アトピー性皮膚炎とバリア機能と細菌叢(1)

5月も終わりじゃの。

 

 

 

 

 

 

                      
暑くなったり、雨が降って気温が下がったりと天候も不順じゃが、アトピー性皮膚炎の方にとって、こうした「気候の変動」が続くことは、症状を悪化させる要因となりやすい。
注意して欲しいの。

さて、アトピー性皮膚炎に関する研究や報道は定期的に行われておるが、先日、あとぴナビのスタッフが、先月下旬に理研から発表されたアトピー性皮膚炎の研究について取材に行ってきたんじゃ。
          
         
●アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明
-JAK阻害剤または保湿剤でアトピー性皮膚炎を予防-
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160426_3/digest/
         
「アトピー性皮膚炎」は、日本を含めた先進国の乳幼児によくみられる炎症性皮膚疾患です。繰り返す“痒みの強い湿疹”と免疫グロブリン(IgE)の産生上昇などによる“アレルギー様反応”が問題です。遺伝要因と環境要因の複合によって発症すると考えられています。しかし、詳しい発症メカニズムは不明で、発症経過を忠実に再現するモデルマウスはこれまでに存在していませんでした。
理研の研究者を中心とした共同研究グループは、エチルニトロソウレアという「化学変異原」をマウスに投与し、ゲノムに変異を起こすことにより、突然変異マウスを作製しました。50家系、3,000匹のマウスの表現型解析の結果、アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスを発見しました。このマウスは清潔な環境で飼育しても、生後8~10週間でアトピー性皮膚炎を発症し、段階を追った病状経過をたどりました。そのため、「多段階進行性アトピー性皮膚炎マウス(Spadeマウス)」と名付けました。Spadeマウスで、病気の原因となる遺伝子変異を調べたところ、細胞の増殖や分化に重要な「サイトカイン」のシグナル伝達因子である「JAK1」分子の遺伝子配列に点突然変異(1塩基の変異)が生じ、JAK1のリン酸化酵素であるキナーゼ活性が増加していることを突き止めました。これにより、発症前から表皮細胞の古い角質が剥がれるときに発現するプロテアーゼ(ペプチドの加水分解酵素)群の遺伝子発現が上昇し、角質による“皮膚バリア”に機能障害が起きていることが分かりました。
今回の研究で、分かったことをまとめてみましょう。通常は表皮の中で、JAK1とSTATの信号伝達分子がプロテアーゼ(加水分解酵素)発現を適正に保つことで、皮膚バリアの恒常性を保っています。ところが、JAK1シグナルが強く入ると皮膚バリアが破壊され、真皮(表皮の下にある線維性結合組織)の自然免疫系の活性化も招いて、アトピー性皮膚炎発症に至ります。しかし、表皮にJAK阻害剤、あるいはワセリンを塗ることで発症を予防できます(図参照)。
今回作製したSpadeマウスを用いることによって、アトピー性皮膚炎発症に関わる複数の要因を分子レベル、細胞レベルで明らかにできることから、それぞれのターゲットを決めた発症予防や治療法の確立につながると期待できます。
         
          
取材の詳細は、あとぴナビの誌面やWebでも紹介するから、そちらを見て欲しいと思うが、記者が取材で受けた感想について報告があったので紹介したい。
         
       
▼取材した記者より
    
今回の取材では、アトピー性皮膚炎発症の理解において今までになく明晰な見解を得ることができたと思います。
これまでアトピーの原因は、遺伝、免疫、皮膚自体など様々な立場からそれぞれの主張がなされて混沌とした状態でしたが、それがすっきり整理されました。
アトピー性皮膚炎の原因は大きく4つあり、
●遺伝要因
●環境要因
●免疫要因
●皮膚(バリア機能低下)要因
これらの要因のうち3つぐらいが重なると発症するというものです。
要因バランスは人それぞれで、免疫だけ、バリア機能だけ、フィラグリン欠損だけが原因となることはないということです。
今回のマウス実験では、最初にバリア機能の低下がみられ、次の段階でIgEの問題が出現していました。
だから、免疫と関係ないアトピー性皮膚炎もありうるわけです。
だからと言って、アトピーが免疫とは関係ないというのも言い過ぎということです。
いずれにしろ、スキンケアによる保湿が非常に大切であるというのが結論で、読者の方にも直接的なアドバイスになると思います。
       
         
特に特徴的なのは「要因バランスは人それぞれで、免疫だけ、バリア機能だけ、フィラグリン欠損だけが原因となることはないということです。」という部分じゃろうの。
これまで、あとぴナビではアトピー性皮膚炎の発症原因(悪化要因も含む)を、「免疫機能の異常」と「皮膚機能の異常」の二つが複雑に絡み合っていることを述べてきた。
今回の取材では、まさしくそれが裏付けられたといっても良いじゃろう。

では、そこから何が導き出されるのか、続きは長くなるので明日述べたい。

                    
おまけ★★★★博士のつぶやき

興味深い点の一つは、いくつかの要因が複合することで「発症しやすい」というところじゃろう。
例えば、バリア機能が低下しているところに、環境要因が加わると発症しやすい(乾燥やエアコンなど)という部分は、季節的に症状が現れやすい時期と現れない時期が出てくることにつながるじゃろう。
自分の中で、どういった要因が関わっているのかを考えてみると、その対策も浮かび上がってくるのかもしれんの。