プロアクティブ療法について考える(5)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                   
今日は、現在、推奨されているプロアクティブ療法のリスクを低く捉えている根拠がどこにあるのかを考えていきましょう。
         
       
▼皮膚科医が、プロアクティブ治療のリスクを低く捉えている根拠はどこにあるのか?
        
このようにプロアクティブ治療には、「表に出ているメリット」と「裏に隠れたデメリット」が存在しています。
現在の皮膚科医においては、メリットのみを強調していますが、その根拠の一つが、日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」に掲載されている「第2章アトピー性皮膚炎のEBMs」内に書かれた内容を見てみましょう。
       
CQ8.再燃をよく繰り返すアトピー性皮膚炎の湿疹病変の寛解維持にプロアクティブ療法は有用か?
         
推奨文:プロアクティブ療法は、再燃をよく繰り返す湿疹病変の寛解維持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である。
推奨度:1、エビデンスレベル:A
        
解説:プロアクティブ療法は、急性期の治療で炎症のない状態にまで改善した皮膚に、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を週2回程度塗布し、皮膚炎の再燃を予防する治療法で、最近アトピー性皮膚炎の寛解維持のための方策として普及してきている。10件のRCT と1件のシステマティックレビューにおいて、プロアクティブ療法が寛解維持に有用であることが示されており、エビデンスレベルはAである。プロアクティブ療法は、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬を問わず、皮疹の再燃予防には有用であり、安全性に関しても、ステロイド外用薬で16週間、タクロリムス外用薬で1年間までの観察期間においては、多くの報告が基剤の外用と有害事象の差は無いとしており、比較的安全性の高い治療法であると考えられる。ただし、プロアクティブ療法の安全性について、それ以上の期間での検討がなされておらず、副作用の発現については注意深い観察が必要である。
また、皮膚炎が十分に改善していない症例に対する治療法ではないことにも注意しなくてはならない。さらに、必要塗布範囲、連日塗布から間欠塗布への移行時期、終了時期等については個々の症例に応じた対応が必要であるため、プロアクティブ療法を行う際は、ア
トピー性皮膚炎の皮膚症状の評価に精通した医師による治療、あるいは皮膚症状の評価に精通した医師と連携した治療が望ましい。
          
※エビデンスレベルとは?
・エビデンスレベルA(高い)
結果はほぼ確実であり、今後研究が新しく行われても結果が大きく変化する可能性は少ない
        
・エビデンスレベルB(低い)
結果を支持する研究があるが十分ではないため、今後研究が行われた場合に結果が大きく変化する可能性がある
         
・エビデンスレベルC(とても低い)
結果を支持する質の高い研究がない
          
         
この文章を読んで、これまでステロイド剤の長期連用による弊害に悩んだことのある方は、「見慣れた文章」あるのに気づかれたのではないでしょうか?
それは、末尾の「プロアクティブ療法を行う際は、アトピー性皮膚炎の皮膚症状の評価に精通した医師による治療、あるいは皮膚症状の評価に精通した医師と連携した治療が望ましい。」という部分です。
以前、ステロイド剤の治療をアトピー性皮膚炎の「標準治療」として日本皮膚科学会が定めた際も、「専門医の指導の元に治療を行えば、副作用の影響がみられることはない」と、専門医の治療の安全性を強調していました。
しかし、実際にはステロイド剤が抱える問題点は、ステロイド剤が持つ「薬物としての副作用の問題」よりも、皮膚の細菌叢を乱すことによる悪化要因の形成、そしてインターロイキン4の増加によるsIgE+B細胞への分化から体内のIgEが増強されることでアレルギー的な要因を悪化させるなど、「薬物使用による間接的な悪化要因」を抱えることにあります。
そして、皮膚科医は、こうしたアトピー性皮膚炎の悪化要因になりうる、ステロイド剤の問題点を見落としていました。
最近の研究では、アトピー性皮膚炎の原因はアレルギーそのものにあるのではなく、皮膚機能の異常(細菌叢やバリア機能の問題)や、免疫機能の異常(IgEを増強させる要因の問題)にあることが分かってきています。
しかし、アレルギーが、アトピー性皮膚炎という「病気の原因」よりも、炎症や痒みを引き起こす「症状の原因」であることを理解して治療にあたる皮膚科医はまだ多くないように思います。
      
プロアクティブ治療は、基本的にステロイド剤を「長期連用させる」治療とも言えます。
例えば、リアクティブ治療により薬物の連用が短期で済んだ患者に対しても、間歇使用とは言え、年単位での使用を強いることになります。
もちろん、皮膚のバリア機能が健全な状態であれば、ステロイド剤も体にとって「異物」である以上、その「侵入を許さない」ように働きますから、影響が強く現れることはないでしょう。しかし、効果と副作用は表裏一体の関係にありますから、逆に考えれば、マイナス点がない=効果も得られていない、ということでもあるため、その使用する意味合いそのものに疑問が生じることも確かです。
効果が現れない治療法ならば副作用も現れにくい、ということは実際にあります。しかし、効果が現れた治療法は、影響の差はあれ、マイナスの影響(副作用)を受けることは忘れてはならないでしょう。
          
         
プロアクティブ治療における安全性は、皮膚科医の説明においては確立されているように見えるかもしれませんが、エビデンス上は、エビデンスレベルとして決して高い状態で確立されているわけではありません。エビデンスレベルで高い状態で確立されているのでは安全性ではなく「効果」の面です。しかも、その効果の面も、同等の効果が考えられる単なるスキンケアとの二重盲検法で臨床されたものではありません。
示された事実から、異なる経緯と結果を導き出すことは決して不可能ではない状況とも言えます。
患者が必要としているのは「安全性」を優先していることは忘れて欲しくはありません。

明日は、プロアクティブ治療の必要性について考えてみたいと思います。

                            
おまけ★★★★南のつぶやき

無理やりステロイド剤を長期連用するメリットが、長期連用によるリスクよりもはるかに高い状態であることは、これまで一度もエビデンスで示されてことはありません。
エビデンスに基づく治療が大切であることはいうまでもありませんが、治療を行う側に有利なエビデンスだけを提示され、患者側に不利なエビデンスに目を向けないことは、患者側の利益を担保しているとは言えないでしょう。