皮膚の「垢」とアトピーの関係(2)

北です。

 

 

 

 

 

 

 

                   
今日は、昨日の続きです。
            
         
●垢でアトピーが悪化するって本当ですか?
(あとぴナビ2016年夏号、特集記事より)

                           
▼「アポトーシス」という細胞の死に方
        
もう一つ押さえておきたいキーワードは「アポトーシス」です。
人間の体は成人で約60兆個もの細胞から構成されています。これらの細胞のうち約3千億ぐらいが毎日死んで、新しい細胞と入れ替わっているといわれています。
では、細胞はどんなときに死ぬのでしょうか?まず考えられるのは火傷などの外傷を負ったとき。突然の事故や病気で死ぬような、何らかの要因で細胞が破壊される死に方です。これをネクロ―シスといいます。ネクロ―シスの場合は、破裂した死細胞から細胞の中身がばらまかれ、周辺組織に炎症反応が引き起こされます。
もう一つの死に方は、簡単にいうと寿命が来て死ぬというかたちです。これをアポトーシスといいます。アポトーシスの説明では、よく「細胞の自殺」「プログラムされた細胞死」という表現が使われます。生物の個体維持のためにあらかじめ体に備わった機能で、オタマジャクシがカエルに成長する際に尻尾がなくなるのもアポトーシスによるものです。
アポトーシスにより死んだ細胞は、核やDNAの断片化、アポトーシス小体の形成といった過程を経てマクロファージ(免疫細胞)に処理されるので、炎症反応などは起こりません。いわば、きちんと身辺整理された死に方といえるでしょう。
これからお話する皮膚の垢などの死細胞は、アポトーシスによる死細胞であり、アポトーシスという死に方をしていることが大事なポイントとなります。
        
▼CD300aが免疫細胞を抑制する
       
皮膚、腸管、気管など体全体におよぶ粘膜は上皮細胞に覆われて、外界からの異物や病原体の侵入から体を守っています。これらの粘膜では、なんと毎秒100万個もの上皮細胞が常に死を迎え、次々と新しい上皮細胞に置き換わっていきます。皮膚においては、この過程をターンオーバーと呼んでいます。
粘膜の上皮細胞はアポトーシスによって死を迎えますが、この過程で細胞膜を構成するフォスファチジルセリン(以下、PS)というリン脂質が細胞表面に出てきます。PSが細胞表面に露出されるとマクロ―ファージがそれを見つけて処理(貪食)するという仕組みは、これまでの研究ですでに明らかにされていました。
渋谷教授らの研究グループは、免疫細胞の細胞膜上に現れるCD300aというタンパク分子を世界に先駆けて発見し(2003年)、CD300aがPS に結合すると免疫細胞の活性化を抑制することを明らかにしていました(2012年)。
この研究の延長線上に、「上皮細胞がアポトーシスする際には、CD300aが関与して何らかの作用があるのではないか?」という推測が生まれます。
そこでこの研究へと発展したわけですが、粘膜細胞でCD300aを発現する免疫細胞を探してみると、皮膚においてはランゲルハンス細胞と呼ばれる免疫細胞(マクロファージの仲間)がCD300aを発現していることが分かりました。さらに、これらの免疫細胞がアポトーシスで死んだ上皮細胞に接着していることも明らかになりました(P.7・図1)。このことから、CD300aが粘膜の死細胞に何らかの形で関与している可能性が濃厚になったわけです。
          
▼CD300aを持たないマウスは、制御性T細胞が増加
            
粘膜上皮の死細胞は、CD300aを介してどのような働きを持つのか?この疑問を解明するために、渋谷教授らはマウスを使った実験を行いました。CD300aの遺伝子を欠損させたマウス(KO)と正常なマウス(WT)を通常飼育した場合と無菌飼育した場合で比べてみたのです。
実験Aのグラフをみてください。横軸は飼育条件とマウスの種類、縦軸は皮膚における制御性T細胞の割合を示しています。
通常飼育によるマウスの比較(グラフ左側)では正常なマウス(WT)よりもCD300a遺伝子欠損マウス(KO)の方が制御性T細胞が増加していることが分かります。一方、無菌飼育の場合(グラフ右側)は、どちらのマウスも通常飼育に比べて制御性T細胞が減少しており、両者で差がないという結果が出ました。
CD300aを持たないマウス(KO)で顕著に制御性T細胞が増加したということは、CD300aに制御性T細胞を抑制する働きがあることを示唆します。さらに無菌状態で制御性T細胞が減ったという事実から、CD300aの働きは皮膚の常在菌に依存していると考えられます。
         
▼CD300aは制御性T細胞を抑制する
         
実験Bのグラフは、正常なマウス(WT)とCD300a遺伝子欠損マウス(KO)にD89MFG─E8とEPTMFG─E8というタンパク質を投与した場合の制御性T細胞の割合を示したものです。
MFG─ E8とは、アポトーシスした死細胞のPSとマクロファージの接着分子に結合し、マクロファージによる死細胞の処理を促すタンパク質です。
D89MFG─ E8はMFG─ E8の変異体で、PSには結合しますがマクロファージの接着分子には結合しません。皮膚のランゲルハンス細胞はマクロファージの仲間なので、D89MFG─ E8ではCD300aが発現しません。したがって、D89MFG─E8はPSとCD300aの結合を遮断することになります。
先ほど「CD300aがPSに結合すると免疫細胞の活性化が抑制される」と説明しましたが、PSとCD300aが遮断されると制御性T細胞は増えることになります。
正常なマウスの場合、EPTMFG─E8(MFG─E8がランゲルハンス細胞に結合するので、CD300aとPA も結合する)よりもD89MFG─ E8を投与したマウスの方が、制御性T細胞が増えているのが分かります(グラフ左側)。一方、CD300a遺伝子欠損マウス(KO)の場合は、両者で差がありませんでした(グラフ右側)。これは、EPTMFG─E8を投与しようがD89MFG─E8を投与しようが、もともとCD300aがないのでPAと結合できない。だから差が出ないということです。
グラフB の実験結果は、制御性T細胞の数がCD300aとPAの結合によって制御されていることを示します。
            
         
今日のポイントは二つで、

「アポトーシス」
「CD300a」

です。
記事にあるように、死細胞全てが、制御性T細胞に影響を与えるわけではなく、あくまで自然死しした、つまりアポトーシスした死細胞が関係している、というこです。
もう一つのCD300aは、今回の取材記事の主役です。
このタンパク質が、制御性T細胞を制御することが、アトピー性皮膚炎などのアレルギーによる免疫反応に深く関わっている、と考えて良いでしょう。
明日は、今回の記事の最後です。

                      
おまけ★★★★南のつぶやき

今回の記事では、CD300aとランゲルハンス細胞、そして死細胞の関係が書かれていますが、ランゲルハンス細胞に影響を与える因子として、これからの季節、紫外線が大きな意味合いを持ってきます。
そういったことからも、アトピー性皮膚炎の方は、紫外線対策をしっかり行うことは大切でしょう。
適切なUVケアを行いましょうね。