最新の研究から、アトピーを考える(5)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                       
今日は、最近増加してきたアトピー性皮膚炎の原因ともいえる「皮膚機能の異常」そして「免疫機能の異常」とは、どういったものなのかを見ていきましょう。
         
          
■アトピー性皮膚炎の原因1 皮膚機能の要因(肌の問題)
         
▼皮膚のバリア機能低下がアトピー肌の特徴
            
皮膚には本来、不要な物質が体内に侵入したり、必要な物質が体外に出ることを抑える働きがあり、この働きを「皮膚のバリア機能」と呼んでいます。水分保持や外部刺激から皮膚を守る役割を担っている角層は、角質細胞がレンガのように重なり合っていて、その間はセラミドを主成分とする「細胞間脂質」が満たしています。角層が健全な状態であれば、皮膚はしっとりきめ細やかに保たれます。
しかし、アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下している傾向があります。健康な肌と比較してセラミドの量が30%ほど少ないというデータや、フィラグリンの量が半分近く少ない、という研究結果も発表されています。
こうした、角質層内の水分を保持するための能力が低下している背景としては、今の私たちが過ごす生活環境が大きく関わっていることが分かっています。
例えば、エアコンを使用した環境下で過ごすことは、角質層からの水分蒸散量を増やしやすく、「乾燥肌」になりやすい状態といえます。栄養の偏りなど食生活の乱れも、皮膚細胞の代謝に関わります。
就寝時間が遅い生活習慣も、成長ホルモンの産生リズムを乱すことで、角質層の再生に影響を与えます。また、皮膚自体を守る機能の一つが「皮脂膜」ですが、皮脂膜は、汗と皮脂が乳化して作られます。運動の機会が減って、汗をかかない生活習慣が定着していることも、バリア機能を低下させる要因の一つです。
その他、界面活性剤の多用、化学物質の摂取、皮膚に刺激を与える衣類や化粧品の増加など、個々人ごとに影響受ける大小の差はあっても、複数の要因の積み重ねが、バリア機能の低下に少しずつ関係していると考えてよいでしょう。
         
▼なぜかゆくなるの?
         
アトピー性皮膚炎のかゆみは、他の皮膚炎のかゆみよりも強いと言われています。かゆみの原因には、皮膚の炎症、バリア機能の低下、ストレスや体温の上昇も考えられます。
また、最近の研究ではさらに新たな原因が指摘されています。
以前までは、人間は痛点(痛みを感じる点)でかゆみも知覚すると考えられてきましたが、痛点とは別にかゆみを知覚する神経があることが発見されました。かゆみを感じる神経繊維は、通常は表皮の下の真皮にあります。しかし、アトピー肌の場合、この神経繊維が真皮の境界線を越え、表皮の角層直下まで伸びている傾向があります。かゆみを感じる神経線維が皮膚の表面近くまで伸びているため、外部からの刺激を受けやすく、かくことが刺激となって、さらにかゆみにつながりやすくなります。
        
▼アトピー肌は乾燥と外部刺激に弱い
        
かゆみを感じる神経繊維はなぜ伸びてしまうのでしょう?
これには、皮膚の乾燥が大きく関わっています。
皮膚の水分量が低下して乾燥肌になると、表皮にあるケラチナサイトという細胞から出る神経成長因子(NGF)が増加し、神経繊維が角層直下まで伸びてしまいます。
アトピー肌は、皮膚のバリア機能の低下によって皮膚が乾燥し、それによってかゆみを感じる神経繊維が伸びてかゆみの感受性が高まり、外部刺激に過敏に反応してしまうという慢性的な悪循環を起こしています。
かゆみを感じる神経繊維を元の位置に戻して外部刺激に対する過敏な反応を抑制するには、正しいスキンケアによって皮膚のバリア機能を回復させ、水分量を増やす必要があります。最後にもう一つ重要なことがあります。神経線維が伸びることによって起こるかゆみに薬物を使っても意味がないということです。ステロイド剤などの薬は、免疫を抑制することで炎症を抑えるので、神経線維によるかゆみを抑えることはできません。かゆみの原因を知ることで、なるべく不要な治療は避け、正しいケアを選択したいものです。
         
※参考文献/かゆみのメカニズムとアトピー(あとぴナビ2006年1月号、監修:高森健二、順天堂大学医学部皮膚科教授)
         
          
この「痒みの神経線維」の問題は、アトピー性皮膚炎の治療とも大きく関わっている要因です。
なぜなら、現在主流となっている治療法であるステロイド剤の治療は、炎症を治すことはできても、伸びてきた痒みの神経線維を元に戻す働きはないからです。
ステロイド剤やプロトピック軟膏は、その基材にワセリンが使われていることが多いのですが、弱点として、油分が多いため「水分が不足している」状況にあるということです。
したがって、薬剤を使用する際には、その前に、水分系のアイテムで「保水」を行い角質層に潤いを与えることが重要になります。

明日は、皮膚機能のもう一つの原因を考えてみましょう。

                         
おまけ★★★★南のつぶやき

 

角質層に十分な潤いを与えることはとても大切なことですが、アトピー性皮膚炎の方のスキンケアを見ていると、水分を与える量が十分でないケースを多く見受けます。
健常な方でも、乾燥肌による痒み、というのは生じやすいわけですが、バリア機能が低下した状況にあるアトピー性皮膚炎の方の場合、より多くの水分を与えるように注意することが大切になります。
「保水」の大切さを忘れないようにしましょう。