2015年、アトピー性皮膚炎を考える(5)

今日は、今回のテーマの最後のまとめじゃ。

 

 

 

 

 

                   

昨日まで、アトピー性皮膚炎発症に至る環境要因、そしてアトピー性皮膚炎の原因と、乳幼児と成人のタイプ別のアトピー性皮膚炎の状況について述べてきた。

ここ一~二年で、アトピー性皮膚炎は、アレルギー的な「テーマ」よりも皮膚機能のテーマが、研究対象になっておるように思う。
もちろん、それは、臨床などを経て、その方向に向かってきたわけじゃが、「皮膚機能」を重視しておるわりには、「どの機能をケアすれば良いのか?」かが漠然としておるようじゃ。

アトピー性皮膚炎の方の肌の状況を考えると、フィラグリンやセラミドの不足、痒みを知覚する神経線維、乾燥しやすい肌状態、それらは全て「角質層内の乾燥」にベクトルが向いておる。
この「角質層の乾燥状態」を緩和するケアとして、「適切なスキンケアを行いましょう」と医師はいうわけじゃが、ここでいう適切なスキンケアは、主には医師で処方するスキンケアアイテム、保険適用を考えれば白色ワセリン、親水軟膏などが多くなるわけじゃが、いずれにしろ、「軟膏」か「クリーム」がほとんどじゃ。

しかし、角質層の乾燥状態の緩和は、そもそも「水分」が足りないから起きておる状況じゃ。
そして、この水分は角質層内に肌の内部からジワッと浸透してくるものではない。
特に軟膏系のスキンケアは、油分だけの成分じゃから、肌を覆って保護効果は得られても、「水分を与える」効果は期待できん。乾いた砂場にシートをかぶせただけでは、シートの下は潤った状態になるわけではない。あくまで、砂場に「水」を巻いて(水分を与えて)、与えた水分が蒸散しないようシートをかけることで(保湿する)、砂場の水分維持が図れるわけじゃ。

病院で処方されるステロイド剤やプロトピック軟膏も、実は同じ問題点を抱えておる。
薬効の成分が、炎症を抑えることで痒みの緩和につながるのじゃが、その基材は、やはり「軟膏」が多い。
結局のところ、アトピー性皮膚炎の炎症部位にステロイド剤を塗ることで、炎症そのものは抑えることができるが、お肌の乾燥状態を緩和するケアには「弱い」のじゃ。
じゃが、保湿、保護効果は、元々が軟膏なのじゃから、ある程度期待できる。
そこで、お薬を使っている方は、薬を塗るだけではなく、「保水」のケアを同時に行うことを意識して欲しいと思う。
まずは、手持ちのローションやジェルを使って、水分を与えてから、薬を塗ることで、炎症を抑える薬の効果と同時に、保湿機能を高めておる分を活かして、保水しておけば、角質層の乾燥状態の緩和=バリア機能の維持、アップ、へとつながり、悪循環の輪を炎症の部分、そしてバリア機能の部分の二か所で断ち切ることができるじゃろう。

もっとも、じゃからといって「ステロイド剤」の使用がアトピー性皮膚炎治療として「最も有効ではない」こと、そして相応の「リスク」を抱えておることは承知しておくべきじゃ。
ステロイド剤やプロトピック軟膏の使用は、「アトピー性皮膚炎の治療」ではなく「痒みの治療」として用いられており、さらにその「痒み」とは、あくまで炎症性のものに限る。
風邪で高熱が出た場合、解熱剤を使って熱を下げるときがあるが、この解熱剤を「風邪」そのものの治療として行っているのでないことは分かるじゃろう。あくまで風邪により生じた熱を解熱剤で対処しているのであって、風邪そのものの治療としては、細菌性なら抗生物質、ウィルス性なら抗ウィルス剤が使われる。
アトピー性皮膚炎も、「病気」そのものの治療は、大元の原因部分の治療を行う必要があるのであって、病気を原因とした場合、その「結果」として生じた「痒み」という症状の治療は、間接的に病気の治療につながることは否定せんが、直接的な病気の治療効果はないことを忘れてはならんじゃろう。

これまで述べてきたように、アトピー性皮膚炎の「初期段階」は「軽症」ということが言える。
この「軽症」の状況は、アトピー性皮膚炎を発症させた生活内の要因、環境要因が容易に解消できやすいことが多く、生活内で自然治癒させておるからこそ、その後の「初期の痒み」が生み出されることが防げたわけじゃ。
いってしまえば、薬を使おうが使うまいが、治るアトピー性皮膚炎は治る、ということじゃな。
もちろん、痒みで掻き壊しがひどくなり、そこからバリア機能が低下、アトピー性皮膚炎が悪化した、というケースはあるから、アトピー性皮膚炎の悪化要因をステロイド剤が防ぐ力があることは確かじゃ。
じゃが、ステロイド剤の使用は、同時に体内でのIgEの増強につながるケースがあることが臨床でも明らかになっておるから、諸刃の剣でもある。
痒みの治療だけを考えるなら、ステロイド剤やプロトピック軟膏でも良いじゃろうが、「アトピー性皮膚炎の治療」を考えるのであれば、発症原因の解消、という部分、そしてバリア機能の強化、という2点を注視すべきじゃろうの。

・痒みはお薬(ステロイド剤やプロトピック軟膏)で治すことができる。
・アトピー性皮膚炎という「病気」はお薬で治すことはできない。
・アトピー性皮膚炎の悪化要因は、お薬で防ぐことができる。
・同じくアトピー性皮膚炎の悪化要因は、スキンケアによるバリア機能の強化で防ぐことができる。
・アトピー性皮膚炎という「病気」を治すのであれば、発症の原因となった生活の要因、生活環境の要因を解消することを考える

以上が、アトピー性皮膚炎を考えていく上では大切なポイントと言えるじゃろう。
最近は、皮膚機能以外にも、神経そのものの要因が、慢性的なアトピー性皮膚炎に関わっておることが研究で明らかにされるなど、新たな方向性の研究も進んでおる。
おそらく、「アトピー性皮膚炎の発症」と「アトピー性皮膚炎の悪化」、そして「アトピー性皮膚炎の慢性化」は、それぞれ異なった要因が絡むことで複雑化しているようにも思う。
あとぴナビでは、こうした世界のアトピー性皮膚炎に関する最新研究などを取材しながら、来年も、より役立つ情報をお届けしたいと思っておる。

今日で2015年も終わりじゃが、来年は、全てのアトピー性皮膚炎の方が恩恵を受けられるような研究が進むことを祈りたいと思うの。
では、来年もよろしくじゃ。

                            
おまけ★★★★あとぴナビスタッフ一同

今年一年、あとぴナビスタッフブログをご覧いただき、ありがとうございました。
アトピー性皮膚炎に関わる情報は、Webの世界では日々、いろいろなものが発信されています。
その中で、多くの情報は、知られることなく「埋もれて」いきます。
特に、間接的な情報はその傾向が強く、しかし、個々により生活環境が異なるアトピー性皮膚炎の「一部」の方には、そういった情報が役に立つこともあります。
スタッフブログでは、こうしたアトピー性皮膚炎全体に役立つ情報だけでなく、一部のアトピー性皮膚炎の方に役立つ情報にもアンテナを張って、お届けしていきたいと思います。
来年も、どうかあとぴナビスタッフブログを、よろしくお願いいたします。
そして、来年が皆さんにとってより良い一年となりますよう祈念しております。
どうか、良い年をお迎えください。

                   

あとぴナビスタッフ一同