皮膚の細菌とアトピーの関係(4)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      
今日は、先日、紹介した記事に書かれていた「細菌移植」が果たして可能なのかについて考えてみたいと思います。

あとぴナビでも、皮膚の細菌叢については、以前から注目をしており、15年ほど前に菌の専門家の先生を取材したことをきっかけに、あるテーマで、某国立大学の感染症の研究室と共同研究を行いました。

そのテーマとは、

「黄色ブドウ球菌を死滅させて、表皮ブドウ球菌を増やすスキンケアアイテムの開発」

というものでした。
当時から、アトピー性皮膚炎の方に黄色ブドウ球菌が多いことは研究で分かっていました。そのときはまだ、黄色ブドウ球菌が、どのようにアトピー性皮膚炎の症状悪化につながっているのかまでは分かっていませんでしたが、消毒などにより黄色ブドウ球菌を一掃することでアトピー性皮膚炎の症状が軽快することは臨床的に分かっていました。
しかし、皮膚の消毒は、黄色ブドウ球菌を退治してくれますが、同時に、本来の常在菌である表皮ブドウ球菌も死滅させます。
そのことが関係しているのか、長期の消毒は、短期的な症状の改善は見込めても、やがて症状は元の状態に戻り、炎症も増加することが臨床的な傾向として見られていました。

そこで、黄色ブドウ球菌だけを退治して、逆に表皮ブドウ球菌を増やす「育菌」のスキンケアが行えないかを考えたのです。
結果の部分を先に言うと、某国立大学との共同研究は成果が得られずに失敗に終わりました。

スキンケアアイテムを、市場に流通させるためには、

・常温保存ができる
・適切な保管状態であればれ、未開封の状態で5年間は品質が変わらない

ことが望ましいとされています。
これは、化粧品の製造許可を持ったメーカーが集まって作られた組合の内規なのですが、美容成分などを含んでいる以上、常温保存で未開封で5年間もの間、品質を変えないためには防腐剤が不可欠でした。
もちろん、防腐剤を使わないでも化粧品は作れますが、その場合、冷蔵保存でさらに短期間で使いきることが原則になります。
特にエキス類を配合した場合、自然放置すれば腐敗しますから、その処理は不可欠なものでした。

ところが、この防腐剤が、皮膚に存在する常在菌を死滅させてしまうことが分かったのです。その量は微量であっても、影響を与えていました。また、黄色ブドウ球菌を死滅させるために使う成分で表皮ブドウ球菌に影響を与えない成分は、放置すれば腐敗する成分しかみつからず、結果的に防腐剤が不可欠である以上、皮膚の常在菌に影響を与えないわけにはいかない、という結論を得て約2年間の共同研究は終わりを告げたのです。

研究を行っていた当時は、なぜ防腐剤が皮膚の常在菌に影響を与えるのか、漠然とした理由しか分かりませんでしたが、今回の記事を読むと、「防腐剤(※7)がRoseomonas mucosaというグラム陰性菌の増殖を阻害し、」という部分が関係していたのかもしれません。

少し話がそれますが、この「防腐剤」が、その後、しばらくはあとぴナビのアイテムを開発、導入するためのテーマとなりました。
明日は、その部分も少し触れてみましょう。

                             
おまけ★★★★博士のつぶやき

当時は、表皮ブドウ球菌に特に注目していたわけじゃが、健全な皮膚の細菌叢は、いろいろな菌が関わっておる。
特定の菌だけを育てることは、非常に難しかったのじゃが、今後、そうした研究も進んでくると良いように思うの。