皮膚科事業を海外へ売却、から考えるアトピー事情

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                            
アトピー性皮膚炎は、文科省が調査している「学校保健統計調査」をみると、幼稚園から高校まで2~3%で推移している。

●学校保健統計調査 平成26年度版
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/03/27/1356103_3.pdf

ここ数年、大きな変移は見られていないのだが(過去7年間で、最も大きな変動だったのが幼稚園児でそれでも1%内の変動、小中学生は0.1%内の変動)、先日、気になる記事をネットで目にした。
        
          
●アステラス薬、海外皮膚科事業を売却
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151112-00000006-jijc-biz
         
アステラス製薬 <4503> は11日、アトピー性皮膚炎治療剤「プロトピック」など海外で展開する皮膚科事業について、デンマークの製薬会社レオ・ファーマA/Sへ譲渡すると発表した。譲渡額は6億7500万ユーロ(約890億円)。アステラスは、経営資源をがんや泌尿器領域の強化に集約する。 
        
         
アトピー性皮膚炎の治療薬として有名なプロトピック軟膏を開発、販売しているアステラス製薬が、皮膚科事業をデンマークの製薬会社へ譲渡した、という記事だ。
これは、アステラス製薬自体の業績が悪く、事業譲渡したのかというと、今年3月に「2016年3月期の連結業績(国際会計基準)について、売上高を従来予想の1兆3620億円、純利益を1700億円から上方修正した。」と発表しているので、業績が圧迫しているわけではないのだろう。
逆に、前日の10日には、「目の疾患を中心とした再生医療の研究開発を手掛ける米国のオカタ・セラピューティクス(マサチューセッツ州)を買収すると発表した。」と記事が出ていたことを考えると、単にアトピー性皮膚炎への事業展開に、企業としての「魅力」がなくなってきたようにも考えられる。
少なくとも、今回新たに獲得した「再生医療」の方が「アトピー治療」よりも将来性があると考えていることは確かなのだろう。

特に最近の状況から見て、アトピー性皮膚炎の患者数などが大幅に減少していることはなく、製薬会社にとっての市場(患者)規模が小さくなっていることはない。
にも関わらず、この事業から撤退する、ということは、単に推測でしかないが、最近アトピー性皮膚炎の研究が、免疫が関与する炎症・痒みから、皮膚のバリア機能が関与する痒みにシフトしていることが関係しているのかもしれない。

なぜなら、これまでアステラス製薬が進めてきたプロトピック軟膏は、免疫抑制剤であり、アトピー性皮膚炎でいえば、アレルギー的な要因が標的だった。
しかし、今後、皮膚機能がアトピー性皮膚炎患者の主たる原因となっていった場合、免疫抑制は二次的な炎症・痒みへの対応を求められるだけで、一次原因に対して使用されるケースが少なくなる=市場規模が小さくなる(患者数、ではなく、ニーズの意味で)と考えたのかもしれない。
もちろん、デンマークの製薬メーカーがこの事業を買収したとなると、世界的に考えると特にアトピー性皮膚炎への免疫抑制剤が求められる市場が縮小している、というわけではないのかもしれないが、少し気に止まったので今回、この記事を取り上げてみた。

                             
おまけ★★★★南のつぶやき

ご相談を受けている現場の感覚では、アトピー性皮膚炎そのものの「数」が大きく減少した、という感じはありません。
ただ、ご相談の内容は、十年前と比べると大きく変わってきているように思います。
現在の、医師の治療も、やみくもに「ステロイド使用」とは違ってきていますし、また、皮膚機能に関する研究が進んで、その分野のケアも充実していることも関係しているのでしょう。
先日の、神経との関わりなどを含めて、ここ数年で、アトピー性皮膚炎の捉え方は大きく変わってくるのかもしれませんね。