一つの情報と、その捉え方。

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                     
最新の食物アレルギーに関する記事が、以前、週刊文春に掲載されていたが、同内容のテレビ番組、NHKスペシャルでのものが、書籍になったようだ。
         
            
●食物アレルギーを予防・治療するためにできること – 最新の研究から
http://news.mynavi.jp/articles/2016/06/08/allergy/
        
文藝春秋はこのほど、『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に! 』を出版。「一度発症した花粉症は治らない」「妊娠中・授乳中の母親はアレルギーの原因となる食品を除去した方がいい」などといった、これまでのアレルギーの常識を覆す研究結果を伝え、大きな反響を呼んだNHKスペシャル「新アレルギー治療」の取材班がその内容を基に、追加取材も加えて執筆している。
本書によれば、母親にアレルギーがない限り妊娠中は、好き嫌いなくできるだけいろいろなものを幅広く食べた方がいいという。またこれまでの研究で、アレルゲンが荒れた皮膚などから入ってしまうと、食物アレルギーになりやすいといったことがわかりつつあるとのことだ。
子どもの食物アレルギーの予防や治療に関して、どのようなことに気をつけたらいいのか。アレルギー研究の第一人者であり、本書にも登場する国立成育医療研究センターの大矢幸弘医師に疑問をぶつけてみた。
         
▼離乳食は早く始めたほうがいい?
         
――まずは、アレルギーの予防について伺います。あらためて「妊娠中・授乳中にアレルギーの原因となる食品を除去した方がいい」というのは誤りなのでしょうか。
        
そうですね。これまでの研究では、妊婦や授乳中の母親の食事でアレルゲンを除去してもしなくても、子どものアレルギー発症?に差が出なかったと報告されています。母親が?などのアレルゲンを食べたことで、子どもが食物アレルギーになるというのは間違いだと言えます。むしろマウスなどの動物実験では、卵を食べて授乳した母親の子どものほうが卵アレルギーが少ないという結果が出ています。
これは、母乳に含まれる微量の卵成分を赤ちゃんが腸からとりこむことで免疫寛容が誘導されたためと思われます。ただし、このことは人間では証明されていませんが、少なくとも母子ともに湿疹もなく健康ならば、予防のために卵などのアレルゲンを除去することのメリットはありません。反対に、偏った食生活にならないよう心がけてほしいと思います。
         
――本書に書かれていた「アレルゲンが荒れた皮膚などから入ってしまうと、食物アレルギーになりやすい」といったことも言えるのでしょうか。
          
経皮感作と呼ばれるものですが、このメカニズムはだんだんとわかってきていて、疑いの余地はないと思っています。
ですから、例えばアトピー性皮膚炎や乳児湿疹など、子どもの皮膚のバリアー機能が低下している場合は、肌から何かが侵入しやすい状況を避けることが大切になってくるでしょう。家庭で最低限できるのは「肌を清潔にした後、たっぷりの保湿剤で覆う」こと。保湿剤はなるべく添加物が少なく、食品由来の成分が入っていないものをお薦めします。
          
――次に離乳食についてですが、これまで「アレルギー予防のためには、ゆっくりと進めたほうがいい」という話が、広く知られていました。これは正しい認識なのでしょうか?
          
遅くしたほうがいいとか、早くしたほうがいいとか単純に結論を出すことはできません。しかし現在、私たちがやっている研究がもしかしたら1つの回答を提示できるかもしれません。
アトピー性皮膚炎を発症し、治療を受けている子どもを「生後半年から離乳食で卵を与え始める」「生後1年まで卵は与えない」という2つのグループに分けてその後の経過をみるというものです。経皮感作を防ぐために皮膚の状態を良好に保ったり、万が一にもアナフィラキシーショック(全身性のアレルギー症状)が起こらないよう離乳食の量を調節したりするなど、環境を整えた上で行いました。
その結果、皮膚をきちんと治療した上で適切に離乳食を与えれば、早く与えたほうが予防につながるかもしれないという結果が出つつあります。2016年中にも、論文が発表できる見込みです。このことが実証できれば、アトピー性皮膚炎でない子どもたちでも同じような結果が出る可能性があります。
ただ、注意していただきたいのは、早い段階で食物アレルギーを発症している子どももいますので、初めての食品を与える際にアナフィラキシーを起こす危険性もあります。アトピー性皮膚炎があるお子さんは、主治医に相談の上、ごく少量、耳かきひとさじ程度からはじめるような慎重さが必要です。
        
