アトピーの情報と、その内容について

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                 
アトピー性皮膚炎に関する研究や情報は、日々、Webでも発信されている。
科学雑誌に投稿されたエビデンスを元にした研究もあれば、アトピー性皮膚炎に関わる治療アイテムを販売している会社が発信することもある。
それらの情報に単独で接すると、内容や書かれ方によっては、信用度が高まるものもあれば、一つの情報に対して相反する情報が、それぞれデータを伴って出されていることもある。
ステロイド剤治療による、メリット、デメリットなども、発信する側の「立場」によっても、強調され方が異なることは多い。
医師が発信すれば、治療を「行う側」なので、メリットが強調される。患者側が発信すれば、治療によるリスクを「受ける側」なので、デメリットを心配した内容になる。

このように、立場が違えば、情報の内容も異なるわけだが、一つの情報に対して、「解釈」の仕方が異なることで、情報の捉え方が異なるケースもある。

例えば、今年の4月に慶應大学が発表したアトピー性皮膚炎の研究結果は、あとぴナビの秋号で、永尾先生を取材して記事を掲載したわけだが、解釈が異なると「アトピー性皮膚炎の原因」も異なることがある。
          
        
●医師に聞く美肌にまつわる噂のウソ・ホント
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150926-00010002-biz_dime-nb
        
「いつまでも若くハリのある素肌でいたい」「キメ細やかな美肌になりたい」と、綺麗でいることは性別問わず多くの人の願いでもある。特に加齢による肌老化は避けたいものだが、日々の誤ったスキンケアで自ら「美肌を壊してしまっている方」も少なくない。
「温泉や半身浴は美肌づくりに効果的?」「アクネ菌はお肌の天敵?」「化粧水は肌に浸透し保湿に良い?」といった巷で噂される「美肌に関する都市伝説」について、みなさんは一体どこまで信じているのか。またそれは正しい情報なのか。
         
(中略)
       
◆「アトピーはアレルギー疾患だから、体質改善が必要だと思う」
       
◎そう思う 81.0%  ◎そう思わない 18.9%
         
A.体質改善よりも重要な、「肌の免疫系の再生」を目指しましょう
つい先日、炎症、かゆみを引き起こす「黄色ブドウ球菌」とアトピー」との相関が指摘された。2015年4月に米国のNIH(国立衛生研究所)の永尾圭介主任研究員と慶應大学等のグループが、科学雑誌「イミュニティ」の電子版で発表した論文によると、『アトピー性皮膚炎は、症状の悪化とともに「黄色ブドウ球菌」と「コリネバクテリウム」という2種類の細菌が異常に増えてくることを確認した』とし、また『これら細菌が増えないようにしたところ、アトピー性皮膚炎の発症が抑制されたことを確認した』としている。
アトピーをより悪化させることにアレルギー性皮膚炎が関わっている場合も多いのだが、アレルギーを抑制してもアトピーそのものが治療されることにはならないということ。アレルギーの抑制は発症してしまったアトピーではやはり重要だが、それよりも「黄色ブドウ球菌量を減らす肌の免疫系の再生が重要」になる。
「黄色ブドウ球菌」を死滅させるのは「美肌菌(表皮ブドウ球菌)」であり、アトピーの患者では美肌菌が検出不能な域までなくなり、悪玉菌の住みやすい肌PHになっている場合が多い。PHの改善、悪玉優勢の皮膚の状況から善玉優勢への皮膚状態の改善がアトピー治療に対して重要であり、有効になる。
        
          
(中略)
          
★子供をアトピーにしたくない人へ
         
最近の発表でアトピーは「黄色ブドウ球菌などの皮膚の悪玉菌の量により発症する」ことが報告されている。「黄色ブドウ球菌」は世の中のいたるところにいる菌で、爪などにも存在している。また、砂場遊びをし、顔に泥を塗ったりすることが多ければ、これらの悪玉菌に子供は多く触れていると言える。長時間のプールや、日焼けにより肌の悪玉菌耐性はさらに悪化する。
また、「汚いから何度もお風呂に入れる」、「何度も顔を洗う」といった習慣が、悪玉菌をさらに増加させ、悪玉菌の抑制に必要な「美肌菌」を確実に減らす。これらにアレルギー体質が加わる場合、アトピーのリスクは高まる。小さいころから正しいスキンケアを教えることが子供を皮膚トラブルから救うため、親の知識習得はとても重要だ。
         
         
この記事を読むと、アトピー性皮膚炎の発症の原因は黄色ブドウ球菌にあって、それは慶應大学の研究結果で明らかになっている、と読み取る人が多いのではないだろうか?
実際、新聞報道も、よく似た内容だったから、最初の記事発信を行った記者の記事内容が、そうした方向性に誘導していたのかもしれない。
だが、あとぴナビで、その研究を発表した永尾先生を取材したわけだが、今回の研究発表の骨子は、アトピー性皮膚炎発症の原因が「黄色ブドウ球菌」にあるのではなく、ポイントとなるのは「表皮育成因子」の不足が関係している、ということだった。
表皮育成因子が少ないことで、皮膚のバリア機能が上手く形成できず、その結果、皮膚表面に細菌叢(フローラ)が乱れ、黄色ブドウ球菌などが増加する。
黄色ブドウ球菌が放出するデルタ毒素は、IgEを増加させるなどの働きがあることから、それがアトピー性皮膚炎の原因、と捉えられたのかもしれない。
しかし、今回の慶應大学の研究では、健常な皮膚の状態にあるマウスの皮膚に、アトピー性皮膚炎を発症したマウスの黄色ブドウ球菌を「移植」しても、そのマウスがアトピー性皮膚炎を発症することはなかった。
問題は細菌叢を乱している表皮のバリア機能にあって、黄色ブドウ球菌は「痒み」や「炎症」を増悪させている要因ではあっても、アトピー性皮膚炎という病気そのものの「原因」ではないということだ。
また、記事では『「黄色ブドウ球菌」を死滅させるのは「美肌菌(表皮ブドウ球菌)」であり、』とあるが、表皮ブドウ球菌が黄色ブドウ球菌を死滅させるわけではなく、単に表皮ブドウ球菌がフローラを形成することで黄色ブドウ球菌の繁殖を「防ぐ」働きがあるだけだ。
確かに、健常な皮膚の状態を考えた場合「表皮ブドウ球菌」が健常なフローラを形成していることが大切であることは確かなのだが、「健常な皮膚」の条件は「表皮ブドウ球菌」だけにあるわけではない。
そうした細菌叢が形成される前提として表皮が健全な状態で保たれていることそのものが必要であり、そのためには、表皮を作るための「表皮育成因子」が「最初」の原因として考えていくことが大切であることを今回の研究では述べているのだ。

アトピー性皮膚炎の情報は、その情報を発信する側の立場や捉え方によって、「意味合い」が異なることを忘れてはならないだろう。
情報はできるだけ、「主観的」ではなく「客観的」に捉えていく必要があるだろう。

                   
おまけ★★★★東のつぶやき

今回取り上げた慶應大学の研究記事は、あとぴナビの秋号で分かりやすく説明していますので、ぜひご覧ください。
もちろん、今回の特集記事は、永尾先生にご確認いただきながら修正し、監修いただいていますので、あとぴナビが「主観」的に発信した記事ではなく、客観的に取り上げた記事です。

●あとぴナビ2015年秋号
http://www.atopinavi.com/eb/index.html