炎症を発症させる「スイッチ」とは?

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 
アトピー性皮膚炎の原因に関係する研究として、理化学研究所から報告がありましたので、紹介しましょう。
       
        
●アトピー性皮膚炎の発症・悪化・予防に関わる二重スイッチとは 各患者に適した治療法の開発に期待
http://www.excite.co.jp/News/column_g/20161220/Economic_69553.html
         
アトピー性皮膚炎は、日本を含めた先進国の乳幼児によくみられる炎症性皮膚疾患で、主な症状は、強いそう痒(そうよう)感が繰り返し起こる湿疹である。発症には家族歴、アレルギー既往歴、環境要因、遺伝的要因などが関係しているが、個々の要因だけでは説明できない複雑な疾患だと考えられている。そのため、アトピー性皮膚炎の発症・悪化のメカニズムはいまだに明らかになっていない。
理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター サイトカイン制御研究チームの久保允人チームリーダー、統合細胞システム研究チームの岡田眞里子チームリーダー、インペリアル・カレッジ・ロンドンの田中玲子講師、ダブリン大学トリニティ・カレッジのアラン・アーヴァイン教授らの国際共同研究グループは、アトピー性皮膚炎の発症および悪化のメカニズムを解明するための「二重スイッチ数理モデル」を構築し、コンピュータシミュレーション解析を行った。
この数理モデルでは、免疫系、皮膚バリアの機能、環境要因などの複雑な相互作用が、経時的にどのように変化しアトピー性皮膚炎の発症・悪化につながるのか、それらの相互作用が遺伝的要因によってどのように影響を受けるかを予測した。そして、アトピー性皮膚炎のメカニズムを、発症を起こすが元に戻りうる“可逆的なスイッチ1”と元に戻らない“非可逆的なスイッチ2”の二重スイッチで表現している。
具体的には、アトピー性皮膚炎の進行には①炎症を発症させるスイッチ1と2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)が活性化し症状を悪化させるスイッチ2が関わっていること、②スイッチ1が頻繁にオンになると、スイッチ2がオンになると表現した。
そして、この数理モデルをシミュレーション解析した結果、臨床やマウスモデル系から得られるデータとよく一致し、二重スイッチ数理モデルの妥当性が証明されたという。
保湿剤を皮膚に塗った乳児はアトピー性皮膚炎を発症しにくいことが臨床試験により示されている。今回の解析によって、①保湿剤を使うことで皮膚バリアを強化し、症状悪化のサイクルを止めることが効果的な予防法であること、②この予防法が遺伝的要因の有無に関わらず全ての患者に効果的であることがわかったという。
今後、この手法を各患者データと組み合わせることにより、それぞれの患者に対する必要な治療法の具体的提案が可能になると期待できるとしている。
          
        
記事のポイントは、「アトピー性皮膚炎の進行には①炎症を発症させるスイッチ1と2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)が活性化し症状を悪化させるスイッチ2が関わっていること、②スイッチ1が頻繁にオンになると、スイッチ2がオンになると表現した」という部分でしょう、
簡単に説明すると、

・アトピー性皮膚炎には炎症を発症させるスイッチ1がある(アトピーの発症に関わる)
・ヘルパーT細胞2型を活性化させるスイッチ2もある(症状を悪化させる)

ということです。
昔は、アトピー性皮膚炎とは小児の疾患で成長と共に治癒することが多いアレルギー疾患であると考えられていました。
最初のころは、即時型であるアレルギー1型が強く関与しているという説から、やがてアレルギー4型となる遅延型が加わっているという研究報告も出ていました。
そして、ここ数年では、アレルギー的な要因とは、主にアトピー性皮膚炎の発症原因として関わるのではなく、症状を悪化させる要因であり、最近増加しているアトピー性皮膚炎の主な原因は皮膚のバリア機能の低下にある、という報告がいろいろな研究機関から出ています。
今回の数理モデルは、アレルギーとしての素因は、アトピー性皮膚炎の発症よりも症状悪化の要因として強く関わっていることを示しているようです。

また特徴的な部分として、「スイッチ1」に関わる要因であるバリア機能の保持が、症状悪化のサイクルを止めるだけでなく、予防法にもつながる、というところが挙げられるでしょう。
これまでのアトピー性皮膚炎に対する治療法とは、ステロイド剤やプロトピック軟膏など、免疫を抑制することで炎症を抑える薬剤が中心でしたが、あくまで「症状に対する治療」であり「病気に対する治療」としては間接的な関わりが中心でした。
しかし、今回の研究から、バリア機能を保持する方法が、遺伝的な要因の有無に関わらず全ての患者に効果的であるとする結果が進展していけば、「病気の原因」に対して有効なアプローチを行うことも可能になってくるのかもしれません。
今後の研究に期待したいですね。

                          
おまけ★★★★東のつぶやき

もう一点、興味深いところとしては、「この手法を各患者データと組み合わせることにより、それぞれの患者に対する必要な治療法の具体的提案が可能になると期待できるとしている。」という部分でしょう。
なぜなら、これまでの、痒み=免疫抑制を持つ薬剤(ステロイド剤、プロトピック軟膏など)ではなく、患者ごとに有効な手法を「組み合わせて」考える、としているからです。
アトピー性皮膚炎は、百人の患者がいれば、その原因は百通りであり、治療法も百通りある、とする医師もいますが、個々の生活環境、生活要因が異なる以上、皮膚のバリア機能に与える影響が個々人で異なっていても不思議ではなく、必要な対処は個々人ごとに異なるのであれば、こうした考え方は非常に有効といえるのではないでしょうか?