2017年12月号特集より(2)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

                 
今日は、昨日の続きです。
        
         
●ストレスとアトピーの関係も一目瞭然!「病は気から」を科学する
(2017年12月号、あとぴナビ特集記事)
監修:村上正晃(北海道大学遺伝子病制御研究所所長)
         
▼免疫と神経のつながりをみる
       
炎症回路は、病原性の活性化ヘルパーT細胞などの免疫細胞に、サイトカイン、増殖因子、神経伝達物質など様々な液性因子が刺激剤として働く複雑な仕組みです。
この部分だけをみると免疫系の話に思えますが、実は、炎症回路が神経系により局所的にコントロールされていることも、村上教授らの研究が明らかにしています。
免疫系と神経系を横断する研究は、1920年代頃から進められてきました。ストレスなどが引き金となり、脳(視床下部)の指令により交感神経が活性化して、免疫や炎症反応を制御する副腎皮質ホルモン(ステロイド)が分泌されるという話を聞いたことがある方も多いと思います。
これまでの神経科学では、「神経系のスイッチが入ると副腎からホルモンが分泌される」といったような、全身レベルの研究が大多数でした。
しかし、村上教授らの研究において、特定の神経活動が局所的に免疫系をコントロールしている実態が、分子レベルで解明されてきました。つまり、もっと細分化されたレベルで炎症や病気が生じる仕組みが解明され始めたのです。その仕組みを、ゲートウェイ反射(Gateway Reflex)といいます。
         
▼発症の原因は重力?
         
ゲートウェイ反射は、外部からの刺激や痛みなどによるストレスが、いかにして炎症を誘導して病に至らしめるのかを説明する、いわば「病は気から」を科学的に解明するメカニズムです。
村上教授らが最初に発見したゲートウェイ反射は、重力ストレスによるものでした。
地球上で生活する生物は、例外なく重力によるストレスを受けており、私たちの体は、知らず知らずのうちに重力負荷を受け、骨格や関節がゆがんだりして、その蓄積は老化にも影響しています。
体には、重力の影響を特に受けやすい部分があって、その代表が足のふくらはぎの筋肉を深層で支えるヒラメ筋(下腿三頭筋)です。ヒラメ筋は抗重力筋の一つで、重力に対して姿勢を維持する大切な役割を持った深層筋(インナーマッスル)です。
村上教授らは、多発性硬化症(中枢神経系の自己免疫疾患)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎という病態をマウスに誘導し、発症寸前の段階から、重力ストレスによるゲートウェイ反射について調べました〈図B〉。
       
▼重力ストレスによる発症のメカニズム
         
多発性硬化症とは、中枢神経系の自己免疫疾患の一つです。はっきりとした原因がわからず、治療法もないことから、発症メカニズムの解明が急がれる難病です。
ただ、発症の際に中枢神経系に特異的な自己反応性ヘルパーT細胞の関与が重要であることが近年証明されています。
多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎においても、自己反応性ヘルパーT細胞が発症に必須となっています。
<図B>には、病原性T細胞という言葉が出てきますが、これは炎症疾患の原因となるT細胞の総称です。病態によって、自己抗原特異的な自己反応性細胞や、アレルゲン特異的な2型ヘルパーT細胞などが病原性T細胞と呼ばれます。したがって、この研究における病原性T細胞は、自己反応性ヘルパーT細胞ということになります。
前置きはこれくらいにして、ゲートウェイ反射の要点を説明していきます。
       
①マウスのヒラメ筋に対する持続的な重力刺激(ストレス)が感覚神経を刺激する。
②感覚神経の細胞体(神経細胞の本体)である第5腰髄の後根神経節が活性化する。
        
ヒラメ筋にかかった重力刺激が、なぜ第5腰髄の後根神経節(L5 DRG)を活性化させるかといえば、重力刺激がかかる筋肉によって、感覚神経がつながる部位が決まっているからです。
ヒラメ筋(下腿三頭筋)に重力がかかれば、感覚神経は第5腰髄(L5)につながり、大腿四頭筋は第3腰髄(L3)、上腕三頭筋は第5頸髄(C5)といった具合に、筋肉ごとにつながる中枢神経(頸髄・胸髄・腰髄)が決まっていて、それぞれが違う部位で同じ構造の炎症反応を起こします。
したがって、ストレスがかかる筋肉によって、後述の炎症回路や血管ゲートの位置は変わり、その結果となる病態も異なってくるはずです。
        
③第5腰髄の横にある交こう感かん神しん経けい節せつが活性化する。
    
感覚神経の入力から誘導される交感神経は、このように限られた場所でも活性化します。

④ 第5腰髄の背側血管を支配する交感神経が活性化して、ノルアドレナリンを分泌する。
          
自律神経には交感神経と副交感神経があり、お互いが拮抗した働きをします。活動時に交感神経が、休息時に副交感神経が活性化するとよくいわれますが、交感神経が活性化することによってノルアドレナリンが分泌されるのは、このホルモン(神経伝達物質としても働く)が、不安やストレスに対する覚醒や集中力に関与しているからです。
        
⑤ノルアドレナリンが、血管内皮細胞における炎症回路を活性化する。
            
ノルアドレナリンは、血液内皮細胞でNF─κB(エヌエフカッパービー)を活性化するので、IL─6をはじめとした炎症性サイトカインやケモカイン、増幅因子が相乗的に産生される「炎症回路」が過剰に活性化します。その結果、過剰につくり出されたケモカインが、血液中の病原性T細胞を呼び寄せます

            
⑥中枢神経領域への血管ゲートが形成される。
            
通常、中枢神経系には血液脳関門と呼ばれるフィルターが存在し、血液中の細胞や高分子は通過することができません。ところが、先ほど説明したように、多発性硬化症では、中枢神経系に特異的な自己反応性ヘルパーT細胞の関与が証明されています。
どこから血液脳関門をすり抜けて病原性T細胞が侵入しているのかは、これまで明らかになっていませんでしたが、ここで形成された血管ゲートこそが、その侵入ルートだったのです。
         
⑦ 病原性T細胞がゲートを通って、中枢神経に侵入し、発症に至る。
         
        
今日は、免疫と神経の関係についての説明でした、
難しい専門用語もありましたので、分かりづらい部分もあるかと思いますが、簡単にいえば、T細胞が身体に影響を与える働きをする場合、そこには神経の影響がみられる、ということでしょうか?
明日は、最後のまとめです。

              
おまけ★★★★博士のつぶやき

免疫系の働きは、体内に置いて、主に自律神経と内分泌の支配下にある、とされておるようじゃが、自律神経に影響を与える生活内の要因には、要注意である意味合いも、今回の特集で明らかなようじゃの。