皮膚の形成に亜鉛が重要?(1)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                         
今日は、今月号のあとぴナビの記事の中から、特集記事「生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る」を紹介しましょう。
          
          
●皮膚や毛の形成、腸の健康維持、免疫応答、全身成長 etc.
 生命にとって亜鉛がいかに重要かを知る
(あとぴナビ2018年2・3月号掲載記事)
         
亜鉛は、人間の生命維持に不可欠な栄養素といわれています。それほど重要とされていながらも、私たちは実際に亜鉛のことをあまり知らなかったりします。亜鉛はなぜ生命にとって重要なのか? 最新の亜鉛研究をヒントに考えてみましょう。
        
監修 深田俊幸
(徳島文理大学 薬学部 病態分子薬理学研究室 教授 亜鉛栄養治療研究会 会長)
          
▼生命維持に不可欠な必須微量元素
             
栄養学において、人体に必須とされるミネラル(無機質)は16種類あります。このうち1日の必要摂取量がおおむね100mg 以上のものを「主要ミネラル」、1日の必要摂取量100mg 未満のミネラルを「微量元素」と分類しています。
亜鉛は9種類ある必須微量元素の1つです。成人の体内には約2g の亜鉛が保有され、その維持のために、毎日15mg 程度の摂取が必要です。
微量ながらも、人間の生命維持に不可欠な栄養素とされている亜鉛ですが、前号の予告記事(2018年あとぴナビ電子版1月号)でお伝えしたように、これまでの日本ではその重要性が十分に認識されにくい傾向がありました。
これから紹介する新たな亜鉛研究の潮流は、そんな状況を一変させるインパクトを持ったものですが、その前に、亜鉛の重要性を示した先人の研究から順を追っていくことにしましょう。
          
▼イランの風土病が亜鉛の重要性を証明した
            
亜鉛が欠乏するとどうなるのか? その決定的な最初の報告は、今から半世紀以上前の1960年代初頭に発表されています。当時、イランのある地域では、不可解な風土病が問題となっていました。成長遅延のため成人になっても子供のような体型、感染症にかかりやすい、貧血、肝脾腫、性機能不全、皮膚障害などが特徴で、土塊れを好んで食べるという奇妙な習慣もありました。
現地を調査していたプラサド博士らのグループが、患者の組織の一部を成分分析したところ、亜鉛の含有量が減少していることが判明。亜鉛を補給することで症状が著しく改善したことから、亜鉛が体に及ぼす多様かつ重要な働きが確認されたのです。
亜鉛欠乏の原因は、未発酵パン、ミルク、ポテトといった主食だけで食事を済ませるこの地域特有の食習慣にありました。明らかに栄養バランスを欠いたメニューですが、ポイントは「フィチン酸」にあります。
小麦粉製品や穀物、豆類などに多く含まれるフィチン酸は、亜鉛や鉄と強く結びつき、体内に吸収されずに排出されてしまうという性質があります。彼らが常食していた未発酵パンには、特にフィチン酸が多く含まれていました。亜鉛を排出しやすい成分を多く含む食品を主食としていたことが、深刻な亜鉛の欠乏を招き、この地域で亜鉛欠乏症特有の症状が現れたというわけです。
ところで、なぜ患者たちには土塊を食べる習慣があったのでしょう?それは、その土が特に美味しかったわけではなく、亜鉛不足による味覚障害が原因でした。現地で亜鉛の摂取量を改善したところ、亜鉛欠乏症の発症は次第に減り、土塊を食べる習慣もなくなりました。
          
▼新生児の成長に不可欠な栄養素
          
新生児の成長にとっても亜鉛は非常に重要です。初乳から2~3カ月間くらいの時期の母乳には亜鉛が豊富に含まれている、という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
母乳中の亜鉛濃度は、生後間もないころが最も高く、血液中の亜鉛濃度(基準値:80リットル/dL)をはるかに超える400~500/dL前後にまで達します。これは、母乳に含まれる鉄や銅といった他の必須微量元素の値を大きく上回る値で、乳児の成長にとって亜鉛がいかに重要であるかを物語っています。育児用の粉ミルクにも、成長に必要な分量の亜鉛が添加されています。
まだ十分な免疫力が備わっていない乳児は、母乳に含まれる抗体や様々な栄養素に支えられて成長していきます。亜鉛は、免疫を担当する細胞や、成長を促す細胞に必要不可欠な燃料なのです。
            
▼乳児の亜鉛欠乏 その原因は?
          
乳児が成長するためには、体重あたりで成人の2~3倍の亜鉛が必要とされています。摂取不足となれば即刻、亜鉛欠乏症(腸性肢端皮膚炎)一過性乳児亜鉛欠乏症等)に陥り、成長遅延、皮膚炎、脱毛症、下痢などの症状が現れます。母乳をしっかり飲んでいるのに、乳児の亜鉛が欠乏する場合がありますが、その原因は2種類考えられます。
        
・原因1 乳児の小腸に原因があり、亜鉛を吸収できない。
・原因2 乳児は亜鉛を摂取できるが、母乳に亜鉛が少ない。
             
そもそも、乳児はいかにして亜鉛を吸収しているのか? 亜鉛が体に及ぼす重要な役割は以前からわかっていましたが、亜鉛が体内の細胞へどのように運ばれ、どのように働くのかといった仕組みについては不明、という時代が長く続きました。
例えば、亜鉛を十分に摂取して自身の亜鉛は足りている母親でも、母乳に含まれる亜鉛は乏しく、その母乳を飲み続けた乳児は亜鉛欠乏症になる、というケースもあります。低亜鉛母乳は、母親が摂取した亜鉛が母乳に届いていないことを示しますが、このような問題は単に亜鉛を補給するだけでは解決しません。亜鉛の挙動に関する詳細なメカニズム解明が待たれていたのです。
            
           
今日は、まず亜鉛の基礎的な部分のところを紹介しました。
一般の方が「亜鉛」をイメージした場合、「鉛の仲間」という「毒」のイメージを持つ方が多いようです。しかし、実際には、亜鉛は生命に必要な必須ミネラルの一種で、江戸時代に亜鉛を紹介する際、見た目の色が「鉛」に似ていたことで「鉛の亜種」、「亜鉛」とついた経緯があるようです。
とはいえ、もちろん必須ミネラルといえど、過剰摂取は負の影響を与えることもありますが、「鉛でイメージする毒」とは全く異なることを覚えておくようにしましょう。

明日は、亜鉛と皮膚の関係について見ていきましょう。

                      
おまけ★★★★東のつぶやき

亜鉛は、上限摂取量が決められていますが、生命維持だけではなく、健康維持の点から考えても「下限摂取量」もあると考えた方が良いのかもしれません。
「亜鉛」という言葉が、他の言葉で浸透していたならば、もう少し研究に携わる人も増えたのではないか、と言われているようです。