2018年4月号の記事より(5)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

                         
今日は、ステロイド剤がアトピー性皮膚炎を悪化させているというかなり重要な部分について考えてみたいと思います。
            
         
●ステロイド治療の「メリットゾーン」と「デメリットゾーン」
今、あなたはどっちに立っている?
(2018年4・5月号特集より)
            
▼なぜ、デメリットゾーンにいるときにステロイド剤を塗布するのが良くないのか?
          
4.ステロイド剤がアレルギーを悪化させる
           
14名の小児を対象にステロイド剤の塗布前と塗布後1カ月後の卵白の特異的IgEを測定したところ、14名中13名が1.5倍~3倍に増加しました(1名は変化なし)。
もちろん、特異的なIgEの増加は、そのまま症状の悪化度合いと比例しているわけではありませんが、少なくとも、免疫抑制により炎症を抑えるはずのステロイド剤の使用が、同時に炎症を増強する可能性があるIgEを増加させている=アトピー性皮膚炎を悪化させる恐れがあることは確かです。
2013年には世界的に著名な科学雑誌ネイチャーで、黄色ブドウ球菌が産生する毒素(デルタトキシン)が肥満細胞を活性化し、アトピー性皮膚炎を誘発する、という論文が発表されました(※5)
          
※ 5 「Staphylecoccus δ -toxin promotes mouse allergic skin disease by inducing mast cell degranulation.2013/11/21.nature」より
           
通常、アレルギーの炎症を引き起こすIgE抗体は、アレルゲン(抗原)に対するカウンターとして作り出されますが(抗原抗体反応)、黄色ブドウ球菌が出すデルタ毒素は、アレルゲンがなくても、IL4(インターロイキン4)を介してIgE抗体を増強、さらにそのIgE抗体が肥満細胞を脱顆粒させることで、炎症、痒みを生みだしていることが分かりました。
また、IgEには3つの受容体(FcεRⅠ、FcεRⅡ、Galectin-3)があります。健常な方の、B細胞は表面(surface)にIgEを持ちませんが(sIgE-B細胞)が、インターロイキン4などの刺激を受けることで、表面にIgEを持ち、さらにガレクチン‐3(Galectin-3)の受容体も発現したsIgE+B細胞へと変化することが確認されています。そして、アトピー性皮膚炎の方には、このsIgE+B細胞が多いことが分かっています。
このガレクチン‐3を発現したsIgE+B細胞は、アレルゲンと結合することで、IgEを放出します。本来、IgEなどの免疫(抗体)はアレルゲンなど異物を感知したことでTリンパ球が指令を出し、B細胞が作り出すわけですが、このガレクチン‐3の受容体を介した反応は、通常の抗原抗体反応を介さずにIgEを作り続け、体内のIgEが爆発的に増えることで、アレルゲンへの感受性を高めた状態に陥らせます。
健常な方には少ないsIgE+B細胞へと変化させる、インターロイキン4を増やす要因は、大気中の化学物質や運動不足、睡眠不足などがありますが、ステロイド剤もインターロイキン4を増やすことが確認されています。つまり、ステロイド剤の連用は、インターロイキン4を増加↓ sIgE-B細胞をsIgE+B細胞へと変化させることで、体内でIgEを増強させる恐れがあり、この点からもアレルギー反応を増強、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因になることが分かります。
              
         
少々、難しい言葉もありますが、簡単に言えば、アトピー性皮膚炎により皮膚の細菌叢が乱れた場合(あるいは、健常な方が皮膚の細菌叢を乱した場合にはアトピー性皮膚炎の発症となることもある)、定着した黄色ブドウ球菌が、痒みを増強するIgEを増やす働きに関与してくる、ということです。
また、ガレクチン3によるIgEの増強も、アレルゲンを介さずに免疫システムが働いていることから、問題が深いと言えます。

明日は、メリットゾーンとデメリットゾーンの関係を絡めて考えたいと思います。

                             

おまけ★★★★大田のつぶやき

アトピー性皮膚炎の原因がアレルギーではないことは、最近、よく言われていますが、この細菌叢の問題が、そこには深く関わっています。
ただ、病気の原因にアレルギーが関与していなくても、症状(痒み)の原因にはアレルギーが関与することが多いのも確かです。
病気の原因と症状の原因の違いを正しく把握することは難しいかもしれませんが、薬のメリットを最大限に受けて、デメリットは極力受けないようにするために、患者側も、そうした知識を持つことは大切でしょう。