アトピー性皮膚炎にステロイドは本当に必要なのか?(3)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                 
昨日は、現在のアトピー性皮膚炎に対して皮膚科医が行う「標準治療」とは、アトピー性皮膚炎を直接治しているのではなく、痒みという「症状」を治しているのに過ぎない、そしてそこに問題点が潜んでいることを説明しました。

今回、紹介した新聞記事に示されていた数値をみると、ステロイド剤治療を行わない方が、「アトピー性皮膚炎の治癒率が高い」ことが分かります。
記事の中では、論文を発表した際の意見として、

                    
佐藤医師は3月半ば、大阪市で開かれた近畿小児科学会で発表した。会場の医師からは「ステロイド剤を使用せずに自然に治ったなら、アトピー性皮膚炎ではなかったのでは」「ステロイド剤を使っても、使わなくても、結果に大差がないならば、ステロイド剤を使ったほうがよく眠れたり、途中で皮膚をかきむしったりすることが少ないので、むしろ使ったほうがよい」などの意見が聞かれた。

                            
という内容が書かれていました。
この意見の中で特に、「ステロイド剤を使っても、使わなくても、結果に大差がないならば、ステロイド剤を使ったほうがよく眠れたり、途中で皮膚をかきむしったりすることが少ないので、むしろ使ったほうがよい」という部分に、今のアトピー性皮膚炎治療の課題が見え隠れしているように感じます。

アトピー性皮膚炎患者の、もっとも大きな悩みは言うまでもなく「痒み」です。
したがって当然ですが、診療を受けた際に訴えることは「痒みをなくすこと」になります。
そこで治療を行う医師も、患者の訴えに最大限答えるため、「痒みを抑える治療」を選択、さらにそれが皮膚科学会で定める「標準治療」ならばなおさらでしょう。
問題は、そこで行われる「痒みを抑える治療」のリスクコントロールを少なく見積もっていることです。
「患者の今」を優先した治療を施し、「患者の未来」におけるリスクとダメージをそこに加味することがないため、こういった「大差がなければ使わない」ではなく「大差がなければ使う」という選択肢を優先してしまうのでしょう。
ここにも「症状」と「病気」の、いずれに対応しようとしているのか、という差も現れているように思います。
病気に対して向き合うのであれば(使用しても使用しなくても治癒結果に大差がなければ)、リスクを抱える治療を優先することはないはずです。症状に対して向き合うのであれば、使用することと使用しないことで、「直近の症状の経過」には「大差」がみられることは確かですので、使用する選択肢が優先されることになるのでしょう。

昨日、風邪と高熱の例を述べましたが、今回の医師の言葉を置き換えてみると良く分かります。

「(風邪で高熱がた場合)解熱剤を使っても、使わなくても、結果(風邪が治るかどうか)に大差がないならば、解熱剤を使ったほうがよく眠れたりするので、むしろ使ったほうがよい」

となります。
しかし、「高熱」が出ることこそが、風邪に対して自然治癒力が働いている証です。
数多くの論文で、解熱剤を使用することで「風邪の治りが遅くなる」ことは証明されており、熱を抑えることが風邪の治療として「必ず正しい」というわけではないことは、広く知れ渡っていると思います。
もちろん、高熱を放置することで体力の消耗が激しくなる場合など、解熱剤を積極的に使用しなければならないケースもあるでしょう。しかし、風邪=解熱剤、と一律に決めることは、基本的に治療としてマイナス要因を抱えることになります。

アトピー性皮膚炎も同様で、ステロイド剤を「必要」とする炎症状態はもちろんあり得ますから、一律にステロイド剤が不必要、というわけではありません。
しかし、少なくとも短期使用による経過観察、ではなく、一律的に長期連用しながら症状を抑えることを(実質的に)推奨することは、症状の治療にはつながっても病気の治療に必ずつながるとは言えない、ということが「問題点」なのです。

明日は、この「問題点」について見ていきましょう。

                  
おまけ★★★★大田のつぶやき

最近のアトピー性皮膚炎は、昔のアトピー性皮膚炎と病態が異なる様相が見られます。
つまり、一つの疾患として「アトピー性皮膚炎」という言葉が存在していますが、原因が異なる「病気」とも考えられ、見方を変えれば「アトピー性皮膚炎症候群」として捉えた方が良いのかの知れません。
異なる原因に、同じ治療を「当てはめよう」としていることが、治療を難しくしている側面があることは知っておくべきでしょう。