最新の研究から、アトピーを考える(6)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                   
今日も昨日の続きで、皮膚機能の異常の一つ「細菌叢」について考えましょう。
        
       
▼バリア機能の低下は、皮膚の細菌叢の乱れから
       
バリア機能の低下は、痒みを知覚する神経線維の問題以外にも肌に影響を与えます。
腸内には善玉菌が健全な細菌叢を形成している、という話を聞いたことがある方は多いと思います。同様に、皮膚も無菌状態なのではなく、数多くの細菌が共生し、細菌叢を形成しています。その多様性は腸内をしのぐことが明らかになっています。
皮膚に形成された細菌叢の細菌ごとに異なる働きを持っていますが、多様性を持つことで、バランスを保ちヒトの健康に関与していることも分かっています。
健常な皮膚を調べると、数多くの細菌が存在してることが分かります。マウスを用いた実験では、フィルミクテス門と呼ばれる多様性を持った細菌の系統で大半が湿られていることが確認されています。しかし、アトピーマウスの場合には、細菌の種類が極端に少なく、ほとんどが黄色ブドウ球菌、コリネバクテリウムボービスの2種類だけの異常細菌叢になっていることが確認されています。
(特集号29ページのグラフC)
黄色ブドウ球菌が皮膚に定着すると、黄色ブドウ球菌が出すデルタ毒素が、体内のIgEを増強、そこからアレルギーの炎症、痒みを引き起こします。痒みが生じれば、皮膚を掻き壊すことで、角質層の水分蒸散量が増えて健全なバリア機能が乱れ、炎症が増悪して、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる悪循環を形成することに繋がっていきます。
         
▼健全な細菌叢の形成、健全な角質層の維持が重要
         
ヒトに住み着く菌の多様性が失われた状態をディスバイオーシスと言いますが、このディスバイオ―シスと湿疹の出現には密接な関係があります。アトピー性皮膚炎の皮膚は、ディスバイオーシスが起きやすい状況にあることも分かりました。
表皮は、表皮発育因子(FGF)により成長や増殖していますが、FGFの受容体(FGFR)が機能していないマウスは湿疹を発症することが研究により分かっています。同時に、FGFRが機能していないと、ディスバイオーシス(菌の多様性が失われた状態)が起きることも確認され、皮膚の細菌叢が乱れることが分かりました。
2015年に発表された医学論文では、アダム17-FGFR(表皮発育因子受容体)経路の異常によって菌の多様性が失われ、黄色ブドウ球菌が増殖することでアトピー性皮膚炎が発症することが確認されています。
とはいえ、問題の根源は黄色ブドウ球菌にあるのではありません。なぜなら、アトピー性皮膚炎を発症したマウスに定着した黄色ブドウ球菌をバリア機能が維持された健全なマウスに移してもアトピー性皮膚炎を発症することはなく、バリア機能が低下したマウスに移植した場合にはアトピー性皮膚炎が発症することが確認されているからです。
つまり、問題は、皮膚のバリア機能とそれを維持するための細菌叢にある、ということです。黄色ブドウ球菌は、アレルギーを作り出す「症状」の要因としては関わりますが、直接アトピー性皮膚炎の原因に関わっているのではない、ということです。
昔は、アトピー性皮膚炎の治療として、消毒などにより、黄色ブドウ球菌を死滅させることで症状を改善させようという方法が行われていたこともありました。しかし、黄色ブドウ球菌を死滅させることで皮膚の細菌叢が多様性を取り戻すわけではなく、イメージで考えると、黄色ブドウ球菌が死滅した「空白地帯」が生み出されるだけです。その空白地帯に元のフィルミクテス門と呼ばれる多様性を持った細菌叢が必ず形成されるわけではありません。
健全な細菌叢は、まずは健全な「表皮の再生(角質層の形成)」が必要です。FGFRを増やす研究は進められているようですが、いまのところ解決策は見つかっておらず、まずは適切なスキンケアにより、健全な角質層を維持させることを目標に置くことが大切でしょう。
         
※参考文献/皮膚と細菌叢の関係からアトピーの新たな治療法を探る(あとぴナビ2015年9月号、監修:永尾圭介、米国衛生研究所主任研究員)

                                    
アトピー性皮膚炎の原因が黄色ブドウ球菌にある、と誤解している人もいますが、黄色ブドウ球菌は症状を悪化させる原因であって、「大元の原因」は、黄色ブドウ球菌が増加するような「細菌叢」が形成されたことにあると考えた方が良いでしょう。
記事にあるように、アトピーマウスの皮膚に定着した黄色ブドウ球菌を、健全なマウスに移植しても皮膚炎が起きることはなく、逆に、皮膚に炎症が無いアトピーマウスに移植すると、皮膚炎が起きる、ということは、問題の原因は黄色ブドウ球菌ではない、ということです。
健全な細菌叢の形成をしっかりと目指していくようにしたいですね。

明日は、もう一つの原因、「免疫機能の異常」について見ていきましょう。

                      
おまけ★★★★東のつぶやき

皮膚の機能異常に関係する研究は、いろいろな研究がおこなわれています。
願わくば、それらの研究を「縦に見ていく」のではなく、「横に繋げていく」研究も行って欲しいところです。
アトピー性皮膚炎の原因を単独のものに求めることは、かなり無理があるのが現状です。
アトピー性皮膚炎自体を一つの「症候群」と捉え、その原因を柔軟に考えていくことは大切でしょう。