黄色ブドウ球菌の話(2)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

                   
今日は昨日の続きです。
黄色ブドウ球菌に関する記事を紹介して、そのポイントが、

1.黄色ブドウ球菌は、皮膚の表面や鼻の穴周辺に存在するありふれた菌である
2.温度と水分で増殖して、熱にも強いやっかいな菌
3.でも、温度と水分があるヒトの皮膚の上では簡単には増殖しない

にあることを述べました。
今日は、このポイントについて解説しましょう。

まず、記事に書かれていたようにヒトの皮膚はブドウ球菌が数多く存在しています。
そのほとんどは、「表皮ブドウ球菌」という菌で、いわゆる「善玉菌」です。そして、悪玉菌である「黄色ブドウ球菌」も、一緒に存在して、主に鼻の下などに「生息」しています。
とはいえ、通常、皮膚の表面で存在している黄色ブドウ球菌は、活発な活動を行っておらず、事実上、無害な状態で「共存」しています。

しかし、何かをきっかけに、黄色ブドウ球菌が活性化し、増殖して活動を始めると、黄色ブドウ球菌が産生する「物質」が生体に「悪さ」をします。
その物質とは、記事中の食中毒であれば「エンテロトキシン」であり、アトピー性皮膚炎であれば、IgEを作り出してアレルギーを増強する「デルタトキシン」です。
黄色ブドウ球菌は、温度と水分で増殖、熱にも強く、食品中においては加熱で対応ができないやっかいな菌と言えます。
しかし、同じ「温度と水分」が備わっているヒトの皮膚の上では、簡単には増殖しません。
その理由は、腸内環境と似ています。イメージとして、ヒトの皮膚は通常、表皮ブドウ球菌を中心とした「善玉菌」がフローラ(群叢)を形成、悪玉菌が増殖するスペースを与えていない、という感じになります。
また、皮膚表面は、皮脂膜(ヒトが自分の力で行うスキンケアの機能)によって弱酸性に保たれ、「悪玉菌」の増殖を防いでいますし、ランゲルハンス細胞が免疫機能を使って菌から肌を防御しています。

ここで、考えなければならないのが、アトピー性皮膚炎の方の肌状態です。
これまで数多くの研究により、アトピー性皮膚炎の方の皮膚は、黄色ブドウ球菌が菌叢を占めていることが分かっています。
黄色ブドウ球菌が生成するデルタ毒素がアレルギーを増強、アトピー性皮膚炎を発症させたり、症状を悪化させていますが、なぜ「悪玉菌」が増殖してしまったのでしょうか?

健常な方の皮膚は、先ほど述べたような「健全な細菌叢」「健全な皮脂膜」「健全な免疫機能」によって守られていますが、アトピー性皮膚炎の方は、この中のどれかが、あるいは複合的に失われることで、「悪玉菌」が増殖する環境が「整ってしまった」ということでしょう。
本来、ヒトの皮膚は、温度と水分の二つが備わっていますから、黄色ブドウ球菌が繁殖するための「条件」は整っていますから、皮膚を守るそれらの防御機能が弱まったり失われたりすることで、菌叢は一気に逆転してしまう、ということになります。

では、さらに考えて、皮膚を守る防御機能は、どうすれば弱まったり失われたりするのでしょうか?
続きは、明日にしたいと思います。

                
おまけ★★★★博士のつぶやき

皮膚を守る防御機能は常に一定の力で働いておるわけではない。
強まることもあれば弱まることもあり、それを左右するのが、「生活」じゃ。
腸内の細菌叢の環境が、体全体の免疫機能に大きく関わることは広く知られておるが、皮膚の菌叢についても同様のことがいえることを忘れないようにした方が良いじゃろうの。