虫さされ薬に含有するステロイド剤に注意を(1)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                 
夏の時期、蚊やダニなど、虫さされを原因とした痒みに悩まされる方は多くなります。
その際、気軽に使用する虫さされ薬には、ステロイド剤やグリチルリチン酸など、注意が必要な成分が含まれている場合もあります。
今回は、注意したい虫さされの薬について考えてみましょう。
    
       
▼虫さされによる痒みとは?
   
蚊に刺されて痒い思いは誰しも経験したことがあるでしょう。
アトピー性皮膚炎の方は、一ヶ所の痒みをきっかけに、痒みが周囲に連続して広がることがありますので、蚊など虫さされの痒みは、アトピー性皮膚炎の炎症を増悪させる要因となることもあるので注意が必要です。
この虫さされの痒みとは、なぜ起きるのでしょうか?
    
蚊やダニなど、多くの虫さされによる痒みの原因は「アレルギー反応」です。
虫が吸血するとき、刺された痛みを宿主に感じさせないようにするため、唾液を注入して麻痺させます。この唾液が「抗原」となり、抗原抗体反応、つまり免疫反応が生じることで痒みが誘発されます。
ここで生じる免疫反応は、蚊に刺されたとき、すぐに炎症・痒みが生じる「即時型反応」(Ⅰ型アレルギー反応)と、ノミなど、咬まれてから1~2日経過後に炎症・痒みが生じる「遅延型反応」(Ⅳ型アレルギー反応)に大別されます。
虫の種類によっては、この両方が混在して現れることもあるようですが、いずれにせよ、虫さされによる「痒み」は、アレルギー反応の一種と考えてよいでしょう。
      
▼虫さされの薬とは?
      
このように、虫さされは、アレルギー反応(免疫反応)により生じる炎症、そしてその炎症が痒みを引き起こしますので、「痒み」を抑えるためには、痒みの原因となっている炎症を抑える=抗炎症剤が用いられるのが一般的です。
実際、市販の虫さされ薬の成分をみると、免疫抑制効果を持つステロイド剤の成分やグリチルリチン酸の成分が含まれるものがほとんどです。
基本的に、虫さされ自体は一過性の現象であり、薬を使用したとしても反復継続した連続使用となることは少ないため、健常者の方であれば、その副作用も生じづらく、また副作用が現れても限定的といえます。
しかし、アトピー性皮膚炎の方で、これまでステロイド剤の使用を反復継続されてきた方の場合、注意が必要なことがあります。
それは、
       
▼ステロイド剤が含有されている薬の注意点とは?
          
ステロイド剤=副腎皮質ホルモン剤は、基本的に皮膚の受容体から「吸収」され、体内に残留、蓄積されていきます。
実際、1972年に行われた海外の学会報告では、ステロイド剤を1回塗布するだけで、その後、2週間も皮膚に残留することが確認されています
       
※ステロイドホルモン軟膏を健常者の皮膚に塗布、16時間密封したところ、2週間後でも塗布した皮膚にステロイドによる血管収縮作用が確認された。
(Stratum Corneum Reservoir For Drugs. Vickers CF. Adv Biol Skin. 1972;12:177-189)
         
さらに、ステロイド剤を長期連用(15年)した患者が、塗布を10年間、完全に中止していても、その後、リバウンド症状が現れたケースや、同じように脱ステ5年後に、ステロイド剤を一度だけ塗布、その後、リバウンド症状が現れたケースも報告されています。
こうした塗布後、一定期間後に影響がみられる理由として考えられるのが、皮膚への残留です。
したがって、これまでステロイド剤を一定期間使用してきた場合、知らないでステロイド剤の成分が含まれる薬剤を使用することは、一定のリスクが生じる恐れがあるので注意が必要でしょう。
         
▼グリチルリチン酸が含有されている薬の注意点とは?
         
ステロイド剤の問題点は、外用薬の場合、内分泌に対する影響(内服薬や注射・点滴で現れやすい)よりも、「免疫を抑制した」影響の方が強いと言えます。
皮膚の常在菌によるフローラ(細菌叢)は、バリア機能として働いていますが、免疫を抑制する薬剤は、バランスがとれた細菌叢を一時的に乱すことが分かっています。
アトピー性皮膚炎の方は、9割以上が何らかの感染症を併発していることが研究で確認されていますが、バランスのとれた細菌叢を乱すことは、こうした感染症の影響を強める恐れがあります。
そうした観点からみると、免疫を抑制する作用を持つグリチルリチン酸が含有されている虫さされの薬も注意が必要であることが分かります。
         
       
長くなるので、続きは明日にしたいと思います。
明日は、含有されている成分の見極め方、またどういった虫さされ薬を選べばよいのかについて見ていきましょう。

                     
おまけ★★★★博士のつぶやき

虫さされによる痒みをきっかけに、掻き壊しが広範囲に広がった、という事例は意外と多い。
とはいえ、痒みを抑えるために使用した薬が、過去に使ったステロイド剤の影響を「呼び起こす」ことがあっては、良くない。
もちろん、そうした過去の使った影響が、一定期間後の単発使用で生じるケースは「レア」であることは確かじゃろう。
じゃが、一定の割合で、そうした影響を受ける方がおることも確かじゃ。
それだけに、虫さされの対処は慎重に行いたいものじゃの。