▼食物アレルギーは治せるケースもあるが、治療法は研究途上
        
――ここまで、予防についてお聞きしました。では、食物アレルギーが発症したあとにアレルギーを治すことは可能ですか?
            
治すことができるケースもあります。卵などのアレルゲンをあえて少しずつ与えることで、アレルギー症状を起こさないようにする「経口免疫療法」と呼ばれるものです。花粉症の治療では既にその方法が確立されつつありますが、食物アレルギーについてどの方法が安全で、効率がいいのかについては研究途上にあります。
私たちの病院では、アナフィラキシーを起こさない安全な摂取量を調べた上で、アレルギーの原因になっている食品を与える方法をとっています。アレルギー反応を起こさないかを慎重に観察しながら、徐々に与える量を増やしていくのです。
特に卵アレルギーでは自然に治るという人も多いので、それを待つべきか、積極的に治療するべきかという線引きは難しいです。しかし症状の重い子は大人になってもアレルギーが治らないことが多いため、治療を受けるという選択肢もあるかもしれません。しかし、症状が重い子ほど、アナフィラキシーを起こす可能性があるので、危険も伴います。信頼できる専門機関での適切な指導の下、受けることをお薦めします。
            
           
記事の内容は、目新しく感じる人も多いだろう。
エビデンスに基づき、こうした研究が進むことは、これまでの「常識」を覆し、「正しい情報」に導ける点で考えると非常に良いことだ。
だが、こうした「情報」を伝えていく上で、発信する方は、少々、大げさな物言いをしてしまうことが多い。
例えば、今回の記事内容は、「アレルギー医療革命」という書籍になったわけだが、その表紙には、

「これらの”常識”はすべて間違いでした!」

と大きく書かれている。そして、間違いとされた「常識」が大きくバッテンされていた。

・アレルゲンはとにかく排除する?
・予防のために離乳食を遅らせる?
・妊娠中、授乳中の母の食事が原因?

当然、この情報に接した人の中には、

「アレルゲンは排除しなくても良い」「離乳食は遅らせなくて良い」「妊娠中や授乳中に、アレルゲンに気をつけなくて良い」と捉える人もいるだろう。
だが、確かに、「アレルゲンは必ず排除しなければならない」ということは誤りでも、それが「アレルゲンは排除しなくて良い」には繋がらない。そこには「一部の」という冠がついてくる。
妊娠中や授乳中の食事でも、一部の化学物質は妊娠中に子どものアレルギーに関与する、という研究論文があり、アレルゲンそのものが関係しなくても、「食事」に気をつける必要はあるだろう。
センセーショナルなタイトルは、人の気を引きやすく、売れやすいのかもしれないが、先入観だけで判断してしまうこともあるわけだから、こうした情報への接し方は注意が必要だろう。

                      
おまけ★★★★大田のつぶやき

離乳食については、エビデンスで証明するそうなので、ぜひ、参考にしたいところです。
もちろん、個人差は出てくることもあるでしょうから、西さんが書かれているように「情報」として慎重に捉える必要はあるでしょうが、戦後、月例で離乳食の開始時期が決められていたことが、個々人の成長スピードと必ずしも一致しないことが、腸管からの高分子たんぱくの吸収を促し、アレルゲンとして認識しやすくさせていた、という考え方が覆るならば、新たな指標も必要になってくるのでしょう。
いずれにしろ、こうした情報は慎重に、そして積極的に求めていくことは大切でしょう。