運動は奇跡の薬?

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                    
今年の秋は比較的過ごしやすい日が続きそうです。
秋と言えば、「読書の秋」「食欲の秋」など、いろいろな行動が「促進」される時期ですが、「運動の秋」という言葉もあります。
アトピー性皮膚炎の方にとっても、運動は、お肌をケア、改善していく上で大切なポイントの一つになりますが、今日は一つ記事を紹介したいと思います。
          
            
●スポーツ庁推奨のスニーカー通勤は奇跡の薬?医師解説
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukudamemori/20171004-00076442/
         
「スポーツ庁がスニーカー通勤を奨励する」、というニュースが出ました。健康増進につなげ、医療費を削減する狙いもあるようです。
この記事によると、「スニーカーで通勤し、自宅や会社の1駅前で降りて歩いてもらう」政策のようです。
確かに通勤時間が運動時間になれば、忙しいビジネスパーソンでも運動を習慣づけることができます。さらに満員電車の緩和や、予防医療として広く浸透すれば、医療費削減も期待できるかもしれません。
本記事では、「スニーカー通勤は本当に健康増進につながるのか」について、今までの研究結果を交えて医師の視点から考察したいと思います。
        
▼マイカー通勤は体脂肪が多くなる?
  
まず、マイカー通勤、電車通勤、徒歩での通勤において、肥満度と死亡率を比べた研究をご紹介します。(※1)
イギリスのあるデータベースから15,777人の情報を分析し、通勤方法で、
         
(1) マイカー通勤(自家用車、タクシー、バイクなど)
(2) 公共交通機関での通勤(バス、電車など)
(3) 徒歩あるいは自転車での通勤
     
の3グループに分類しました。この3グループにおいてBMI(肥満度の指数※2)、体脂肪率の関係をみてみたところ、BMI、体脂肪率ともに、
         
(2) 公共交通機関での通勤・(3) 徒歩あるいは自転車での通勤 < (1) マイカー通勤
            
の順に低かったのです。これは、食習慣、運動習慣など、他にBMIや体脂肪率に関係しそうな因子を統計学的に調整した結果です。
この研究からは、「マイカー通勤者は電車通勤者、徒歩通勤者よりも肥満度が高い」ことがわかります。
電車通勤でも、電車までは歩きますし、都内の地下鉄はエスカレーターがないところもあり階段も比較的使うチャンスがあります。考えてみれば当然とも言えますが、やはり「歩くことは肥満度を下げる」と考えられるでしょう。
          
▼運動はメンタルヘルスにも風邪予防にも効果がある
            
そしてさらには、意外と知られていない運動の効能が。過去の研究結果から、
             
・ ストレス解消になりメンタルヘルス不調の一次予防に効果がある(※3)
・ ストレッチや筋力トレーニングで腰痛が改善する可能性がある(※4)
・ 中強度(※5)の運動によって風邪にひきにくくなる(※6)
             
逆に、運動不足が健康に悪影響を及ぼすことも、過去の研究で示されています。
             
・ 世界の全死亡数の9.4%は運動不足であり、肥満や喫煙に匹敵する脅威である(※7)
・ 運動不足は肥満や生活習慣病発症のリスクである(※8)
             
運動が健康に良いのは改めて納得できました。
では、具体的にどれくらい運動をすればよいのでしょうか。
実はその具体的な指針を厚生労働省は以前から制定しており、今回の「スニーカー通勤」も、その延長とも考えられます。
厚労省の施策である「健康日本21」に関わる取り組みの一環として制定された、「健康づくりのための身体活動基準2013」では、以下のように示されています。
           
<18~64 歳の場合>
強度が 3メッツ以上の身体活動を 23メッツ・時/週行う。具体的には、歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行う。
         
<65歳以上の場合>
強度を問わず、身体活動を10メッツ・時/週 行う。具体的には、横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行う。
            
これらは、「生活習慣病予防や生活機能低下に科学的に効果がある」と考えられる身体活動をよく検討した上での基準です。(※9)
「メッツ」とは、身体活動の基準のひとつであり、1分間に体重当たり3.5mL の酸素を消費すること(3.5mL/kg/min)。例えば「台所の手伝い」だと3メッツ、「散歩」は3.5メッツ、面白いものだと「キスをする」のは1.3メッツに相当します(※10)。
            
