黄色ブドウ球菌は、なぜアトピーを悪化させるのか?(1)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                     
今週、各地で梅雨入りが始まりました。
これから梅雨明けまでは、お肌の状況に併せて「梅雨対策」も意識することが大切になります。特に、感染症に罹患すると、肌状態だけでなく、熱や痛みなどによる全身症状の悪化が、痒みや炎症を増悪させ、治りづらい状況を生み出すことがあります。
そこで今回は、黄色ブドウ球菌とアトピーの関係について見てみたいと思います。
        
        
▼黄色ブドウ球菌の感染症は、なぜアトピーに良くないのか?
       
●90%の人が黄色ブドウ球菌の感染症に罹患している
    
人間の皮膚には、表皮ブドウ球菌や真菌類など、さまざまな菌が細菌叢を形成しています。
これらの菌のほとんどは、普段は無害なのですが、定着することで問題を起こす菌もいます。
その中の一つが黄色ブドウ球菌です。
特に、アトピー性皮膚炎の人には、90%以上の人に黄色ブドウ球菌が認められています。炎症部位に定着していることが多く、症状がひどい人ほど量が増える傾向があるようです。
        
        
●黄色ブドウ球菌の毒素が炎症を引き起こす
         
2013年11月、有名なイギリスの科学雑誌「ネイチャー」に、黄色ブドウ球菌とアトピー性皮膚炎に関する興味深い論文が掲載されました。研究によって、黄色ブドウ球菌から出る「デルタトキシン」という毒素が、肥満細胞を直接刺激することで、炎症が生じることが分かりました。通常、炎症反応とは、抗体を介する免疫反応により生じます。しかし、研究では免疫反応が生じていなくても、黄色ブドウ球菌から出る毒素が、直接肥満細胞を刺激することで、皮膚の炎症が確認できました。
簡単にいえば、アレルギー反応が起きなくても、アレルギー的な炎症を伴う症状が起きる、ということです。
     
●アトピーの炎症は二つのルートから生じている
       
ネイチャーに掲載された論文の内容を要約すると、下記の通りです。
          
黄色ブドウ球菌から出るデルタトキシンという毒素が、肥満細胞の脱顆粒の誘因因子であることが同定された。肥満細胞には、痒みの原因となるヒスタミンなどの炎症性メディエーター(橋渡し役)が貯蔵されており、これらが血中に放出されることを脱顆粒という。これまで、肥満細胞の脱顆粒は、IgE抗体を介したアレルギー反応によるものと考えられてきた。
しかし、今回の研究によって、黄色ブドウ球菌が放出する毒素によって、IgE抗体の反応を介さなくても、直接、肥満細胞の脱顆粒が生じることが確認された。また、次のような事実を示すデータも確認できた。
        
・IgE抗体が関与することで脱顆粒は数倍増える→デルタ毒素は、通常のアレルギー反応を、さらに増悪させる因子となり得る
         
・アレルゲン(抗原)がなくてもIgE抗体が存在するだけで脱顆粒が増える→アレルギー反応にはアレルゲンが関わるが、アレルゲンと抗体の反応とは違う反応によって、脱顆粒(炎症を引き起こす)することが確認された
        
・黄色ブドウ球菌がIL4(インターロイキン4=IgE抗体を増やす働きがある情報伝達物質)を増やす→IgE抗体を増やすことで、悪循環の輪を形成しやすくする
      
そして、これらの内容から、皮膚に炎症を生じるルートには二つ存在することが分かります。
          
■ルート1 アレルギー反応を介するルート
        
黄色ブドウ球菌(デルタ毒素)

IgE抗体を増強

肥満細胞から脱顆粒

炎症が生じる
         
■ルート2 アレルギー反応を介さないルート
        
黄色ブドウ球菌(デルタ毒素)

直接、肥満細胞を刺激して脱顆粒させる

炎症が生じる
         
これらのルートは、どちらかが皮膚に生じている、というのではなく、両方のルートが強弱はあっても、並行して生じている、と考えた方が良いでしょう。つまり、アトピー性皮膚炎が悪化した状態とは主に、このルート1とルート2により生じた炎症が「重なった状態である」と考えられるのです。
        
        
では、黄色ブドウ球菌に対して、どういった対策を行えば良いのでしょうか?
続きは明日にしたいと思います。

                   
おまけ★★★★博士のつぶやき

黄色ブドウ球菌がアトピーを悪化させることは、他の研究でも明らかになっておる。
ただ注意して欲しいのは、黄色ブドウ球菌そのものがアトピーの原因ではない、
原因は、黄色ブドウ球菌が「定着してしまう肌状態」、つまり細菌叢やバリア機能に問題がある、ということじゃ。
じっさい、動物実験では、アトピーのマウスに定着している黄色ブドウ球菌を健常なマウスに移植してもアトピーにはならんかった。じゃが、黄色ブドウ球菌が定着していないアトピーを発症しやすいマウスに移植するとアトピーになったそうじゃ。
感染症、特に黄色ブドウ球菌の対策はアトピーの方にとって、大切と言えるのじゃろう。