2015年、アトピー性皮膚炎を考える(2)

昨日は、アトピー患者を取り巻く環境について、簡単に述べてみた。

 

 

 

 

 

 

                 
アトピー性皮膚炎、という疾患自体は、決して発症直後から重症化することがスタンダード、ということではない。
もちろん、中には初期の段階で悪化要因が積み重なり、重症化した状態から始まることもあるが、それは稀なケースで、発症直後を考えると、ほとんどの患者は「軽症」の状態で始まり、さらに、全体の9割の患者は、そのまま自然治癒する。
残りの1割の患者が慢性化していくことになるわけじゃが、そうした慢性化の原因の前に、そもそものアトピー性皮膚炎の原因について考えてみたい。
                       

■アトピーの原因を考える

アトピー性皮膚炎の原因じゃが、最近までのアトピー性皮膚炎に関する研究報告を一通り考えてみると、大きく二つに分けられるように思う。
まず一つが「アレルギー的要因」を主要因とするアトピー性皮膚炎、もう一つが「バリア機能の要因」を主要因とする場合じゃ。

・アレルギー的要因の場合

昔から言われておる「成長すれば自然と治る」と言われておったアトピー性皮膚炎患者は、この要因が強いと思われる。主に乳幼児からの発症じゃの。
食物アレルギーなど、アレルゲンへの感作から、IgEが増加、それが皮膚下において炎症を生じさせ、掻き壊しを伴う、といった場合じゃな。
実際、乳幼児のアトピー性皮膚炎の診断基準の中には、両親のアレルギーの既住歴なども含まれておるようじゃから、アレルギー的なものを考えておるのは確かじゃろう。
さらに、いったん皮膚の掻き壊しが生じると、バリア機能が低下、もう一つの原因とも言える「バリア機能の要因」が加わることになる。
ただ、アレルギー的な要因が主要因だった場合、最初の「痒み」を生じさせる炎症は、アレルゲンが関与しておるわけじゃから、アレルゲンの除去により、皮膚の悪化状態(掻き壊しなど)を防ぐことができる。
後で述べるが、アトピー性皮膚炎を悪化させていく「悪循環の輪」を断ち切ることが可能とも言えるじゃろう。
・バリア機能の要因

こちらの方は、最近、増加しておる「アトピー性皮膚炎」に関わっておる部分が多い。
具体的には、今年の慶應大学の研究発表から、まず皮膚の表皮育成因子が不足し、バリア機能が低下、健常な皮膚の細菌叢が黄色ブドウ球菌やボービス菌など異常な菌叢を示すようになる。
そしてそれら皮膚に定着した異常な菌、特に黄色ブドウ球菌がデルタ毒素によって体内のIgEを増加、アレルギー的要因を生み出し、アトピー性皮膚炎を発症、という流れじゃな。
ここで一つポイントになるのは、大元の原因は「表皮育成因子の不足」というところじゃが、これによって生じるバリア機能の低下→異常な皮膚の細菌叢、という部分は、おそらく「表皮育成因子の不足」以外にも起きうると考えられる。
もし、表皮育成因子の不足が主要因だった場合、ヒトの遺伝子の変化から考えても、十数年で人口の10%程度が罹患する原因となる変化をもたらしたとは考えづらい。
また、表皮育成因子の不足、ということ自体は、そういう遺伝子を抱えた方は、昔からおったはずじゃ。
ということは、表皮育成因子の不足がアトピー性皮膚炎の方に多く見られる、という事実があることを鑑みると、そこに「プラスα」の要因が何か必要になってくる。

表皮育成因子が不足してバリア機能が低下気味であっても、ヒトには皮膚のバリア機能を保つための複数の機能が本来備わっておる。
それでも、異常な細菌叢になった、ということを考えると、そうした皮膚のバリア機能を保つための「他の要因」が影響を受けることで、著しい低下をもたらした、ということが考えられんじゃろうか?
そうして考えてみると、皮膚の健全なバリア機能を保つ要因は、表皮の部分と、角質層を覆う皮脂膜の二つがあるわけじゃから、この「皮脂膜」の形成を妨げるような要因の影響も考えた方が良いじゃろう。

結論から言えば、今の私たちが生活している「生活環境」の要因が、バリア機能の低下に拍車をかけることになっておるように思うの。
皮脂膜とは、汗腺から出る汗と、汗腺の横についている皮脂腺から分泌される皮脂が乳化して形成されておる。
しかし、最近の私たちの環境は、この「汗」をかきづらい「生活環境」が形成されている。
例えば、一年中、一定の室温に保つエアコンの普及がある。
エアコンは同時に、室内を乾燥させる働きもあるから、汗をかかない、ということ以外にも、角質層からの水分蒸散量の上昇=角質層の乾燥、というバリア機能の低下という部分に、関わってくるじゃろう。
運動不足も同じじゃな。
交通機関は発達して、歩くことよりも、車や電車での移動が主になった。
ストレスが多い環境も、夜型の生活が定着して、睡眠の「量」と「質」が明らかに低下しておることも、関係しておると言えるじゃろう。
なぜなら、汗をかく、バリア機能を保つ、といった力は、あくまで体が持つ機能であるから、他の影響を受けることで、その機能が高くなったり低くなったりするからじゃ。
こうした諸々の環境要因から、バリア機能の低下を促進させ、もともと表皮育成因子が不足気味だった「大勢」の方の「後押し」をしてしまい、アトピー発症につながっている、ということが言えるじゃろう。

もっとも、こうしたバリア機能の要因は、ちょっとしたことで大きく変化する。
複雑に絡み合った原因の多くは一過性のことが多い。
その下地に、外的環境があったとしても、「最後の一線」を越えたバリア機能の低下を招いた要因は、たまたま徹夜してしまった、数日飲み過ぎた、化学物質が多い環境でたまたま作業した、試験勉強で睡眠時間が一時的に減った、など、原因となった生活要因がその後、自然と解消されておることが多い。
したがって、こうした原因から生じたアトピー性皮膚炎の場合、皮膚のバリア機能を落とす大きな引き金になった生活要因が、その後すぐに解消することで、自然回復が行われる、ということに至る。
逆にいえば、引き金になった生活要因が、そのまま続いているようなケースの場合には、軽症から始まったアトピー性皮膚炎を慢性化させる恐れがある、ということじゃな。
このように、アトピー性皮膚炎の原因としては、「アレルギー的な要因」と「皮膚機能の要因(バリア機能の低下など)」が考えられるわけじゃが、それらの原因は、どのように絡み合って実際のアトピー性皮膚炎発症へと繋がっていくのじゃろうか?
続きは明日じゃ。

                          
おまけ★★★★大田のつぶやき

アトピー性皮膚炎患者は増加の一途をたどってきましたが、ここ一~二年は、厚生労働省や文部科学省の発表する学校健康保健調査などをみると、患者数は横ばいになったようです。
しかし、最近、増加していたアトピー性皮膚炎の多くは、昔から言われているアレルギー的な要因よりも、皮膚機能の要因を強く抱えていることが多いようです。
私たちの生活環境は、「快適」さを求めて、それを達成しているのかもしれませんが、「お肌の健康」という観点からみると、決して良いものでないことは、今後、考えていく必要があるのかもしれません。