アトピーの治療にステロイド剤は必要か?考察(4)

昨日は、アトピー性皮膚炎に対するステロイド剤が抱える問題点として、免疫抑制作用による「アレルギーを増長して、アトピー性皮膚炎を悪化させる」ことについて述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   

 
今日は、その他の問題点について考えたい。

▼アトピー性皮膚炎に対するステロイド剤の問題点とは?

2.病気の治療と症状の治療

ステロイド剤がアトピー性皮膚炎に及ぼすその他の問題点はいくつかあるのじゃが、比較的重要な問題として、ステロイド剤が「何を治しているのか」という部分が関係してくる。
アトピー性皮膚炎の患者が「治したい」と考えるのは、「アトピー性皮膚炎と言う病気」であり「アトピー性皮膚炎により生じた痒み」という「病気」と「症状」の二つじゃろう。
そして、多くの患者は、この「アトピー性皮膚炎」と「痒み」とを、事実上、同一のモノとして捉えておることが多い。
従って、「痒みが治る」ことは「アトピー性皮膚炎が治る」ことでもある、と考えることになる。
じゃが、ステロイド剤を処方しておる医師は、症状の治療と病気の治療は同一のものでないことは百も承知じゃ。もちろん、症状の治療が病気の治療につながることは考えておるじゃろうが、症状の治療とは、間接的に関わる病気の治療の一部であって、病気の治療そのものでないことは認識しておる。
では、症状の治療と病気の治療を同一視した場合、何が問題なのか、ということじゃな。
これは、風邪と高熱を例にとれば分かりやすいじゃろう。
高熱を解熱剤で抑えても、それが風邪を直接治しておるわけでないことは先日、述べた通りじゃ。
いったん解熱剤が高熱を下げても、風邪が治っておらなければ解熱剤の効果が弱まれば熱は再び上がってくることになる。
つまり熱が下がる=風邪が治るではなく、風邪が治る>熱が下がる、風邪が治る過程の一部に「自然と熱が下がる(熱を必要としなくなって)」がある、ということじゃな。

もし、解熱剤で熱が下がったとき、寝ているのを止めて、体が楽になったからといって仕事に行ったり、通常の行動を行ったらどうなるじゃろうか?
当然、風邪が治っていなければ、体力を消耗することになったり、免疫活動を妨げたりすることで、風邪が悪化、熱は再び上がりやすいことになるじゃろう。
症状を治していても、病気を治していなければ、病気を治癒させる目的からみれば「意味がない」ことがある、ということじゃな。

そして、アトピー性皮膚炎において、「症状」である痒みを薬剤で抑えても、アトピー性皮膚炎という疾患そのものが治っておるわけじゃないから、薬剤の効果がなくなれば再び痒みが生じることになる。
しかし、痒みが治る=アトピー性皮膚炎が治る、と考えている患者の場合、痒みが治ったことで、「他に何もしない」ことが多い。
本来、痒みとは「警告信号」的な役割を持っておる。
睡眠不足、運動不足、栄養の過不足、冷えがある、自律神経や内分泌の乱れがある、こういった放置しておくと深刻な体の異常状態につながる恐れがある「状態」を、自覚できる症状により「教えて」おる、一面があるということじゃ。
そして、それらの異常状態を招く要因とは、毎日の生活の積み重ねの中にあることが多い。
つまり体は、「生活を改善して欲しい」と訴えておるわけじゃ。
じゃが、そうした警告信号(症状)がステロイド剤で抑えられ、病気が治ったと「勘違い」すれば、ヒトはそれまでの生活習慣を省みることはなく、警告信号を「必要とした要因」は継続することになる。
風邪の熱が下がったから寝ているのを止めて普通に行動する、のと同じ状況じゃな。

本当ならば、辛い「痒み」が抑えられている状況で、痒みを必要とした生活内の不足した「要因」を解消することが求められるのじゃが、症状を抑えたばかりに、そこに目がいかなくなる。
風邪の場合、熱を下げることが一時的な対処であることは周知されておる部分があるからまだ良いが、アトピー性皮膚炎の場合、症状(痒み)を抑えることがアトピー性皮膚炎を治すことと一致してないケースがあることを患者側が認識していないケースが良くある。

もちろん、症状を抑えている間に、アトピー性皮膚炎を必要とした体の負荷、生活内の負荷が自然解消されることもある。そうした場合には、ステロイド剤で痒みを抑えた=アトピー性皮膚炎が治った、と患者自身が認識することになる。
実は、アトピー性皮膚炎という疾患全体で見れば、症状を抑えている間に、原因となった「要因」が自然解消されるケースが占める割合は多いのじゃ。正確な統計データはないが、全体の9割程度は該当しているのではないかと考えられる。
そして、「残りの1割」が原因となった要因が自然解消されず、薬剤の効果が薄れるたびに症状が再発、反復継続した薬剤の使用に陥ることで、昨日述べた「免疫抑制作用によるリスク」が表面化、アトピー性皮膚炎が「難治化」することになるわけじゃ。

痒みを効果的に抑える手段として、ステロイド剤は有効なわけじゃが、ステロイド剤ほど効果的ではなくても、「痒み」を解消させる手段はある。
つまり、ステロイド剤は、痒みという症状を治療するにあたっては、第一選択肢として考えるべき治療法なのじゃが、アトピー性皮膚炎という病気を治療するにあたっては、必ずしも第一選択肢、とは言えない、ということじゃ。
先ほど9割の患者は、ステロイド剤で痒みを抑えておる間に自然治癒する、と書いた。そして、この自然治癒については、「ステロイド剤」が絶対条件とはならない。
生後間もない乳幼児のアトピー性皮膚炎患者に薬剤を使用して自然治癒するケースと、薬剤を使用しないで自然治癒するケースは、あとぴナビの会員を見ている限りにおいて、そこに有意義な差は見られない。
ステロイド剤の治療を選択したことが誤りだったと考えておる患者は、当然ながら、子どもが生まれてアトピー性皮膚炎だった場合、ステロイド剤の治療を第一選択肢としては考えないことが多い。
じゃが、そうした方の子どもも、適切なケアを繰り返して、日常生活の負荷を軽減させることだけで、痒みが自然と消退してくる。

このように、ステロイド剤を使用することで、「治さなければならない原因」に気が付きにくくさせることも、アトピー性皮膚炎で長期に悩んでいる人が初期の段階で抱える大きな問題点(適切な治療法を行うことに気がつかない=治療の機会を失った、となるので)と言えるじゃろう。
では、アトピー性皮膚炎患者は、ステロイド剤とどのように「付き合う」ことが課題なのじゃろうか?
明日は、今回のテーマのまとめとして述べたい。

                   
おまけ★★★★南のつぶやき

「病気」の治療と「症状」の治療について、その違いを患者側が認識することは、実はあまり重要ではありません。
なぜなら、それは治療を施す医師側が把握する問題だからです。
でないと、患者側も治療を施す医師側に近い医学的知識が必要になることがあります。
しかし、逆に考えれば、治療を施す医師側は、患者側に行っている治療で「何が治るのか」について誤解させない必要はあるでしょう。
原因が自然解消する、ことは「偶然」であり「必然」でありません。自然解消できる「必然」は、そのための行動が求められることを忘れないようにしましょう。