2018年4月号の記事より(3)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                    
今日も昨日の続きで、「ステロイド剤が効かなくなる」という部分について考えてみましょう。
         
       
●ステロイド治療の「メリットゾーン」と「デメリットゾーン」
今、あなたはどっちに立っている?
(2018年4・5月号特集より)
        
▼なぜ、デメリットゾーンにいるときにステロイド剤を塗布するのが良くないのか?
       
2.ステロイド剤はやがて「効かなくなる」
         
1994年に発表された論文(※3)では、ヒトの上皮細胞株(Hela S3 細胞)を用いて調べたところ、長期のステロイド剤投与により、上皮細胞株のステロイド受容体が、蛋白レベルとmRNA レベルでほとんど完全に消失したことが確認されました。
          
※3「Regulation of the human giucocorticoidreceptorbylong-termandchronictreatment with glucocorticoid. Silva CM et
al.Steroid,1994;59;436-442.」より
        
よく、ステロイド剤を長期使用していると「ステロイド剤が効かなくなってきた」という言葉を聞くことがあります。処方する医師は、こうした場合に、「アトピー性皮膚炎が悪化したので、今のステロイド剤では効かなくなってきたから、強いステロイド剤に変えましょう」ということが多いようです。
もちろん、実際、アトピー性皮膚炎の症状が悪化したことで使用しているレベルのステロイド剤では「抑えきれない」というケースもあるでしょう。しかし、長期連用しているケースにおいては、論文にあるように、皮膚におけるステロイドの受容体が消失することで効果を得られなくなったケースも考えられます。実際、ステロイド剤を変える場合、今まで使用してきたよりも「弱い」ランクのステロイド剤に変更したら痒みが抑えられた、という実例もありました。
気をつけなければならないのは、論文では、不可逆的に消失したステロイドの受容体はすぐには回復せず、次から次へと効かなくなって強いレベルのステロイド剤に替えていった場合、塗るたびに受容体が消失していけば、やがてはほとんどのステロイド剤が「使えなくなる」恐れがあるということです。
実際の例としても、ロコイドなど弱いステロイド剤から使用を始め、その後10年ほど、病院を転々としながらステロイド治療を続け、最後はデルモベートなどの強力なステロイドでも効かない状況になった方がいました。その方の肌は、固く肥厚し、赤黒く色素沈着も広がり、乾燥状態がひどく、ひび割れも多くあるという、皮膚の細胞そのものに大きなダ
メージを受けていることは一目瞭然でした。
このように使えなくなったときには、取り返しのつかない状況の方が多いという事実は理解しておくべき重要な点と言えます。
ステロイド剤が「効かない」と感じた方は、デメリットゾーンの中にいる可能性が高くなりますので注意をしましょう。
            
         
この「ステロイド剤が効かなくなって、強いステロイド剤へと変わる」という部分は実際の例で見ても、かなり注意が必要な部分です。
なぜなら、本当にアトピー性皮膚炎の炎症そのものが悪化したのであれば、より吸収度が高いランクのステロイド剤に変更することは有効な治療法と言えますが、当然、吸収量が高まる=リスクも高まる、ということになります。
もし、受容体が関係して効かなくなっているのであれば、「弱いステロイド剤」(吸収力の弱い)に変更することで、炎症を抑える効果は維持され、リスクも低く抑えられる、ということになるでしょう。
その見極めが難しいことは確かですが、ステロイド剤が効かなくなるケースには、受容体の問題も関係していることは注意した方が良いでしょう。

                     
おまけ★★★★大田のつぶやき

ステロイド剤が効かなくなることで、少しずつ強いステロイド剤に代わって、皮膚のダメージも強くなって・・・・というケースは、いわゆるアトピー性皮膚炎で脱ステを目指す方の多くがたどっている道とも言えます。
同じ道をたどらないためにも、患者側が注意した方が良いことはあるのでしょう。