2017年6月号特集記事より(2)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                      
今日は、昨日の続きです
         
       
●アレルギー体質ならば知っておきたい 花粉と食物アレルギーの不思議な関係
監修 福冨友馬(独立行政法人国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター 診断・治療薬開発研究室長)
            
▼豆乳アレルギーの原因は花粉症だった
          
では、タンパク質の構造が似ていると何が起こるのでしょう? 困ったことに、形が似たタンパク質が入ってくると、人体がうまく区別できないことがあるのです。
体への侵入物のアミノ酸配列が似ていると、免疫抗体の判別力が鈍ってしまうわけです。
シラカンバの花粉症患者は、花粉に含まれるBet v 1 タンパクにアレルギー反応を示します。Bet v 1 が体内に入ろうとすると、くしゃみや鼻みずを出して追い出そうとします。
ところが、豆乳に含まれるGly m 4タンパクが体内に入ってきたときにも、形が似ているBet v 1 と一緒に追い出そうとすることがあります。これが、大豆アレルギーがないのに、豆乳でアレルギー反応が起きてしまう理由です。豆乳に含まれるGly m 4をBet v 1 と間違えてしまった結果、喉の痛みやかゆみなどの症状が出てしまうのです。
食品中に花粉アレルゲンと同じ仲間のタンパク質が存在する場合に、このタンパク質成分が花粉アレルゲンの抗体と結合してアレルギー症状を引き起こす現象を、専門用語では「交差反応」といいます。
交差反応はPR-10タンパクをもつカバノキ科植物と、似たようなタンパクを持つバラ科・マメ科・セリ科の果物野菜の間で起こりやすいことがわかっています。
         
▼なぜ豆乳ばかりが問題となるの?
        
これまでの話で、豆乳アレルギーの原因が花粉症であることがはっきりしました。
大豆にはカバノキ科植物と似たPR-10 タンパクが含まれており、交差反応によってアレルギー症状が起こることもわかりました。しかし、まだわからないことがあります。それは「なぜ豆乳なのか?」ということです。
PR-10 タンパク(Gly m 4)は大豆に含まれているのだから、豆乳以外の大豆食品にも存在するはずです。ところが、花粉症の人が煮豆や納豆などで交差反応によるアレルギーを起こしたという話は聞きません。豆乳以外の大豆食品でアレルギーといえば、ほとんどが普通の大豆アレルギーの話です。
この疑問に答えるためには、大豆に含まれるアレルゲンタンパクについてもっと細かく知る必要があります。下の表2をご覧ください。植物のタンパク質のうち、多数を占めるのは貯蔵タンパク質です。これは栄養の貯蔵に関与したタンパク質で、人間にとっては大豆アレルギーの原因となるアレルゲンタンパクです。
一方、PR-10は生体防御タンパクの一種で、病原菌の攻撃などから身を守るタンパク質です。量は少なく、熱や消化酵素に対して弱いことが特徴です。この「熱や消化酵素に弱い」という特徴が、「なぜ豆乳なのか?」を説明してくれます。
         
▼豆乳と口腔アレルギー症候群
        
豆乳は、大豆食品の中でも作り方が簡単で短時間過熱する程度です。大豆を加工するほどGly m 4の活性は下がるので、加工度の高い煮豆、味噌、納豆などでは、Gly m 4の活性によるアレルギー症状はほとんど出ません(図C)。したがって、花粉症が原因となる交差反応によるアレルギーは、豆乳によって起きやすいのです。
豆腐、枝豆、もやしなどの比較的加工の程度の軽い大豆食品でも症状が起こることがあります。
熱や消化酵素に弱いGly m 4は、消化の過程で胃液などにより活性力を失ってしまいます。つまり、口に入った時点ではアレルギー症状を引き起こす力を持ちますが、体内に取り込まれて消化されるほど力を失っていきます。アレルギー症状が口腔の部分に集中して出やすいのは、このためです。そう考えると、口腔アレルギー症候群という名称についてもうなずけます。ちなみに、病気のメカニズムに着眼して「花粉植物アレルギー症候群」と呼ばれることもありますが、どちらも同じ症例を示した名称です。
         
        

豆乳アレルギーの原因が花粉症にあったことがおわかりいただけたのではないでしょうか?
これは、最近増加しているアトピー性皮膚炎の原因の一つにも考えられます。
同じ原料の食品を摂取しても、症状が出たりでなかったりするケースは、さほど珍しくはありませんが、その原因の一つは、今回の記事内容と同じと考えられます。

明日は、Q&Aを紹介します。

                          
おまけ★★★★博士のつぶやき

熱や消化酵素により、変性することで、アレルゲンとしての活性を失うのは興味深い話じゃ。
実際、食物アレルギーの方で、加熱することで食べられるようになる食品は事例が多い。
アレルゲンとして反応するのは主にタンパク質の部分じゃから、こうした熱加工については知っておいてよいじゃろうの。