インフルエンザワクチンで誤解しやすいこと(2)

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                       
今日は、昨日の続きです。

昨日、紹介した記事を書かれた方は、「本質」を正しく認識した上で、分かりやすい表現として「インフルエンザを予防できる」と書かれていたのかもしれませんが、この文を読んだ一般の方は、インフルエンザワクチンにはインフルエンザに罹らなくすることができるんだ、と認識しやすいのは確かでしょう。
インフルエンザワクチン摂取によって、「インフルエンザの感染」そのものをを防ぐことはできません。
ただし、感染して発病した場合、その症状を「軽く」する、つまり重症化することはできます。

確かに、外国の研究では、ワクチンの接種により入院患者が30~60%減少、死亡患者も50~70%減少した、という研究報告がありますが、これも、「発症」そのものが抑えられたのではなく、発症したあとで重症化することが防げたので、入院したり死亡したりする患者が減った、ということです。

一般の方は、ワクチンでインフルエンザが予防できる、と聞かされた際、インフルエンザの重症化が防げる(インフルエンザに罹患はしてしまう)とは認識せず、「インフルエンザに罹らないで済む」と考えてしまいます。
ワクチンは、結局のところ、免疫の自然獲得を、半ば強制的に行うことで、体の中にインフルエンザと「闘う準備」をしてくれるわけです。
迎え撃つ基本は、自分の免疫力頼りですので、もともと免疫が弱った老人や、先天的、後天的に免疫不全となっているような場合には、ワクチンによる恩恵は少なくなります。

日本の研究では、大規模調査で、インフルエンザワクチンの摂取により、「発症率」には違いがなかった、という結果も出ています(もちろん、その場合も、発症は防げなくとも、重症化を防ぐことはできたのでしょう)。
また、インフルエンザの種類ごとにワクチンが必要ですから、摂取したワクチンとは違う型のインフルエンザが流行すると、ワクチンの効果は得られません(違う型のインフルエンザに対する抗体を作ることはできないため)。

こうした記事を読んで、インフルエンザのワクチンを接種することで「インフルエンザに罹りにくくなった」と誤解すると、感染する機会が多くなる人ごみに頻繁に出かけたりするなど、防御しなければならないことに気を配らなくなる恐れがあります。
インフルエンザのもっとも基本的な「予防方法」は、感染する機会を「減少」させることです。
もちろん社会生活を営む上で、外部との接触をひと冬の間、経ち続けることは不可能でしょうから、マスクをしたり、うがいをしたり、など感染の確率を減らす努力は行うべきでしょう。
しかし、こうした記事を読んで、「誤解」してしまうと、そうした感染の確率を減らす行動をしないで済む、という誤った認識をすることがあります。

アトピー性皮膚炎の悪化要因の一つにも「感染症」は関わります。
この場合は、インフルエンザのような内科的なものではなく、皮膚表面における「ヘルペス」「黄色ブドウ球菌」「真菌」などですが、これらの治療を行う際も、「ウィルス」と「細菌」そして「真菌」といった原因菌の種類の違いは、治療に必要な「薬剤」が異なることを知らない患者も多いようです。
ヘルペスウィルスに対して「抗生物質」で治療する、といったことも、併発した細菌による感染症には抗生物質が効果を発揮しても、本体であるウィルスには効かなければ、不必要に長く抗生物質を使う恐れも生じます。そして、それは耐性菌の問題につながることもあります。

医療の記事については、そこに書かれている内容について、ある程度、「正しく判断できる」ための知識を、患者側が持った上で読む必要があるのかもしれませんね。

                         
おまけ★★★★博士のつぶやき

ブログでもときどき書いておるのじゃが、医学的な部分で一般の人が「混同」して使いやすい「事象」はいろいろとある。
「病気」と「症状」の違いなどもそうじゃ。
もちろん、日常生活を営む上で、それらの違いを認識しなければならないケースは多くはない。
じゃが、知らないことで「行わなければならないこと」に気がつかなければ、それは大きなデメリットにつながるじゃろう。
今回でいうと、ワクチン摂取で「予防ができる」と勘違いして、準備をせずに感染する機会が多い場所にでかける、などの行動を取る、ということじゃな。
医療関係者は、これらの違いを認識した上で「簡易的な、分かりやすい表現」を用いるわけじゃが、注意が必要なことも覚えておいた方が良いじゃろうの。