大阪大学のアトピー研究報告の詳細

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                   
昨日は、阪大が発表したクローディンに関する遺伝子の記事について紹介いたしましたが、詳細の発表記事を、ドクターから教えていただきました。
詳細について興味のある方もいるかと思いますので、紹介しましょう。
            
         
●アトピー性皮膚炎の発症に関わる新たな要因
~クローディン1遺伝子の発現量が皮膚炎の重症度を決める~
http://www.jst.go.jp/pr/info/info1190/
      
<ポイント>
細胞同士を接着し皮膚のバリア機能に不可欠なたんぱく質クローディン1がアトピー性皮膚炎の発症に関連するとの報告があり、詳細な解析が求められていたが、従来の手法では長期的な解析が困難だった。
クローディン1の発現量に応じてアトピー性皮膚炎の症状が変化することを、マウス個体を用いて初めて報告した。
皮膚疾患研究の進展と、生体バリア機能を高める新しい予防法や治療法への応用が期待される。

JST 戦略的創造研究推進事業において、大阪大学 大学院生命機能研究科・医学系研究科の徳増 玲太郎 特任研究員と月田 早智子 教授らのグループは、アトピー性皮膚炎に焦点をあて、生体内での皮膚のバリア機能に不可欠なたんぱく質(クローディン1注1))の遺伝子発現量に応じた役割の変化を解明しました。
アトピー性皮膚炎は日本国民、特に小児の約1割が罹患していると考えられており、世界的にも多くの患者が存在しています。近年、皮膚の水分保持や病原体からの保護などを担うバリア機能の異常が原因となった症例が報告されており、細胞間バリア機能の異常や細胞と細胞をつなぐ細胞接着因子の1つであるクローディン1についても発症に関与していることが示唆されていました。しかし、クローディン1を発現していないマウスは出生後1日で死に至るため、加齢に伴って表れる、病気や疾患への影響を調べることは困難でした。今回、マウスでのクローディン1遺伝子の発現量をコントロールする実験系をデザインし、マウスの出生後から成体に至るまでクローディン1が皮膚に与える影響を解析することに成功しました。
皮膚でクローディン1が、いつ、どこで、どのくらい機能しているのか(量的・時空間的な役割)を解明したことで、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患の理解が深まることが期待されます。加えて、上皮細胞間バリア機能の構築に不可欠なクローディンファミリー注2)に属する遺伝子群の発現する臓器での量的・時空間的なそれぞれの役割についての理解も深まり、生体バリア機能を向上させ、新たな医療対策につながることが期待されます。
本研究は、JSTの戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の一環として行われ、大阪大学 大学院医学系研究科 情報統合医学 皮膚科学教室 室田 浩之 准教授らのグループと共同で実施しました。
本研究成果は、2016年6月20日(米国東部時間)の週に米国科学アカデミー発行の米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン速報版に掲載されます。
          
<研究の背景と経緯>
これまで、各遺伝子の機能を知るための手段として、酵母やマウスなどのモデル生物における遺伝子のノックダウン・ノックアウトといった研究手法が多く用いられてきました。一方で、上記のような手法で得られる知見の多くは、目的遺伝子の「有る」状態から「無い」状態への変化を想定するために、遺伝子の機能の有無で捉えざるを得ません。そのため、遺伝子の種類についての議論は可能であっても、その遺伝子の発現量に応じた役割の変化を議論することは困難でした。しかし、生体内での目的遺伝子の発現量の変化は、ターゲットとする疾患や病気との関連性を理解し、予防法や治療法を検討する上で、無視することはできません。
本研究では、細胞と細胞とをつなぐ細胞接着装置の1つである、タイトジャンクション注3)(密着結合)の構成因子であるクローディン1に着目して、発現量の変化と病態との関連性について調べました。クローディン1は、ヒトのアトピー性皮膚炎と関連性が報告されています。しかし、ノックアウトマウスは脱水により生後1日で死に至るため、発現量が段階的に異なる複数の遺伝子改変マウスを作り、クローディン1の発現量に応じた個体発生の時空間的な役割を解析するアプローチが有効であると考えました。
         
