2018年4月号の記事より(6)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                       
今日は、メリットゾーンとデメリットゾーンの関係を絡めて、ステロイド剤の問題について考えてみましょう。
          
         
●ステロイド治療の「メリットゾーン」と「デメリットゾーン」
今、あなたはどっちに立っている?
(2018年4・5月号特集より)
            
▼なぜ、デメリットゾーンにいるときにステロイド剤を塗布するのが良くないのか?
         
1994年の日本皮膚科学会雑誌104巻では、「アトピー性皮膚炎における黄色ブドウ
球菌│皮疹部,無疹部における黄ブ菌検出率,ファージ型および薬剤感受性について│」という論文において、アトピー性皮膚炎患者48例全例から黄色ブドウ球菌が検出されたことが報告されています。さらに、2015年5月には、慶應義塾大学医学部から「皮膚細菌巣バランスの破綻および黄色ブドウ球菌の定着がアトピー性皮膚炎の炎症の原因となる」という論文が発表され、黄色ブドウ球菌やコリネバクテリウムボービス菌など異常な※細菌叢が皮膚に形成されることがアトピー性皮膚炎発症や悪化の原因になることが明らかにされています。
                      
ステロイド剤は、「免疫抑制」の効果を持つ薬剤です。そのため、長期連用による感染症の誘発は主な副作用として示されており、ステロイド剤の長期連用が、健全な皮膚の細菌叢を乱し、こうした黄色ブドウ球菌など異常な細菌叢の形成を促すことで、デルタ毒素などによるIgE増強からアトピー性皮膚炎を悪化させていることが、最近は研究者の間で指摘されるようになってきました。
            
このようなステロイド剤の使用によりアレルギーを増強することを示す医学的な論文は、数多く報告されていますが、ステロイド剤がアレルギーを悪化させる恐れがあることを「ステロイド剤を処方する医師」は、あまり患者に指摘せずに処方しているようです。
もちろん、メリットゾーンの中では、皮膚の健全な細菌叢を乱す恐れは少なく、アレルギーが増強されるリスクは小さいと言えるでしょう。しかし、デメリットゾーンに入ってくると、皮膚のバリア機能そのものが低下した状態に陥ることで、そこにステロイド剤の免疫抑制効果が健全な細菌叢の形成を妨げ、黄色ブドウ球菌の定着を招きやすくなることは確かですので、注意する必要があるでしょう。
このように、ステロイド剤の使用による影響は、「メリットゾーン」の中に留まっているのか、「デメリットゾーン」に足を踏み入れた状態にあるのかによって、大きく異なってきます。さらに、デメリットゾーンの奥深くまで進行することで、よりステロイド剤の使用による影響(アトピー性皮膚炎そのものの悪化など)は受けやすくなります。
もちろん、ステロイド剤を使用している間は、デメリットゾーンにいても、受容体消失による影響などが大きくなければ、薬剤の効果により炎症は抑えられ痒みも落ち着かせることができます。しかし、その一方、体の中では、IgEが増強され、炎症を作り出す力はより強まってきます。つまり皮膚の表面上は、ステロイド剤という薬剤で「マスキング」されて問題がないように見えても、マスキングされた下は、問題が積み重なっていく状態、ということになります。ステロイド剤の抗炎症効果で炎症が抑えられている間は大人しくても、何らかの要因(季節の変わり目、精神的、身体的なストレス、環境の変化、環境中の化学物質、睡眠不足や栄養の過不足、運動不足など)が加わることで、溜めこんだIgEが一気に炎症を作り出すと、悪循環の輪が形成されることで、皮膚のダメージとアトピー性皮膚炎そのものが悪化を繰り返すことになります。
            
今、自分がゾーンのどの立ち位置にいてステロイド剤を使っているのか、しっかり把握しておくことは大切でしょう。
             
             
ステロイド剤は、アトピー性皮膚炎の治療薬として使われていますが、実際の「効果」は、痒みや炎症に対する効果であって「アトピー性皮膚炎」という疾患に対する効果ではありません。
もちろん、間接的な働きはしていますが、風邪でいえば、自分の体が作り出した熱(痒み)という症状を下げる効果があるだけで、風邪(アトピー性皮膚炎)という病気そのものを直接治すものではない、ということです。
このことをしっかり理解して、「メリットゾーン」の中でどのように使えるのかを考えていくことが大切だと言えるでしょう。

明日は最後に、最近、皮膚科医がよく行っているプロアクティブ療法について述べたいと思います。

                         
おまけ★★★★博士のつぶやき

医師は、メリットゾーンであってもデメリットゾーンであっても、薬による影響の現れ方はさほど変わらない、と強調することが多いようじゃが、直接の副作用ではなく、間接的な影響については、やはり自分の立ち位置が大きく関係してくることを忘れないようにしたいものじゃ。