研究が進めば、答えも変化する?

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                 
医学における答えは、基礎と臨床から構築されていきますが、その答えは、常に「一定」ということではありません。
少しずつ変化することもあれば、最初に「結論」と考えられていた答えが後に覆されることもあります。
          
            
●セロトニンとうつ病の関係を大きく見直すこととなる研究結果が発表される
http://gigazine.net/news/20170417-genetic-link-stress-depression/
            
数十人の国際的に著名な研究者たちが関わるメタアナリシスにより、セロトニン遺伝子・ストレス・うつ病などの相互関係について調べた2003年の研究結果は的外れな内容であった可能性が示唆されています。
科学者たちはこれまで長年にわたって、ストレスにさらされた人の脳内で「セロトニン」に関連する遺伝子がうつ病にどのような影響を及ぼすのかを研究してきました。「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」と呼ばれる抗うつ薬が臨床的にうつ病患者の症状をかなりの割合で和らげることからも、多くの科学者たちが「セロトニンに影響を及ぼす遺伝子の違いがうつ病の発症リスクと関連している可能性が高い」と考えていました。実際、「2003年に公開された著名な研究論文」では、遺伝子変異を持つ個体は生活上のストレスにさらされた時にうつ病を発症する可能性がより高い、と記しています。
          
この2003年の研究以降の十数年の間に多くの科学者たちがセロトニン・遺伝子・ストレスについての研究を行ってきたことから、ワシントン大学医学部の研究者たちは過去10年分あまりの調査データをメタアナリシスしたところ、セロトニン遺伝子・うつ病・ストレスという3つの要素の間に明確な関連性は見つけられなかったそうです。
「研究結果が間違っているかもしれない」ということはよくあることで、実際、オープンアクセスの科学雑誌PLOS ONE上で近年公開された研究の半分は再現可能もしくは実証したり時間をかけて証明されたりしたものではないとのこと。間違いを指摘される形となった2003年に公開された論文は、これまでに4000回以上にわたって同分野の研究論文上で引用されており、同研究論文を引用した「セロトニン遺伝子」「ストレスのかかる生活習慣」「うつ病リスクとの関連性」といったテーマの論文は100件以上発表されています。
今回のメタアナリシスの結果をまとめた論文はJournal of Molecular Psychiatry上で公開されています。研究グループを率いたのは医学と生物統計学の助教授であるロバート・C・カルバーハウス氏で、「我々の目標は、セロトニン遺伝子とうつ病に関するデータをすべて集め、内容を見直すことでした」「我々はすべてのデータで同じ統計分析を行って結果を組み合わせたあと、セロトニン遺伝子はうつ病が引き起こすストレス変化に影響を及ぼさないことを確認しました」としています。
これまで、同分野の研究では遺伝子変異を持つ患者はストレスを受けるとうつ病を発症する可能性が高いと言われてきました。メタアナリシスに携わった医学博士のラウラ・ジーン・ビェルト氏は「セロトニン遺伝子の変異により『ストレスを受けたときにうつ病に陥りやすくなる』という考えは、これまでとても合理的な仮説であった」と語っています。
        
ただし、今回の研究結果は、これまで考えられてきたような「特定の遺伝子がうつ病と関連している」ということを否定していますが、「ストレスがうつ病に関連していること」および、「遺伝学がうつ病に関連していること」はメタアナリシスの結果からも明らかだそうです。
なお、カルバーハウス氏とビェルト氏は、特定のセロトニン遺伝子がうつ病の潜在的危険因子から除外されたことで、研究者はうつ病発症に影響を与える可能性のある他の遺伝子や環境に焦点を当てることができるようになると述べています。
       
          
記事は、セロトニン遺伝子とうつ病、そしてストレスの間の関係に関するものですが、以前は関係性があると考えられ研究が進められてきたものが、遺伝子とストレスがうつ病に関係はしていても、そこにセロトニン遺伝子である必然性がないことが分かった、とあります。
このように、最初の研究で何らかの関係性があると思われた事柄が、その後の研究が進むことで、その関係性がなかった、とわかることは意外と多くあります。
アトピー性皮膚炎も、最初は即時型のアレルギーと考えられていたものが、遅延型の症例が多いことがわかり、やがて、アレルギーそのものがアトピー性皮膚炎の原因ではなく症状の原因であることが分かってきました。
当然、原因が異なれば治療法も変化するものですが、残念なことにアトピー性皮膚炎の場合、「原因の治療法」が見つからないこともあって、「症状の治療法」に終始している現状がありますが、いずれにせよ、こうした「医学の進歩」には、敏感になっておいた方が良いかもしれませんね。

                 
おまけ★★★★大田のつぶやき

こうした医学の進歩や発展に伴う「答えが違う」という事実は、その恩恵を享受するはずだった患者側にとっては、医学の「失態」に思えることもあるでしょう。
しかし、医学の場合、基礎と臨床を繰り返し積み重ねていくことでしか、結果を推測、そして検証することはできず、その道のりの中で、進んだり退いたりすることは避けられないことも確かです。
いろいろな情報の中で、特に医師や研究者が報告する情報を含めた中で、「自分に有益」な情報を見つけ出すことは難しいかもしれませんが、少なくとも、多くの情報に接しておくことは大切なのではないでしょうか?