皮膚の形成に亜鉛が重要?(4)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

                           
今日は昨日の続きで、今回のテーマの最後になります。
         
         
●皮膚や毛の形成、腸の健康維持、免疫応答、全身成長 etc.
 生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る
(あとぴナビ2018年2・3月号掲載記事)
          
▼コラーゲン産生と亜鉛の関係を明らかにする
          
次の話の主役は、亜鉛トランスポーターZIP7です。深田教授らの研究グループは、皮膚における役割が不明だったZIP7が、線維芽細胞(皮膚の真皮層でコラーゲンなどをつくる細胞)に存在することに着目し、皮膚のコラーゲン産生や維持と亜鉛の関係を調べました。
研究手法はZIP10の実験と似ています。Ⅰ型コラーゲン遺伝子が発現する線維芽細胞でZIP7を持たないマウス(ZIP7 遺伝子欠損マウス)を用意し、健康なマウスと比べてみるという実験です。
その結果は、図Cをみていただくと一目瞭然です。ZIP7遺伝子欠損マウスの皮膚(真皮層)は非常に薄く、コラーゲン層(青色部分)も同様です。
皮膚だけではありません。ZIP7遺伝子欠損マウスには、骨が弱くて変形し(骨密度低下、軟骨組織の異常)、歯が破折し(歯牙形成異常)、皮下脂肪の減少などの異常もみられました。
真皮、骨、軟骨、歯、脂肪。これらの組織は間葉系の幹細胞から分化したという共通点を持っています。ZIP10は上皮系幹細胞でしたが、ZIP7 は間葉系幹細胞の増殖や分化に関係します。同じ皮膚でも表皮と真皮では、それらのもととなる幹細胞は異なるので、上皮系幹細胞と間葉系幹細胞とでは、それぞれに関与する亜鉛トランスポーターの種類が違うのです。
         
▼亜鉛トランスポーターが細胞のストレスを緩和する
             
では、ZIP7は、どのように間葉系幹細胞に関与しているのか? 具体的な仕組みを調べてみると、細胞質内にある小胞体と呼ばれる小器官で問題が起こることがわかりました。
ZIP7は小胞体に集まっているのですが、ZIP7がなくなると小胞体がストレスを感じ、それが原因で細胞死(アポトーシス)が生じるという問題です。小胞体では、いったいどんなストレスが生じているのでしょうか?
小胞体は、数十億に及ぶ人体のすべての細胞質内に存在します。どんなことをしている小器官かというと、タンパク質の合成、貯蔵、輸送などの品質管理を行っています。小胞体がうまく機能するおかげで、細胞のクオリティーは保たれているわけです。
そんな小胞体の中では、PDI(プロテインジスルフィードイソメラーゼ)という酵素が、つくられたタンパク質の整形を担当しています。この酵素は、小胞体内に亜鉛が増えすぎることを嫌います。亜鉛が増えすぎるとPDIたちは寄り集まり、フリーズしたような状態に陥ります。すると小胞体内には不完全なタンパク質がつくり出され、ゴミのようにたまっていきます。小胞体が感じるストレスとは、このような小胞体の環境の悪化です。
ZIP7は小胞体内をチェックして、亜鉛が増えすぎると小胞体の外に出す(小胞体の外側は細胞質なので、結局は細胞質に亜鉛を入れていることになる)役割を担っています。ZIP7のおかげで小胞体内の亜鉛量が最適化されると、PDIはしっかり働けるのでゴミはたまらず、ストレスは回避されるというわけです。
以上の仕組みから、間葉系幹細胞でZIP7が欠損すると次のような流れが生じます。
        
小胞体内に亜鉛が過剰に蓄積する

PDIがうまく機能しなくなる

小胞体内に不良タンパク質のゴミがたまる

小胞体に過剰なストレスがかかる

細胞死(アポトーシス)

細胞死により、様々な間葉系幹細胞(真皮、骨、軟骨、歯、脂肪など)がダメージを受ける。
            
▼亜鉛シグナルの研究はまだ始まったばかり
         
今回は、皮膚をテーマとしてZIP10とZIP7という亜鉛トランスポーターの役割と、亜鉛シグナルのしくみを概観してきました。この2つの研究をみただけでも、亜鉛シグナル研究には、大きな可能性が秘められていることがわかります。
アトピー性皮膚炎との関連でいえば、亜鉛が皮膚バリア機能やコラーゲン産生をはじめとする皮膚の健康に大きくかかわっていることは、大変興味深い事実です。亜鉛シグナルの研究がさらに進めば、皮膚炎や脱毛症などの新たな治療法の開発、創薬が実現するはずです。
亜鉛シグナルの研究が本格的になり、実に様々なことが明らかにされ始めています。しかし、研究分野としてはまだ歴史が浅く、これから解明されるべきことはたくさんあります。例えば、亜鉛トランスポーターは、いつ、どんなときに増えて活性化するのでしょうか?
この仕組みがわかれば、医療は飛躍的に発展するはずです。最後に、現在わかっている亜鉛トランスポーターと様々な病態の関連性をまとめた一覧表を掲載しておきます。亜鉛は、人体のあらゆる細胞に影響力を持っています。全身の成長、老化、免疫機構など、健康全体に関わり、がん、アルツハイマー、パーキンソン病などの難病との関連も明らかにされ始めています。
「亜鉛シグナルの異常はどのように病気に関わっているのか。それらの病気にはどのような亜鉛補充療法が適するのか。」などについては、深田教授が会長を務める亜鉛栄養治療研究会(
http://zincnutritional.kenkyuukai.jp)で熱心に議論されています。さらに、国際的な組織である国際亜鉛生物学会の学術大会が、深田教授が大会長として2016年の9月に日本(京都)で開催されることが決まりました。亜鉛に対する関心が、国内外で高まっています。
「亜鉛って、意外とあなどれない?」
あなたの亜鉛に対するイメージは、多少(かなり?)変わったのではないでしょうか?
             
            
真皮にはコラーゲンが深く関わってきますが、そこには昨日とは違うトランスポーター、ZIP7が関わってくることが記事には書かれています。
記事にあるよに、表皮と真皮において、必要とする「亜鉛シグナル」は異なり、その異なるシグナルは異なるトランスポーターにより運ばれている、ということです。
今回は、二つのトランスポーターに着目しましたが、今後、研究が進むと、関係するZIPに影響を与える因子、というのも見つかるかもしれません。さらに、そうした因子に、他の要因がどのように絡んでくるのか、そうしたことが一つ一つひも解かれていくことが、アトピー性皮膚炎の研究を大いに前進させてくれるように感じます。

                   
おまけ★★★★南のつぶやき

記事の最後に書かれているように、亜鉛トランスポーターが、どのように活性化されるのか、そして活性化させるためにはどういった因子が必要になるのか、この辺りは、とても重要なテーマだと思います。
今後の研究に期待したいですね。