▼毎日10分長く歩くだけでも生活習慣病予防に
           
しかし、ここで「毎日60分以上の運動は無理だな…」と感じてしまった人も、中にはいるでしょう。厚生労働省はそれも見越して、次の指針を立てています。
               
<全年齢層における身体活動の考え方>
現在の身体活動量を、少しでも増やす。例えば、今より毎日10分ずつ長く歩くようにする。
            
こちらも、科学的根拠に基づいています。
26つの研究について、身体活動量と生活習慣病、生活機能低下のリスクなどの関係を解析したところ、身体活動量が1メッツ・時/週増加するごとに、リスクが 0.8%減少することが明らかになりました。(※11)
これは、「健康づくりのための身体活動基準 2013」によると、1日の身体活動量の2~3分の増加によって0.8%、5分で1.6%、10分 で3.2%のリスク低減が期待できると解釈できるとあります。
つまり、1日10分長く歩くだけでも、科学的に健康に効果があるわけです。
これは、嬉しい意外ではないでしょうか。
             
▼運動は奇跡の薬?
          
また、権威ある学術誌の一つ “Journal of the American College of Cardiology (JACC)” に掲載された論文に、「Exercise is a miracle drug(運動は奇跡の薬)」という表現があります。(※12)その表現が大げさではないくらい、運動は医学的に健康によいと認められているのです。
しかし実は各国の推奨運動量について、米国や英国では40-80%、アジアでは80%の成人が実践できていません。これを改善するための方法として、「運動の効果をもっと伝え、かつ無理でない目標を立てる」ことが重要だと、この論文では伝えています。
そこでこの「スニーカー通勤」です。
まずマイカー通勤をやめて徒歩で通勤すれば、1日10分長く歩くことは簡単に実現できそうです。そしてスニーカーで通勤すれば、マイカー通勤をやめるどころか、厚生労働省が目論むように、「1駅手前で降りて、歩く」ことも望めそうです。
              
以上よりまとめると、
          
・ マイカー通勤より、まずは電車や自転車・徒歩通勤を
・ 1日10分でも長く歩くことは、科学的根拠をもって健康に良い
・ スニーカー通勤は、「歩く時間を長くする」ことが達成できれば、“奇跡の薬”にもなりうる
          
ということが言えます。
ニューヨークで働く女性に聞くと、5番街でも9割の女性はフラットシューズだそうです。
ニューヨークの路地はガタガタしていて歩きにくく、靴をすぐ駄目にしてしまうため、歩きやすいスニーカーやフラットシューズで通勤し、オフィスでピンヒールに履き替えるという習慣があるとのこと。
路地の環境の違いを踏まえても、このニューヨーカー達の通勤スタイルをお手本にしてみるのも悪くはないでしょう。
普段運動習慣がない人でも、通勤時間を上手に使って、効率よく運動できる環境、文化ができると良いですね。
         
             
ヒトは「健康」に対して、いかに「楽」にそれを達成できるかを考えることが多いようです。
例えば、「○○というサプリメントを飲めば良い」「○○というクリームを塗ればよい」など、そこには時間などの面倒な「対価」を省いているといっても良いでしょう。
今回の記事は、この面倒な「対価」を要求していると言えます。この「面倒」な部分が、「時間がないと考えることが多い人たち」を相手に、どれだけ浸透させていくことができるのかは、かなり疑問ではありますが、今の私たちに「欠けている」生活の中に、生活習慣病と呼ばれる疾病の原因と解決のヒントが隠されているといっても過言ではないでしょう。

                          
おまけ★★★★大田のつぶやき

アトピー性皮膚炎の方にとって、運動は睡眠と並んで大切な生活の要因の一つです。
お肌の状態が悪い時、なかなか運動をするタイミングを掴めないことも多いかと思いますが、散歩から始めるなど、ちょっとした「体を動かすこと」でも構いません。過ごしやすい季節になりますから、今の内にチャレンジしてみましょう。