プロアクティブ療法について考える(6)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

                           
今日は、プロアクティブ治療が、本当にアトピー性皮膚炎の治療として「主流」の治療法であるべきなのかを考えてみましょう。
          
         
▼プロアクティブ治療は、アトピー性皮膚炎の治療として必要なのか?
        
プロアクティブ治療の前提条件は、ステロイド剤の長期連用が「安全である」ということです。
昔のアトピー性皮膚炎治療では、標準治療としてステロイド剤の長期連用行い、そこでステロイド剤の長期連用による症状悪化に陥る患者が多発したことで、ステロイド剤の影響を認めることになりました。
もちろん、これはリアクティブ治療における状況だったのですが、リアクティブ治療として長期連用が問題ある治療法が、プロアクティブ治療では問題ない、とする根拠はどこにあるのでしょうか?
プロアクティブ治療では、ステロイド剤で16週間、プロトピック軟膏で一年間の観察期間を経て安全性を確認した、とありますが、薬剤の長期連用による「マイナスの影響」は、各機能(免疫機能や皮膚機能、自律神経機能など)への影響を考えた場合、蓄積される影響とも言えます。ステロイド剤での16週間の「安全」は、ステロイド剤の半年での「安全」を必ず示しているものではありません。プロトピック軟膏の一年間の安全は二年間の使用による安全に必ず繋がるわけではありません。

実際、あとぴナビの会員の方でも、このプロアクティブ治療を行っている方がいます。
全例が悪化状況にある、ということではもちろんありませんが、実際の現場においては、プロアクティブ治療が適切でない、と思われる事例が多発していることも事実です。
例えば、2週間程度のステロイド剤塗布で症状が落ち着いた幼児にプロアクティブ治療を行い、9カ月後に全身に症状が広がり、医師からは「アトピーの悪化」と言われた例がありました。
同時期に、似た経過で症状が落ち着いた幼児でプロアクティブ治療は勧められましたが実践せず、スキンケアのみ行っていた事例では、アトピーが再発することはありませんでした。
もちろん、これは事例の偏りとも言えますから、いろいろな要因や要素を加味する必要はあるでしょう。
しかし、プロアクティブ治療の安全性を訴えるならば、少なくとも3年間以上の経過観察は必要でしょうし、同時に、プラセボ(擬似薬)を使ってステロイド剤ではない単なるスキンケアアイテムでプロアクティブ治療を実践した場合に、どれだけの有効性の差が生じるのかを検証する必要もあるのではないでしょうか?

少なくとも、あとぴナビでは、アトピー性皮膚炎の発症原因、そして悪化原因に、皮膚機能の異常状態が深く関与していると考えていますので、プロアクティブ治療を実践した患者でその「効果」を実感できている原因は、ステロイド剤やプロトピック軟膏の免疫抑制効果だけにあるのではなく、基剤としてのスキンケアの働きも関係している考えています。
もっと踏み込んで言えば、アトピー性皮膚炎の方へのスキンケアとして保険が適用される範疇での処方を考えると、ワセリンを保湿剤として渡されることが多いのですが、ワセリンの場合、水分を一切含まないため、角質層への水分の補給が十分に行われていません。
そのため、プロアクティブ治療を行いながら、アトピー性皮膚炎が再発した患者は、ステロイド剤などがIgEを増強させる要因となっただけでなく、角質層の水分保持が十分行えないことによる痒みを知覚する神経線維の問題と、乾燥状態によるバリア機能の低下の問題が、そこに関係しているのではないかと考えています。
実際、ステロイド剤を使っているアトピー性皮膚炎の方が、保水のケアをしっかり行ってからステロイド剤を塗布した場合、比較的良好な経過をたどることが多い傾向が見られています。

                    
あとぴナビの会員の方で、プロアクティブ治療を行う方もいますし、長期のステロイド剤使用による影響を心配し、単なるスキンケアで済ます方もいます。
N数が多くはありませんが、両者を比較した場合、明確にプロアクティブ治療の経過が良好、という結果は出ていません。逆に、1年後でみると、それぞれ10例程度ではありますが、プロアクティブ治療を行っている方は、相変わらずステロイド剤を使用し、そうでない方は一切の薬剤を使用しておらず、症状も悪化してはいません。
プロアクティブ治療の途中で症状が悪化、リアクティブ治療に移行するケースは、さほど珍しくはありませんが、その場合、果たして単なるアトピー性皮膚炎の悪化なのか、プロアクティブ治療により継続したステロイド剤の使用が、アレルギー的な要因を悪化させたのか、慎重に見極めていく必要はあるでしょう。

明日は、今回のテーマの最後になります。

                         
おまけ★★★★東のつぶやき

最近のプロアクティブ治療で気になるのは、「軽症」と思われる患者にも推奨されているところです。
初診でステロイド剤を処方され、1週間程度で症状が落ち着いて再診した際にプロアクティブ治療を進められ、そのまま一年間近くステロイド剤を間歇使用とは言え、続けている例があります。
その方は、今も状態は落ち着いていますが、塗布した部位の肌とそうでない部位の肌が微妙に違っていることを最近、気にされるようになって相談に来られました。
ご本人の感じ方の問題、といえばそれまでですが、塗り続けたことによる効果は、同時に塗り続けたことによるリスクも抱えていることを忘れてはならないでしょう。