<研究の内容>
研究チームは、クローディン1の発現量を6段階で変化させた遺伝子改変マウスを作製しました(図1)。遺伝子改変マウスから取り出したケラチノサイト注4)を用いて、mRNAの発現量、たんぱく質量、バリア機能の関係性を明らかにしました(図2)。mRNAとたんぱく質の間には正の相関関係がある一方で、mRNAの発現量つまり遺伝子の発現量が半分程になるまでは、バリア機能は大きな変化はありませんが、半分以下になると急激にそのバリア機能が低下していきました。また、マウス新生児でも、バリア機能の低下に合わせるように、表皮の分化異常が観察されました。
さらに、クローディン1の発現量が低下したマウスの成長過程を調べることで、ノックアウトマウスでは調べることができなかった、出生後の加齢による皮膚の変化にクローディン1が与える影響を調べることができました。この解析からクローディン1がなくなると、アトピー性皮膚炎に似た形態学的な変化が生じることや、マクロファージや好中球などの自然免疫注5)系の細胞浸潤が増え、炎症が起きていることを明らかにしました。こうした表現型は幼齢期に重症度が高く、成長に伴って回復する傾向を示しており、ヒトの小児期から思春期にかけてみられるアトピー性皮膚炎症状の自然経過に類似していました。また、遺伝子の発現量に応じて、成体になった際の回復の度合いも異なることを明らかにしました(図3)。
            
<今後の展開>
クローディン1の皮膚における時空間的な役割を解明したことで、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患の病態理解が深まり、特に乳幼児期に重篤化するアトピー性皮膚炎の治療法や予防法の確立への貢献が期待されます。クローディンは、類似の遺伝子が27種類見つかっており、それぞれの遺伝子の発現量が疾患によって変化することや、がんの発症と関係することが報告されています。本研究の手法を類似遺伝子に応用し、クローディンの種類や量の違いによってどのように細胞間バリア機能が変化し、個体レベルで機能するかを調べることで、将来的に、皮膚のみならず、さまざまな臓器に対応した生体バリア機能を高める、新しい医療の創発が期待されます。
          
<用語解説>
注1)クローディン1、注2)クローディンファミリー、注3)タイトジャンクションクローディンは、細胞間結合におけるタイトジャンクション(密着結合)の主要なたんぱく質である。タイトジャンクションは、隣り合う上皮細胞をつなぎ、さまざまな分子が細胞間を通過するのを防ぐ機能を持っている。タイトジャンクションのストランド構築に寄与し、細胞間バリアを作り出す。現在までにヒト・マウスで27種類の類似の遺伝子(クローディンファミリー)が報告されており、各組織・臓器において、異なる遺伝子発現パターンを示す。皮膚においてはクローディン1が主要な役割を担っていると考えられている。注4) ケラチノサイト表皮は、「基底層(きていそう)」、「有棘層(ゆうきょくそう)」、「顆粒層(かりゅうそう)」、「角質層(かくしつそう)」からなっており、その大部分は表皮を構成する角化細胞(ケラチノサイト)が占めている。注5) 自然免疫免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類の免疫システムが存在する。自然免疫は、マクロファージや好中球といった貪食細胞が関与しており、外来の異物などを排除するため、生まれながらに備わっている防御機構である。
            
          
今回の記事は、発表元の科学技術振興機構のものですので、リンク先には、写真やイラストなども掲載されています。
専門用語も多く、難しい内容ですが、興味のある方は、リンク先で詳細を確認してください。
基本内容は、昨日紹介したとおりですが、<今後の展開>には、

本研究の手法を類似遺伝子に応用し、クローディンの種類や量の違いによってどのように細胞間バリア機能が変化し、個体レベルで機能するかを調べることで、将来的に、皮膚のみならず、さまざまな臓器に対応した生体バリア機能を高める、新しい医療の創発が期待されます。

とあり、昨日紹介したニュースではわからなかった、最終的な研究の目的が明らかになっています。
バリア機能がアレルギーに関与している部分としては、皮膚や腸内など、いろいろな臓器が関係していますから、こうした研究はぜひ積極的に進めて欲しいところですね。

                               
おまけ★★★★西のつぶやき

医療の研究については、基となる論文と、それを紹介するニュース記事では、ニュアンスが異なる場合も多い。
過去の例で見ても、ニュースが目につくよう、特定のキーワードに焦点を当ててしまい、実際に論文が意味するところと、微妙に「ずれた」記事になっていることもあるのだが、今回は、比較的、記事の内容がニュースで伝わっていたように思う。
ニュースで見た興味のある内容は、今はWebも発達しているので、基となる論文などを読んでみるのも良いだろう。