで皮膚への感染から身を守ることが期待できるでしょう。私は、このような保湿剤による対策を行えば、石けんに関して過剰に心配する必要はないと思っています。
しかし、洗浄する成分に関して、硫酸ラウリルナトリウムという成分は世の中の洗浄成分の半数には含まれ、薄い濃度でも皮膚を傷めるかもしれないという報告があります。
実際に、髪の生え際や首の後ろの部分が悪化しているお子さんをしばしば経験します。これは、シャンプーの流し残しがあるのではないかと私は考えています。ですので、心当たりのある方はしっかり洗い流すことを心がけましょう。
         
          
今日の記事のポイントは、「黄色ブドウ球菌」という部分でしょう。
黄色ブドウ球菌は、皮膚の細菌叢に影響を与えることで、バリア機能を低下させ、アトピー性皮膚炎の症状の悪化要因となるのと同時に、発症要因の一つになることは、最新の研究で明らかになってきています。
もちろん、この場合、アトピー性皮膚炎の悪化、そして発症の根本原因が「黄色ブドウ球菌」ということではありません。根本的な問題の部分は「皮膚の細菌叢」であり、その乱す原因の菌の一つが黄色ブドウ球菌、ということです。実際、アトピー性皮膚炎の方の肌を検査すると、ボービス菌など黄色ブドウ球菌以外の菌叢が増えていることも確認されています。

そして、入浴と洗浄は、こうした菌を落とすことには役立ち、同時に、皮脂を落とすことで乾燥を生じさせるリスクがあります。前者はアトピー性皮膚炎を悪化・発症する要因を防ぎ、後者は悪化させる要因・発症の要因につながります。
難しいのは、どちらを重視するかによって、患者への指導方法が異なる、ということです。
続きは明日です。

                    
おまけ★★★★東のつぶやき

記事では、重症のアトピー性皮膚炎患者の黄色ブドウ球菌をマウスに移植するとアトピー性皮膚炎を発症した、というように書かれていますが、これは誤解を生むかもしれません。
これは移植したマウスの皮膚のバリア機能の問題が関係していて、アトピー性皮膚炎の人の黄色ブドウ球菌だから、というわけではないはずです。
アトピー性皮膚炎に対する偏見につながりかねないので注意しましょう。