ワセリンでアトピーが予防できる?(1)

今日は、先日、理化学研究所から「アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明」という論文が発表されたのじゃが、この研究については、「ワセリンでアトピーを予防」という記事を見た人も多いのではないじゃろうか?

 

 

 

 

 

 

                    
          
        
●アトピー性皮膚炎のメカニズム、理研が解明 ワセリンで予防の可能性
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160426-00000032-zdn_n-sci
          
理化学研究所は4月26日、アトピー性皮膚炎の原因遺伝子を突き止め、ワセリンを塗ると発症を予防できる可能性があるとの研究成果を発表した。新たな治療法や予防法の確立につながるという。
アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスを作製し、病気の原因となる遺伝子変異を調べたところ、細胞の増殖や分化に必要なたんぱく質「サイトカイン」を伝達する「JAK1」分子の遺伝子配列に突然変異が生じていることを発見した。JAK1の異常が角質をはがす酵素「プロテアーゼ」にも影響し、角質による保湿効果が低下することで、アトピー性皮膚炎を招く――というメカニズムを解明した。
こうしたマウスの表皮に、JAK1の働きを阻害する薬剤や、保湿効果を高めるワセリンを塗布したところ、発症を遅延・予防できた。発症前に皮膚バリアの破壊を防ぎ、角質の適切な新陳代謝を促すことがアトピーの予防につながることが分かった。
同研究チームが、人間のアトピー患者の皮膚も調査したところ、6人中4人が同様の遺伝子異常を起こしていた。今後、遺伝要因だけでなく、皮膚や免疫力、環境など、他の複数の発症要因を分子レベル、遺伝子レベルで検討し、予防法や治療法確立につながる可能性があるという。
       
      
この記事を読んで受ける印象は「ワセリンがアトピーに効果がある」と感じるように思うの。
実際、あとぴナビの会員の方からも、「ワセリンはアトピーに効果があるんですか?」という相談の電話が何件か入ったようじゃ。
では、実際の理化学研究所の発表がどうったんじゃろうか?
        
         
●アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明
 -JAK阻害剤または保湿剤でアトピー性皮膚炎を予防-
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160426_3/digest/
       
「アトピー性皮膚炎」は、日本を含めた先進国の乳幼児によくみられる炎症性皮膚疾患です。繰り返す“痒みの強い湿疹”と免疫グロブリン(IgE)の産生上昇などによる“アレルギー様反応”が問題です。遺伝要因と環境要因の複合によって発症すると考えられています。しかし、詳しい発症メカニズムは不明で、発症経過を忠実に再現するモデルマウスはこれまでに存在していませんでした。
理研の研究者を中心とした共同研究グループは、エチルニトロソウレアという「化学変異原」をマウスに投与し、ゲノムに変異を起こすことにより、突然変異マウスを作製しました。50家系、3,000匹のマウスの表現型解析の結果、アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスを発見しました。このマウスは清潔な環境で飼育しても、生後8~10週間でアトピー性皮膚炎を発症し、段階を追った病状経過をたどりました。そのため、「多段階進行性アトピー性皮膚炎マウス(Spadeマウス)」と名付けました。Spadeマウスで、病気の原因となる遺伝子変異を調べたところ、細胞の増殖や分化に重要な「サイトカイン」のシグナル伝達因子である「JAK1」分子の遺伝子配列に点突然変異
(1塩基の変異)が生じ、JAK1のリン酸化酵素であるキナーゼ活性が増加していることを突き止めました。
これにより、発症前から表皮細胞の古い角質が剥がれるときに発現するプロテアーゼ(ペプチドの加水分解酵素)群の遺伝子発現が上昇し、角質による“皮膚バリア”に機能障害が起きていることが分かりました。
今回の研究で、分かったことをまとめてみましょう。通常は表皮の中で、JAK1とSTATの信号伝達分子がプロテアーゼ(加水分解酵素)発現を適正に保つことで、皮膚バリアの恒常性を保っています。ところが、JAK1シグナルが強く入ると皮膚バリアが破壊され、真皮(表皮の下にある線維性結合組織)の自然免疫系の活性化も招いて、アトピー性皮膚炎発症に至ります。しかし、表皮にJAK阻害剤、あるいはワセリンを塗ることで発症を予防できます。
今回作製したSpadeマウスを用いることによって、アトピー性皮膚炎発症に関わる複数の要因を分子レベル、細胞レベルで明らかにできることから、それぞれのターゲットを決めた発症予防や治療法の確立につながると期待できます。
            
             
最初に紹介した報道による記事は、タイトルを読むとからワセリンが「中心」のようにも見えるが、実際に理化学研究所が発表したニュースリリースを読むと、アトピー性皮膚炎の原因に関わる遺伝子を見つけた、という内容が「中心」であることがわかるじゃろう。
その遺伝子がもとで、皮膚のバリアに機能障害生じ、その結果、アトピー性皮膚炎が発症する、という内容、ということじゃな。
では、実際に今回の記事は、どう読み取れば良いのじゃろうか。
続きは、明日じゃ。

                          
おまけ★★★★大田のつぶやき

最近のアトピー性皮膚炎の研究が、アレルギーから皮膚機能に移り始めて以来、かなり進んだ研究が行われています。
実際、これまで臨床上、アレルギーだけでは説明ができなった症例も、バリア機能の観点からみれば、合点がいくものも多くあります。ただ一方、逆にバリア機能の観点だけでは、説明が上手くできないケースもあり、アトピー性皮膚炎は、多くの症状、そして原因を持つ一面があることは忘れない方が良いでしょう。