抗生物質で食道にカビが?

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   
5月も、もうすぐ終わりです。来月には、南の方から梅雨入りするところが増えてくるでしょう。
梅雨の時期、アトピー性皮膚炎の方にとって、注意すべきことの一つに感染症の問題があります。
感染症は、痒みや炎症を大きく悪化させる要因ですが、その治療には、主にステロイド剤と抗生物質、あるいは抗菌剤が使われます。
今日は、これら感染症の薬剤に関する記事を紹介したいと思います。
        
         
●抗生物質を飲んでいたら食道にカビが生えた72歳男性
https://medley.life/news/5913cdfdb3ab10b8018b4571/
           
健康な人の体にも、カンジダという真菌(カビ)が住み着いています。普段は無害ですが、何かのきっかけで増殖して症状を現すことがあります。食道でカンジダが増殖し、飲み込むときの痛みから気付いた人の例が報告されました。
         
▼飲み込むときの痛みが2週間続いた
         
千葉大学医学部附属病院の医師2人から医学誌『New England Journal of Medicine』に、カンジダ性食道炎が見つかった72歳男性の症状の写真が報告されました。
この男性は2週間前から飲み込むときの痛みが続いていました。症状が始まる16か月前にびまん性汎細気管支炎と診断され、それ以来マクロライド系抗菌薬(抗生物質)の治療を続けていました。
びまん性汎細気管支炎は咳や息切れが続く原因不明の病気です。細菌が原因ではありませんが、マクロライド系抗菌薬を少量長期使用することで効果があることがわかっています。
         
▼内視鏡でカンジダを発見
         
内視鏡検査で、食道に白いコケのようなものが線状にできているのが見つかりました。症状が見えている部分をこすり取って培養すると、カンジダがいたことがわかりました。
カンジダはもともと元気な人にはあまり症状を起こしません。カンジダ性食道炎になりやすい状況の例を挙げます。
          
・抗菌薬の長期使用
・免疫抑制薬やステロイド薬を使っている
・HIVに長期的に感染してAIDSになった
        
この男性では、免疫抑制薬・ステロイド薬は使っていませんでした。HIVの検査でも陰性の結果でした。抗菌薬の長期使用が当てはまっています。治療のため抗真菌薬(カビに効く薬)を2週間飲むと痛みが軽くなりました。12週間後に再び内視鏡検査をすると、白い病変がごく少なくなっているのが見えました。
          
▼いつもそばにいるカビ
          
カンジダ性食道炎が見つかった人の例を紹介しました。
カンジダは元気な人の体にも住み着いている、ごくありふれたカビです。カンジダ性食道炎のほかにも、抗菌薬の使用後に膣カンジダ症として現れるなど、病気の原因になる場合があります。
抗菌薬やステロイド薬、HIVのほか、糖尿病もカンジダの増殖につながることがあります。
ここで紹介した人は薬でよくなりました。「体にカビが生える」と聞くと怖く感じるかもしれませんが、カンジダによる病気は多くの人が経験し、多くの場合は軽症で済みます。
抗菌薬使用などに当てはまる人で気になる症状が現れたときは、まず医療機関で診察を受け、原因を調べてください。
             
             
アトピー性皮膚炎の発症要因、そして悪化要因の最たるものは、皮膚のバリア機能の低下です。
そして皮膚のバリア機能を保つために大きく関わるのが皮膚に常在している細菌叢です。
記事にあるように、抗生物質や抗菌剤は、対象となる菌の増殖を妨げる働きを持ちますが、同時に対象となる菌が耐性を持ったり、あるいは対象となる菌以外の細菌や真菌の増殖を許してしまう、という問題点を抱えています。
これらの問題は、もちろん薬剤の使用ですぐにあらわれるわけではありません。
多くは、長期連用によりもたらされる弊害なのですが、こうした弊害は、アトピー性皮膚炎の場合も同様に起こり得ます。
        
皮膚は無菌状態が正しいのではありません。人にとって無害な菌がフローラ(細菌叢)を形成し、有害な菌が増殖するスペースを作らないことで、それら有害な菌の感染症を防ぐ役割を担っています。これは、腸内の細菌群と同じ働きです。つまり、皮膚の「健全な」細菌叢は、バリア機能としての役割を持っている、ということです。
       
しかし、アトピー性皮膚炎の方は、黄色ブドウ球菌の感染症や、ヘルペスの感染症に罹りやすい傾向があります。そのため抗生物質、抗菌剤あるいは抗ウィルス剤を使用することがありますが、その使用が長期にわたると、健全な細菌叢を乱すことで(健全な細菌も、それらの薬で「退治」されるため)、バリア機能が低下、そこからアトピー性皮膚炎の症状そのものが悪化していくことがあります。
    
これから梅雨を迎えて、感染症の問題がクローズアップされてきますが、万一、感染症に罹患した際には、使用する薬剤が長期連用するような状況に陥った場合、こうした問題が生じる可能性があることは忘れないようにしましょう。

                       
おまけ★★★★大田のつぶやき

実際、毎年、感染症に対する皮膚科での治療で、症状を大きくこじらせ、夏場の汗をかきやすくなる時期、一気に炎症の範囲が広がったり、悪化したりする方が一定数おられます。
もちろん、薬剤による治療は感染症に対する有効な治療の一つですが、長期連用に至った場合には、メリットと同時にデメリットの問題も浮上してくることは覚えておきましょう。
また、感染症で皮膚に炎症が生じた場合、その炎症を治療する目的で抗生物質や抗菌剤、抗ウィルス剤と共に、ステロイド剤やプロトピック軟膏が処方されることがあります。あるいは、ステロイド剤の中には、抗生物質を含んだものがあり、そのタイプのステロイド剤が処方されることがあります。
自分ではそう思っていなかったのに、抗生物質の長期連用を知らない内に行っていた、というケースもありますので注意しましょう。