アトピー性皮膚炎にステロイドは本当に必要なのか?(2)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                
今日は、昨日の続きです。

昨日紹介した記事の中で、ポイントは「ステロイド剤使用せずに経過を観察した結果」と「ステロイド剤治療を行った結果」の差異が明示されていたことでしょう。
       
        
▼ステロイド剤を使用せずに経過を観察した場合
→2015年、7医療施設でアトピー性皮膚炎の患者300人を対象に6ヵ月実施
「症状がよくなった」か「完全に治癒した」改善率は乳幼児で75%、小児で52%、成人で80%だった。特に乳幼児では118人のうち28人がアトピー性皮膚炎の症状が消え、完全に治った。
        
         
▼ステロイド外用剤を使った場合の効果を調べた場合
→古江増隆・九州大教授らが2003年に発表した研究報告より
改善率は乳幼児で36%、小児で40%、成人で37%だった。
         
       
調査対象も調査時期も違いますので、一律に比較することはできませんが、ステロイド剤そのものが2003年当時から大きく変化したとことはなく、この改善率の差は乳幼児や成人で倍近くあることを考えると、無視できるものはないでしょう。

そして考えなければならないのは、日本皮膚科学会がアトピー性皮膚炎の診療において、プライマリーケアの段階から高度の専門性が要求される段階までの患者を診療する、皮膚科診療を専門とする医師を対象として2000年に作成、2003年、2004年に改定した「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」、そしてその後、さらに2008年、2009年には、アトピー性皮膚炎の診断基準、重症度分類、治療ガイドラインを統合、最新の改定版が昨年2016年に発表された「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」の存在と言えます。

2000年に制定されてから2016年の最新改定版まで、一貫して「治療の主体」は、ステロイド剤など免疫抑制作用を持つ薬剤を中心とした「対症療法」であることが明示され、さらにその安全性について「科学的に実証されている」とも明示し続けていますが、実際には、患者側から発信される安全性に対する疑問の声は、少々言葉が乱暴かもしれませんが、「アトピー性皮膚炎の悪化に過ぎない」という言葉で黙殺し、さらに安全性を疑問視する科学論文については、「根拠に乏しい」という言葉で封殺し続けています。
本来、科学的エビデンスに基づき検証された結果について反論するならば、同じく科学的エビデンスで示されなければなりません。
しかし、「権威ある専門医が言うのだから正しい」という十分な根拠が示されているとは言い難い言葉で反論し、その反論こそが「正論」であると吹聴している現状は、少なくとも、ステロイド剤やプロトピック軟膏による副作用のダメージが考えられる患者にとっては、許されるべきものとは言えないでしょう。なぜなら、そうした患者のほとんどが、「専門医の指導の元に薬物治療を受け続けてきた」からです。

もちろん、アトピー性皮膚炎の治療法として、ステロイド剤やプロトピック軟膏が「悪者」ということではありません。
おそらくアトピー性皮膚炎患者の「ほとんど」は、ステロイド剤の治療により寛解状態もしくは治癒状態までもっていけているはずです。
アトピー性皮膚炎患者(約800万人)と、重症化した患者(約80万人)の数などから、ステロイド剤の使用により9割程度の患者は、短期で寛解状態もしくは治癒状態まで持っていけると推定されているようです。
では、何が問題なのか?
それは、ステロイド剤の「長期連用」によるダメージを、過小評価している部分です。つまり、短期の薬物治療で治らず、長期連用に至る可能性がある1割の患者を、ある意味「例外」としているところです。
短期使用で済む患者であれば、ステロイド剤の治療もプロトピック軟膏の治療も、問題を抱えることはなく、QOL(生活の質)を落とさずに過ごせることを加味しても、「正しい治療」とも言えるでしょう。
しかし、いったん長期連用に至れば、ステロイド剤やプロトピック軟膏など、免疫を抑制する薬剤の連用が、皮膚の細菌叢を乱す、体内のIgEを増強する、などアトピー性皮膚炎の悪化因子となりうる側面を持つことで、「慢性化」への道へと「誘導」することもあり得ます。

さらに、言えば、ステロイド剤やプロトピック軟膏など免疫を抑制する薬剤は、そもそも直接アトピー性皮膚炎を「治癒」させるための働きはありません。
痒みとはアトピー性皮膚炎という「病気」によって生じた「症状」であり、それらの薬剤が「治せる」のは、「病気」ではなく「症状」なのです。
風邪を引いた際に高熱が出て、解熱剤を飲むと、高熱は下げることができますが、風邪のウィルスや細菌そのものを解熱剤が「直接退治する」働きはないのと同じで、ステロイド剤などは、アトピー性皮膚炎により生じた痒いという「症状」は治せても、アトピー性皮膚炎という「病気」そのものを「直接治す」働きはないのです。
もちろん、解熱剤を飲むことで高熱がもたらす消耗などを防ぐことで、間接的に風邪に対応することがあるように、痒みを抑えることで眠れるようになったり、掻き壊しを防ぐことで皮膚のバリア機能の低下を防ぐなど、間接的にアトピー性皮膚炎という「病気」にアプローチすることは可能でしょう。
しかし、「治療」としてみるならば、ステロイド剤やプロトピック軟膏などの薬剤が持つ働きは、アトピー性皮膚炎を治すことではなく(風邪を治すことではなく)、痒みを抑えること(熱を抑えること)なのです。

そして、その結果が、まさしく今回の記事の示された数値に反映されていると考えられます。
続きは明日にしましょう。

                       

おまけ★★★★南のつぶやき

このブログでも、ときどき説明していますが、「病気」と「症状」は、指している意味合いは同じように見えても、実際には全く異なります。
しかし、治療を受ける患者側だけでなく、ときには治療を施す医師側も、この二つを混同して捉えているケースを見受けます。
もちろん症状を治すことは病気を治すことにつながることがあるわけですが、そこには「必ず」という言葉が無いことを忘れないようにしましょう。